AI用語の基礎知識

【第13回】「AIスロップ」とは――ネットにあふれる“それっぽい低品質コンテンツ”

それっぽいけど中身の薄いコンテンツが大量に作れてしまう生成AI。このゴミのようなコンテンツが「AIスロップ」だ。(筆者がChatGPT Image 2で生成)

AIが大量生産する低品質コンテンツ「AIスロップ」

「AIスロップ」とは、AIを使って大量生産された、中身の薄い低品質なコンテンツのことです。英語では “AI slop” と呼ばれます。

 生成AIが一般化してから、ネット上に妙なコンテンツが増えたと感じることはないでしょうか。

 たとえば、SNSでよく見る奇妙な投稿。指の数や関節がおかしい人物イラスト。背景の文字が不自然な画像。文法は正しいのに、中身が極端に薄く、体験も具体性もないブログ記事。妙に似たようなレビューやコメント。もっともらしく見えるのに、よく読むと間違いや架空情報が混じっている文章。

 こうしたものの中には、生成AIで作られ、大量にばらまかれた低品質コンテンツが含まれています。それが、いわゆる「AIスロップ」です。

“slop” はもともと「残飯」、「ぬかるみ」、「粗末なもの」といった意味を持つ英単語です。そこから転じて、AIによって作られた粗悪なデジタルコンテンツを指す言葉として使われるようになりました。

 現在では、労力や責任が十分にかけられないまま大量生産された、低品質・低価値なAI生成コンテンツを侮蔑的に表すネットスラングとして広まっています。英語圏では、Merriam-Websterが2025年の「Word of the Year」に“slop”を選んだほどです。

なぜAIスロップは増えるのか

 AIスロップが増える理由は単純です。生成AIによって、コンテンツを作る手間とコストが極端に下がったからです。

 人間が文章や画像、動画を作るには時間がかかります。調べる、考える、構成する、見直す、責任を持つ。そこには一定の労力が必要です。

 しかし生成AIを使えば、“それっぽいもの”を短時間で大量に作れてしまいます。アクセス数を稼ぎたい、広告収入を得たい、検索結果やSNSを埋めたい、といった目的がある人にとっては、生成AIは非常に都合のよい道具になります。

 問題は、“それっぽいもの”が、必ずしも役に立つものとは限らないことです。

 中身の薄い記事が検索結果に並べば、ユーザーは本当に役立つ情報にたどり着きにくくなります。レビューやコメントがAIスロップで埋まれば、商品やサービスへの信頼も落ちます。医療や金融のような分野で、ハルシネーションを含む低品質な情報が広がれば、人の健康や財産に影響するおそれもあります。

 AIスロップは、単なる「変な画像」や「つまらない文章」ではありません。ネット全体の情報の質を下げ、利用者の判断を鈍らせる問題でもあるのです。

AIで作ること自体が悪いわけではない

 ここで大事なのは、「AIを使ってコンテンツを作ること」自体が悪いわけではない、という点です。

 AIは、文章の下書き、画像のラフ案、要約、翻訳、アイデア出しなどに使える強力な制作支援ツールです。この連載の挿絵のように、人間の意図を形にするためにAIを使うこともできます。

 問題は、AIが作ったものを人間が確認せず、責任も持たず、そのまま大量に流してしまうことです。

 AIを使っていても、公開したコンテンツの責任を負うのは利用者です。間違いがないか。誰かをだましていないか。読む人の時間を無駄にしていないか。そうした確認をせずに出されたコンテンツは、どれほど見た目が整っていても、情報環境を汚すものになりかねません。

 AIスロップとは、AIの性能そのものよりも、AIを使う人間の姿勢を問う言葉でもあります。

 生成AIで“それっぽいもの”を作ることは簡単になりました。だからこそ、これからは「AIで作ったかどうか」だけでなく、「人間が責任を持って仕上げたものかどうか」が、ますます重要になっていくのです。

人間の物書きもコタツ記事ばかり書いて最後を「いかがでしたでしょうか?」で〆てるようじゃAIに負けちゃいますけどね(苦笑)(筆者がChatGPT Image 2で生成)