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「Rokid Glasses」正規代理店の曲社長が語る発売までの経緯と今後の展望

フューチャーモデル 代表取締役社長の曲亮氏

「Rokid Glasses」は中国Rokidが開発したAIスマートグラスだが、日本ではフューチャーモデルが正規代理店として販売やサポートを行なっている。今回はフューチャーモデル 代表取締役社長の曲亮氏に、日本での発売の経緯や今後の展望などについて伺った。

――そもそもフューチャーモデルはどういう会社なのでしょうか?

曲氏:まず簡単に自己紹介させていただくと、私は2001年に日本に留学に来て、大学を卒業して、2009年に起業しました。起業当初はやっぱりiPhoneが一気に流行ってきて、私はケータイ販売のスタッフをやりながら「これはもしかしたらチャンスじゃないか」と感じてきました。スマートフォンは当然やれないですけれども、スマートフォンの周辺機器とかアクセサリーで起業しました。

 そこからはずっと今までも続いていますが、大手のキャリアさんとか、ショップで販売しているOEMの商品などを手掛けてきました。ただ、そのままやっていたのではアクセサリー事業は伸びないと考え、翻訳デバイスやNichePhoneという通話専用のデバイスといった新しいジャンルに挑戦したり、IoTBankという会社を立ち上げてIoTソリューションの提供なども行なっています。

――Rokid Glassesに行き着いた経緯を詳しく教えてください。

曲氏:フューチャーモデルという社名には、将来に向けて今のモデルを作ろうという意味が込められています。インターネットからモバイルインターネットになって、その次は何だろうというのを色々考えました。ちょうど今AIが出て全産業で革命が起きるんじゃないかという時代で、インターフェイスが結構変わってくるかなと感じてきたんですね。

 スマートフォンが登場し、いろいろ新しいことができて、例えば写真だけじゃなくてインターネットで物を買ったりとか、ネットサーフィンも当然そうですけど、YouTube見たりとか、SNSでコミュニケーションを取ったりとか、やっぱりスマートフォンのようなインターフェイスがあるからこそこういうことができました。

 じゃあスマートフォンの次は何だろうというのをずっと考えていて、Google Glass(2013年)はうまく行かなかったんですが、こうしたAIグラスのインターフェイスがいいというのは3年前から感じていました。3年前、その当時はMetaと近いようなディスプレイがついてないようなものができるんじゃないかと思ったのですが、実際使ってみると、一般の方が使うのは難しいなと一旦放棄したんです。

 去年、サプライチェーンの関係者たちが多いですが、中国のいろんな会社の知り合いがいて、AIの商品で何が流行ってますかと聞いたところ、「AIグラスはもしかしたら良いものが出るかもしれない」と。2025年の3月か4月ぐらいに中国に行ってそういう情報が入ってきて、Rokidを紹介してくれたんです。

Rokid Glasses

 その後、8月頃に発表されましたが、その時はまだきちんと動いておらず、2026年1月のCESの時にアメリカでクラウドファンディングで販売が開始され、その時は私も体験して「これはもしかしたらいけるんじゃないか」と。日常的に使える、すごく未来を感じられると感じ、ぜひ日本に持ってこようと考えました。

 ただ、我々も今までたくさん失敗の経験をしてきました。最初のスマートフォンのアクセサリーは、お店に置いていたら売れていき、説明もほぼ不要です。その後、NichePhoneをやりましたが、やはりニッチな世界なんです。広告も打たずに年間数万台売れましたが、それ以上の発展はなく、残念だったんです。

 そして、翻訳機をやったのですが、当時はまず「翻訳機って何?」という状態でした。ゼロからイチを作る難しさがありました。その後、ポケトーク(ソースネクスト)さんがバンバンCM打って認知されたけど、コロナが来て、活用する場面が無くなってしまいました。機能の面でも負けていないと思ってはいたのですが、ポケトーク=翻訳機というイメージが定着してしまったこともあり、勝負できないと判断して撤退しました。

 それから、IoTBankとしてはGPSトラッカーの商品を手掛けました。こちらも当初は「GPSトラッカーって何?」というユーザーがたくさんいて、我々も年間で約1億円ぐらいのプロモーション費用を使ってやってたんですが、なかなか認知の拡大が難しく、苦労しています。こうした失敗は本当にすごく勉強になりました。

 こういう商品は、「あったら便利」というの価値はあるものの、市場に対してのインパクトがちょっと足りない。いろいろと失敗を重ねて感じたのは、次の商品はインパクトがあり、時代の流れから生まれたもので、絶対的に使いやすく、日常的に使える、メーカーと一緒にプロモーションの費用をたくさん準備する、という条件をつけることにしました。それがRokid Glassesでした。

――クラウドファンディングでの反響はいかがでしたか?

