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KDDI木村氏とアイレット髙木氏が語るAI時代の開発と組織

KDDI 執行役員 ビジネスグロース事業本部長 兼 グロース事業推進本部長の木村隆氏(左)とKDDIアイレット 代表取締役社長の髙木秀悟氏(右)

 生成AIの急速な進化とAI駆動開発の台頭は、従来の工数積算による「人月型」SIビジネスや受託開発の構造を根底から揺るがしている。工数削減が進む中で、企業はいかにして新たな収益モデルを確立し、内製化やアジャイル開発を現場へ定着させるべきなのか。

 本稿では、通信ネットワークの強みを活かし独自の開発モデルを模索するKDDI 執行役員 ビジネスグロース事業本部長 兼 グロース事業推進本部長の木村隆氏と、クラウドや最先端AIの実装現場を牽引するKDDIアイレット 代表取締役社長の髙木秀悟氏へのインタビューをお届けする。

 両氏が語るAI時代におけるアジャイルの本質や、日本企業特有の課題を踏まえた「現場とデータの循環」、そして日本型FDE(Forward Deployed Engineer)の可能性と現実解に迫る。

――AI駆動開発によって工数や開発時間が大幅に削減される中、従来の「人月ベース」の契約からKDDIグループの収益モデルや顧客との契約のあり方は今後どう変わるのでしょうか。また、すでに成果・提供価値基準の契約へ移行している案件はありますか。

木村氏:まず1点目ですが、髙木の方が知見があるかもしれませんが、元々我々は大きなSIを今までやっていないんですね。どちらかというとアイレットがクラウドインテグレートのところからやっていて、せっかくAIが出てきたので、開発工程の障壁が下がってきたところに我々は参戦しようとしているというところです。一般的なSIerさんで今までの工数が目減りする領域ではなくて、AI駆動開発で新しい領域を取っていくというところですので、我々は影響を受けるというよりかは、新しく市場に対して新しいやり方で挑んでいくというのが今の我々の立ち位置です。

 成果のところは、我々はこの4月にKDDIアイレットを立ち上げたばかりで、この3か年の中期計画では、まず地力をつけるところのユースケースを作りながら進めているといったところですので、具体的にお話しできるような実績はまだありません。ただ、我々は地力を早くつけないといけないので、今、社内のカスタマーサクセスという形で、社内でAIを使った取り組みをいくつか行ないながら地力をつけていこうとしていますので、そういったもので成果を出しながら、お客さまに対して新しい契約の形ができていければという風に考えています。

髙木氏:我々も実はまさに悩んでいます。今、木村が申し上げた通りで、これまでの日本は大規模な人月型のSIモデルが開発市場の中心で、そこにAI駆動開発という隕石がドカンとぶつかりました。旧来型の大手さんも社内ではAI駆動開発を取り入れられて、皆さんしっかりやられていると思うんですが、そのビジネスモデルを変えていくところが論点になります。

 人月ではなくて、例えばお客さまの収益に応じてレベニューシェアしましょうとか、もしくはコストが下がってきたものに対してレベニューシェアしましょう、みたいな発想は、パランティアのFDE(Forward Deployed Engineer)からスタートしているんですが、日本でも各社が「FDEやります」という中で、SEさんの常駐の仕方がどうなっていくのかなというのはすごく注目をしています。

 まだ我々がどこへ移行するという話はないんですが、我々は通信会社のグループ会社なので、この通信会社のグループ会社がやる開発のあり方みたいなものは常に追求したいなと思っています。

 いわゆる大手SIerだと、親会社がドカンと100億ぐらいのモダナイゼーションシステムを受託されて、子会社に数割中抜きして、実際にコーディングするのは下請け会社みたいな構造になりがちです。これってやっぱり守りたいはずで、守りたいから、なかなか新しい収益モデルに移行できず、踏みとどまっちゃうと思うんです。

 他方で、本当にAI駆動開発で守るものがないので取っていこうという企業さんは、一気に坂を登ってくると思うんですが、我々はその両者ともにない戦い方、通信ネットワークを持っているという強みと、この継続課金・リカーリングビジネスを含めて、開発の新しいモデルを考えなきゃいけないなというのが1つです。

 もう1つは、KDDIはキャッシュが回っているので、何らか開発というビジネスにおいても、KDDIが一定のキャッシュを使って設備投資をすると、それを子会社である我々をうまく活用して、0から10ではなく、2段飛びぐらいから買収や投資で事業を加速させることができないかなと今考えています。

