日沼諭史の「AI活用入門塾」

数時間かかる作業を「マルチエージェント」「自律型」で完走させてみよう

 今や当たり前の存在になってきたスマホやパソコンで使えるAIツール。まだ本格的に触れたことがない人でも、便利に使いこなすためのヒントをお届けします。

 前回は「サブエージェント」を使って、主に情報収集を分担させることで効率を高め、企画提案資料の精度アップを目指しました。それによって、単にチャットでやり取りするよりも少ない手間で、完成度の高い資料が完成したと思います。

 今回はその仕組みを応用して「自律的なマルチエージェント」にまで発展させ、さらなるクオリティアップを図ってみましょう。

そもそも「マルチエージェント」って何?

 複数エージェントを活用するスタイルは「マルチエージェント」とも呼ばれます。その意味ではサブエージェントもマルチエージェントの一種ということになります。

 前回の「親AIに子AIがぶら下がる」ような形は、親(司令塔)が配下のAIをすべて管理するので「オーケストレーター型」と呼ばれます。また、「AIが複数並列で動く」(AI同士が連携する)ものは「自律分散型」などと呼ばれ、これもマルチエージェントの1形態です。

「オーケストレーター型」と「自律分散型」のイメージ

 ChatGPTやClaudeなど、AIツールのスマホアプリやPC用デスクトップアプリでは、厳密には今のところ後者の自律分散型マルチエージェントは実行できません。が、前者のオーケストレーター型でもそれに近い役割分担は可能です。

 マルチエージェントで企画提案資料を作成してもらう場合は、下記のようなプロンプトで指示すると良いでしょう。

【AIチャットに渡すプロンプト例(マルチエージェント)】

AIを活用した新しいサービスを検討・提案するので、企画会議に使う資料を作ってください。
調査3体(市場/競合/ニーズ)→企画1体→批評2体(技術実現性/コストの観点で)
→企画エージェントで修正1周→あなたが統合→別の1体で検証。
批評は判定と数字を必ず出し、弱点を3つ以上。出典URLは全工程で必須。
成果物はPowerPoint 10ページ前後で。

 ここでは調査するエージェントがいて、その調査結果を元に企画を考えるエージェントがいて、できあがった企画について別のエージェントが批判的な立場からレビューし、再び企画エージェントが修正した後、終わりにファクトチェックする検証エージェントを通して仕上げる、という形です。

 前回同様、全体のつながりを親AIが管理することに変わりはありませんが、複数のエージェントがそれぞれ独自の視点からチェックするため、よりブラッシュアップされた資料になることが期待できます。

マルチエージェントで作業を開始

 実際に指示してみると、トータル1時間35分ほどとかなり時間がかかってしまいましたが、前回とはまた違った観点から説得力の強い資料ができあがりました。

およそ1時間35分かかって資料が完成
建設会社向けの会計システムとなる「AI番頭」を提案

次の会議に向けて「自律的」に作業してもらう

 ところで、会議に提出した資料はそこでお役御免、というわけではないと思います。会議のなかで揉まれ、有望な企画ならそこで指摘された内容を反映したうえで次回の会議に提出し、また議論して……というのを繰り返しながら事業化に向けて一歩ずつ進めていくことになるはずです。

 であれば、議事録から資料の改善方針を決め、必要な再調査を行ない、作り直すところまでAIに「自律的に」やってもらうのはどうでしょうか。先ほど作ってもらった資料と、議事録を渡して下記のプロンプトで指示してみます。

【AIチャットに渡すプロンプト例(自律的なマルチエージェント)】

今回の企画提案資料について、会議で話し合い、議事録に残しました。この議事録を確認し、次回の会議に向けて資料をプラッシュアップしてください。必要な調査、分析、役割分担、検証方法は自分で判断してください。

添付した議事録(抜粋)

 ポイントは「自分で判断してください」としている箇所です。丸投げな感じではありますが、これによって先ほどのようにどんなエージェントをいくつ使い、どういうフローで作業すべきかをユーザーが細かく指示することなく、AI自身に考えさせて「自律的」に動いてもらえます。

議事録での指摘を受けて修正した資料

疲れ知らずのAIが相棒になれば2馬力以上で仕事できる

 サブエージェント、マルチエージェントで自律的に作業してもらうことで、要所の判断も含めすべてをAIに任せることができます。人の手で作るとなれば数日かかるような資料も、疲れ知らずのAIなら休まず一気に最後までやり切ってくれます。

 その間、ユーザーは他の仕事ができるので、単純に2馬力以上のパフォーマンスが得られることになるでしょう。自分専用の秘書、あるいはバーチャルな同僚が1人そばにいてくれるようなイメージで、間違いなく生産性は上がります。企画書に限らず、さまざまな資料作成、ツール作成などにマルチエージェントを役立ててみてください。