曲氏:正直、予想を超えています。3〜4万円ぐらいのものであれば分かるんですが、今日(4月23日)の時点で4800人ぐらいの方に応援いただいてるんです。11万円のものです。

 都内で「製品お渡し会&交流サロン」というイベントを開催したんですが、午前と午後でそれぞれ100~200人の方にお越しいただき、時間内で終われるかちょっと心配になったほどです。

 ただ、11万円は気軽に買える価格ではありません。日常的に使っていただきたいという思いもありますし、スマートフォンのように分割して代金を支払っていただくような取り組みも検討していかなければいけません。

 ちょうど今、アンケートを取ってる最中なんですが、納品済みのお客さまが1200名ぐらいいらっしゃいます。その方々に利用後の感想を伺い、何割ぐらいの方が満足してるかということを結構気にしているんです。

――メーカーとしては、日本市場をどう見ているのでしょうか?

曲氏:実はメーカー側は日本をかなり重視しており、すごく投資している部分があるんです。なぜ重視するかというと、アジアの中で日本というのは結構ガジェット系の商品に対する感度が高く、ソニーさんとか色んなメーカーさんがいて、その環境がものすごくいい。先進的なものが受け容れられやすい市場です。

 海外の場合だと、AI関連の機能を使ったら有料のクレジットを消費する形になっています。Rokid GlassesではChatGPTとGeminiの両方が使えますし、オンライン翻訳機能ではマイクロソフトのものを使っています。ナビゲーションはGoogleのものですし、運用コストはそれなりにかかります。日本では初年度については、これを無料にしようということになりました。メーカーとしては、日本のユーザーにどんどん使ってもらって、製品やソフトウェアの進化に繋げたいと思っているんです。

――Rokid Glassesの具体的な使い方について教えてください。ユーザーはこのグラスをかけてどんな体験ができるのでしょうか?

曲氏:私たちは生産性を高める道具としてスマートフォンの利用時間を減らすことを意識しています。最初は1割、将来的には3~5割は減らしたい。そうなれば成功です。

 例えば、カメラでの撮影です。何かをメモしようという時、いちいちスマートフォンを取り出してカメラアプリを起動する必要はありません。ハンズフリーで撮影できますから、子どもをだっこして撮影することも可能です。

 私は海外の展示会にもよく出張しますが、こうした展示会では英語が基本ですから、リアルタイム翻訳も非常に役に立ちます。翻訳デバイスも便利ですが、そうしたものを持ち歩く必要もありません。画面に目を落として確認する必要もないので、相手の目を見てコミュニケーションができます。言葉の壁を乗り越えられていると感じられます。相手も同じようにRokid Glassesをかけているのが理想的ですが(笑)。

利用イメージ

 このほか、GeminiやChatGPTに対して音声で質問し、回答を得ることもできます。カメラも搭載していますから、観光スポットや海外のレストランのメニューなど、目の前にあるものを説明してもらうこともできます。スマートフォンと繋がっていますから、音楽を聴いたり、ハンズフリーで通話したりすることもできます。ナビゲーションも人気の機能の一つです。会議の音声を録音して文字起こしして、それを要約することもできます。

――法人利用についてはいかがでしょうか?

曲氏:実は体験会に参加いただく方々の多くが開発者でして、B2Bでの引き合いもあります。利用シーンとしては、建設や工場といった現場の安全管理や小売の店頭での接客、展示会や営業でのコミュニケーションなどが想定されています。

 大型の家電量販店などでは、店舗スタッフが耳にインカムをつけて働いていますが、お客さまと話しながら使うのは難しいでしょう。例えば、お客さまの要望を聞きながら、グラスのディスプレイ上に商品のスペックを表示して、すぐに答えられるようにするなどのアシストもできるようになります。

――話せる範囲で構いませんので、今後の展望について教えてください。

曲氏:中国では似たようなデバイスがたくさん出ていますが、比べると圧倒的にRokidが軽くなっています。でも、もっと重要なのはソフトウェアです。Rokidでは300人のエンジニアが働いており、半年前にバグだらけだった機能も全部修正されています。新しい機能もどんどん追加されて進化していきます。

 実際に、ここ数週間でファームウェアの更新が2回あり、ユーザーにはその都度手間を取らせてしまいますが、おそらくこれから3か月の間でどんどん良くなっていくことが実感できるはずです。

 一番大事にしているのは、ユーザーの声です。何が不便か、精度はどうかといった点で課題が見つかれば、そこを真っ先に修正していきます。今後はアプリ経由でユーザーの声を集めたいです。不具合があれば、すぐにキャプチャーしてレポートいただけますから。

 もう一つ、中国では開発者イベントもよくやっています。SDKも公開していますし、こうした活動を通じて利用シーンを増やしていきたいと考えています。まずはRokidのアプリの中で機能を増やしていきますが、将来的にはRokid Glassesの機能を活用できるスマートフォン向けのアプリも登場してくるはずです。

――ありがとうございました。