――顧客の内製化支援について、すでにクライアント自身で開発を進められる「自走」に到達した事例はあるのでしょうか。また、パランティア流や日本流アレンジのFDEとは異なる「第3の軸」を追っていくという理解でよいでしょうか。

髙木氏:まずお客さまの内製化支援は、このポジションになってお客さまにご挨拶にお伺いさせていただくと、かなりの割合で「内製化を考えているんだよね」というお話をいただきます。私たちのやっている内製化は、先ほど(KDDI SUMMIT 2026での講演で)もアジャイルな仕組みとAI駆動開発の隕石をミックスして作った「秘伝のタレ」と表現しましたけど、いわゆるスキーム、型があります。その型をお客さんと伴走してお納めして、お客さん自らある程度の内製化を進めている企業もたくさんいらっしゃいます。

「これ、お宅商売あがったりじゃないの?」って言われるんですが、面白いなと思ったのは、我々のエンジニアって本当最先端のAIテクノロジーを追っかけるのが大好きな素敵な子たちばかりで、それこそ「Opusの3.5(AnthropicのClaude 3.5 Opus)が夜中の2時にオープンするんで、そこまで今日は寝られません」みたいなやり取りがSlack上で行なわれています。

 彼らが何を考えているかというと、例えば、あるAIのバージョンで運用のところを設計すると5時間かかりましたというのが、バージョンが1個上がって最新モデルになるとそれが2時間になります、1時間になりますみたいなことを、自分たちが今まで培ってきた「タレ」が変容していくのをよく見ているんです。それを継続的にお客さんに提供するというのは、リカーリングチックなんですが、1つあるかなと思っています。

 もう1つはお客さんが作り始めると、「あ、これSIにお願いしなくても、ある程度自分たちでやれちゃうな」と気づき始めます。とはいえ大手企業は、エンジニアを採用するものの、本業ではないところにはそれほどリソースは抱えられないので、「溢れた分はあなたたちがやった方が多分安いよね」ということに気づき始めて、オーダーが継続的に来る。これも新しい気づきなんですが、そういう形になってます。

 2点目のFDEのところは、1個目、2個目じゃない、3個目の軸を考えたいなとすごく思ってます。KDDIという通信会社の子会社の開発会社のあるべき道が僕はあると思っているので、ネットもそうですし、データサルベージみたいなのもそうですし、ソブリンAIみたいなのもそうですし、投資して新しいオファリングを作るというところも、我々であればできるところが数多くあると思うので、かつそれをできればPCなどのデバイスのところまで見ていきたいなと思います。

 FDEのところで言うと、この後、鶴田(ビジネスグロース事業本部 グロース事業開発本部長 兼 コネクティッドビジネス企画部長の鶴田悟史氏)がリアルテックのAI実践の話を(KDDI SUMMIT 2026で)すると思うんですけども、FDEという名前ではないんですが、ああいうのもKDDIらしい、一番現場に寄り添っていく取り組みです。目的は「どうやってデータを循環するか」というところを意識しながら現場を広げるというところです。FDEと言ってしまうと一般的になってしまうので私はあまり最近使わないんですが、そういうゴールを見せながら、現場の業務・事業部に隙間があるところを見ていくというのは、今やっているところがこれからはそういった位置づけになっていくんじゃないかなという風に思っています。

――ビジネスの現場でAIをアジャイルに活用する際、推進・旗振り役はどのレイヤーに設定すべきでしょうか。また、単に週次会議を短くするだけではない、AI時代だからこそのアジャイルとは何だとお考えですか。

木村氏:1問目ですが、合っているかどうか分からないですが、2問目にも続く話かなと思っています。結局、アジャイルって、スプリントで早く回せばいいという話ではなくて、いろんな組織のいろんな知見を持った人がいかにちゃんとしたスクラムを組んで、プロダクトオーナーが自分の製品を、そのスクラムチームを「自分がCEOだ」という位置づけで大事にしながら事業・プロダクトを大事にしていけるかというところだと思ってます。

 なので、ただ単に早くスプリントを回して、何を言っているか分からないけれども言われた要件のものを早く作っていくというのは、たぶんAI時代には合わないことになっているんですね。いかに答えを欲しい人たちがしっかりとチームを組んで集まって、組織を超えてでも自分たちのコンテキストを回しながら成長していくのかというところが大事です。

 そうなってくると、「じゃあ誰が旗振りをするのか」というと、やっぱりそのプロダクトであったりサービスであったり、これを成長させたいと思っているプロダクトオーナーが旗振り役です。これはあまり役職とかそういうことには関係ないんじゃないかなと思っていて、私としては、できればそのアジャイルスクラムのプロダクトオーナーは「将来的にCEOの経験がここでできるかもしれませんよ」というつもりで任せたいと思ってます。プロダクトを会社とした時に、採算が取れないといけない、メンバーがちゃんと動かないといけない、そのために情報共有しないといけない、みたいな経験をさせてやりたい、そういったモチベーションがある人に私は旗振りをしてもらいたいと思います。

 そしたら2問目のところですね。「AI時代のアジャイル」、髙木さんいかがでしょうか?

髙木氏:アジャイルな、スプリントをショートで回すとかっていうところよりも、やっぱり体制とか思いとか、役割が複数あるメンバーをフュージョン(融合)させるみたいなところがすごく大事だと思ってます。

 すごくポイントだなと思うのは、アジャイルな働き方とかよく言いますけど、それプラス今回、AI駆動開発という隕石がぶつかったというのが多分すごく大きいんじゃないかなと思ってます。

 それこそMVP(実用最小限の製品)という小さなものがすぐ作って見られるというところが参加者みんなで共有できる。今までアジャイルって、「とりあえず小さく」みたいなところだったんですけど、物が本当にAI駆動開発でエンジニアライクに作り出せるみたいなところは、すごく強くなれるんじゃないかなと思っています。

 我々の子会社で「KDDIアジャイル開発センター」と、そのままの言葉を使っている会社があるんですが、彼らの今の特徴は、アジャイルをやりながらもある程度このAI駆動開発の型・スタイルみたいなものを自分たちで複数作っている。今、たしか40ぐらいの型を作っているということですけど、そういうオファリングのモデルみたいなものとアジャイルな開発の仕方みたいなものがミックスされると、より深いところまで入っていけるんじゃないかな、という感じです。

――海外では「AI駆動開発により、プロジェクトマネージャーからプロダクトマネージャーへの管理のシフトが起きている」というも話があります。AI駆動型案件における管理のあり方はどう変わるべきでしょうか。

木村氏:私の個人的な考えですが、プロジェクトマネージャーというのは、誰かが決めたプロジェクトをどう管理して回すのかというところなんですけども、プロダクトオーナーになってくると、先ほど申し上げたようなCEOと同じ役割だと思ってます。そこに参画するメンバーは、それこそCFOとかCXOが集まって1つのスクラムを作るようなイメージでいるので、プロジェクトの管理の仕方が、誰かプロジェクトマネージャーがタスクを割り振って「みんなあーしろ、こーしろ」という形から有機的に動くようになって、その責任をCEOが社長としてコントロールしながらできるような、本来言われていたアジャイルのあり方が、プロダクトオーナーには求められていくんじゃないかなという風に思います。イメージとしてはそういう違いがプロジェクトとプロダクトでは全然違っていると思います。

――それに向けて、御社でもプロジェクトからプロダクトへの管理手法の変更を進めているのでしょうか。

木村氏:全部ではないです。やっぱりアジャイル開発が全てをできるとは思っていなくて、要件がちゃんと決まっているものはウォーターフォールでもいいんですね。アジャイルが効くものというのは、やっぱり変化が激しいものだと思います。最近名前が出なくなっていますけれども、ビジネス共創をする時というのは結構不確定要素が多いので、その時にはサービス企画部門とうちの技術部門と営業部門と、こういうところが1つのチームになって進めるような事例はございます。なので全部が全部そっちに振っているというよりかは、案件事例によって体制を作ったり、元に戻したりしています。

――KDDIアイレットの発足から半年が経ち、成果や変化として実感している部分はありますか。

髙木氏:成果の実感だらけなんですが、初めのインパクトとしては、我々通信会社ってどちらかというとお客さんの情報システム本部だったり、総務部門・電話を管轄するところで、いわゆるお客さまのコストセンターなので、比較的キャリア同士で競合して最終的には価格競争みたいなところだったんですけど、アイレットが入り込んでいるお客さまは現業部門なんですね。現業部門なんですが、本当に今まで営業がいなかったので、基本的にエンジニアがご要件を伺ってお客さんと一緒に作って、というのをずっと繰り返していました。

 お客さんのビジネス構想を支援するようなことはできなかったんですけど、4月にKDDIのメンバーが合流すると、KDDIのメンバーは元々、木村が申し上げたような「お客さまと事業共創する」みたいなところをずっと磨き上げてたんです。でも、インターフェイスが情シスだったので厳しかった。

 ここがミックスされると、初めて現業部門とマーケティング、例えば我々のauのファーストパーティデータを使って「こんなマーケティング一緒にやりませんか」みたいなことが初めて現業の方とお話しできたりして、営業もかなりのやりがいを感じているんじゃないかなと思っています。ワクワクと期待に応えなきゃいけないなというのが今半分半分です。まだまだこれからです。

――木村さんが講演で触れられていた「循環型AI活用」もそうですが、夏前ぐらいから「ループエンジニアリング」という言葉も出てきました。ただ、AIの循環ループが途中で切れたり誤った方向に進んだりするという課題については、どう解決していくべきでしょうか。

木村氏:それは私もすごく普段から考えておりまして、(KDDI SUMMIT 2026の)講演ではオフィスローソンの取り組みとしてお伝えしたんですが、最初はやっぱりダイナミックプライシングをAIに全部やらせようかということを考えたんですよね。でもそれって、人の価値ってどこに行くのかというところが私は当時から気になっていて、AIを活用する間にちゃんと人が価値を生むようなところに入っていくんじゃないかというのが今の私の考えです。

 本当はAIに全部情報を食わせて、そこでダイナミックプライシングをやろうとしたんですけど、都度都度、人が間に入って新しい知見を入れていく。それが各企業固有の差別化データになっていって、A社とB社が同じことをやっているんだけど、B社が得られた知見や気づきはB社の差別化になってくる。そういう風に人をうまく扱っていくんじゃないかなと思っています。

 もう1つは、AIを使っていると、若手もそうなんですが、育成のスピードが上がっているんじゃないかな、視座の持ち方も上がっていくんじゃないかなと思っています。要はAIが経験するための時間を短縮してくれるので、今まで5年かかった経験を、例えば3か月ぐらいで高速に回すことができると、実はちゃんとそこの間に人間が入ることによって人材が育ち、そうすると回転して経験値だけでなく自分もステップアップしているので、視座が上がるのも早いんじゃないかなと思っています。

 結局、AIの活用の中には人間の判断を入れながら、その判断というのは〇×ではなくて、そこにさらにエッセンスを入れるところに人は活用されるべきじゃないかと思います。「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の、どちらかというと改善版に人間がもっと活躍していくところがやるべきところじゃないかなと今思いながら、試していこうと考えています。

――現場に入り込んで課題を見つけ、正しいループを作るFDEのようなアプローチは、KDDIアイレットとしても意識されている部分でしょうか。

髙木氏:いわゆる現場に入ってしっかり課題なり業務フローを見つけて、どこにAIが使えるんだというところですね。 私はFDEには機能が3つあると思っています。

 1つは、ちゃんとお客さんの業務が可視化できる、いわゆる業務コンサルみたいな役割。もう1つは、いわゆるAI駆動開発ができる開発エンジニア。もう1つは、ビジネスコンサルタントみたいな、実際の会社の経営に対してどういう形でこれを組み込むかというところ。この3人1セットです。

 アメリカではこれを1人でやっちゃうらしいんですが、日本では多分ほとんどこの3機能のセットだと思ってます。 一番大切なのは、お客さんの業務をしっかり知れるところ、ここだと思います。逆に今のご質問で言うと、アイレットも意識しているんですが、まだまだこのお客さんの業務を知るというところが正直弱いところなんです。ここは急ピッチで、そういう経験を持っている実務者を社内に迎え入れています。

――顧客側の情報開示と協調関係も重要ですね。

木村氏:若干言っていることと違うかもしれないですけど、FDEという言葉というよりかは、機能が出張してきてお客さんとやっていくんですけれども、結局、事業部門ごとに業務が完結しているので、我々から見たら「何々業務をやってますよね」と見えるんですけど、実は事業部ごとの隙間が埋めきれてないことが多いんです。

 それでDXをやりますと言ってもなかなかそこは繋がらない。 今、鶴田のところがやっているのは、そこの隙間を自分たちが全体を見ることによってちゃんとデータで繋ぐのか、お客さんの業務を繋いでいくのか。紙があったりExcelがあったりするんだけれども、それを一度データで繋ぐとどういうものが整うのか、みたいなところをまず見極めるところなのかなと。

 その後にコンサルみたいな話が来るんですけど、まずはアナログになっている、分断されている事業部門ごとの溝がある。ここをどうやってちゃんと繋いでデータとしてお客さまにもう1回お戻しするのかというところが、まずはやらないといけないところかなと思ってます。

 アイレットもやっていますし、KDDIはもうちょっと違う経営の方から入ってきたりするんです。そうすると、そういったところから我々は入っていくし、アイレットは現場の方へ入っていくし、みたいな2段構えで見ている感じです。

髙木氏:最近、「髙木さん、最大公約数の開発みたいな文脈もいいんだけど、僕らの会社はシステムとシステムの間に人が入っている。この人はお年を召された方で、しかもExcelの達人で、このシステムとシステムの間をExcelで繋いでいる。これが業務で600ぐらいある。これをAIで巻き取ってシステムを一気通貫に繋ぎたいというところをソリューションにしたら、日本でバカ売れするよ」っておっしゃっていた社長さんがいらっしゃいました。

 まさに木村と同じで、間にも人が入っているんですけど、俯瞰的に見るとどこがボトルネックなのかを見極めるというのは結構ビジネスになるんじゃないかなと思います。ちなみにそのお客さん曰く、そういう方に限って業務ノウハウを出さないらしいですよ。

――属人的なノウハウをAI化する際、個人の抵抗感もあると思います。評価体系や給料制度を変更するなどのアプローチは社内で取られていますか。

髙木氏:評価制度として明確に変えているということは、今はしていません。

 現場は「自分の業務を奪われたくない」と言う。とはいえ、単純に言うとそれをAI化することによって「より上位の仕事をやりましょう」と、綺麗ごとで結構いろんな教科書に書いてあるんですが、日本の企業ってそんなにリスキリングとかアップスキルがうまくいかないので、お客さんも迷っているのが実状かなと思っています。

 我々がそのお役に立ちたいというか、1つあるとすると、さっき言った内製化をするというのが、今の段階ではエンジニアの思考回路がある方が中心になられると思いますが、もう1年とか1年半ぐらい経つと、いわゆるローコードのレイヤーよりももうちょっと高いレベルでの開発が、どこかの企業のCMでやっている「文系の営業でも作れちゃった」みたいなのが多分来るんじゃないかなと。

 これはよくエンジニアとも話すんですけど、「その時に自分たちの仕事ってどうなるの?」となると、やっぱりもうちょっと上位を勉強しなきゃというところもありますし、まさにそこは我々のエンジニアも悩んでいるところです。

――AI駆動型経営を進める中で、組織のエンゲージメントとの相関関係において、社内で見えてきた手応えや成果はありますか。

木村氏:難しいですね。先ほどのExcelの話もなんですけれども、やっぱりハードルはあると思います。オフィスローソンの現場と企画と開発というのは、本当に自分たちが困っていて、だとする組織の壁なんか言ってられない、というところがスタートラインでした。

 そうなってくると、エンゲージメントがどうこうというのは、やっぱりどの単位で本当に困っている人たちを回していくのか。あまり出したくない人を無理やり引き出すより、本当に困っていて回せる人を回して、「あんなのうまくいくんじゃないの?」というところから進めていきたいと思ってます。その結果、だんだん認知が取れてきたら、評価制度とかエンゲージメントといったものが出てくるかもしれないですけど、まだそこまでの知見が私も溜まっていないので。

――成功体験が重なり合うことで自然と切磋琢磨が生まれ、気づけばエンゲージメントが上がる世界観を作れるのではないかと。

木村氏:作れると思っていますし、それを広げていこうとすると巻き込んでいかないといけなくなってくると思っています。だから、最初は1人や3人かもしれないですが、仲間を増やすともうちょっと大きな輪になって来られないかなと。それを見た別の人がまた3人ぐらいで始めて、みたいなところがスタートだと思うんですが、全社に広げるのはやり方として難しいので、ある程度そこで型が見えてきたら、今度は制度などに入れていけないかなという風に考えています。

――ありがとうございました。