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AIとドローンが街を活性化、大阪・池田市「ハッピーローソンタウン」の成果と課題

「KDDI SUMMIT 2026」講演より

 KDDIが主催するビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2026」が10月27日~28日の2日間の日程で開催された。

 同イベントでは、AIをメインテーマに据えた多数のステージプログラムを実施。ここでは、その中から本誌編集長の湯野が進行役を務めた、大阪府・池田市の街活性化に向けたAI活用の実例に関する講演、トークセッションの中身を紹介する。

街の活動量が120%アップ、AIドローンが“安心”の象徴に

大阪府池田市の概要

 大阪府北部、伊丹空港にもほど近い丘陵地にある池田市・伏尾台。1970年代に開発された同地区は緑豊かで眺望の良い住環境だが、人口減少や高齢化が進んでいる。

 日本各地の自治体と同様の課題を抱えるその伏尾台と包括連携協定を締結したKDDIは、2025年12月、地域活性化に向けた共創の取り組みをスタートさせた。

1970年代に開発されたニュータウン、伏尾台に「ハッピーローソンタウン」をオープン

 そこから地域住民とコミュニケーションを重ね、解決すべき地域課題を探ったうえで、その第一歩として2026年6月、ローソンと共同で「ハッピーローソンタウン」をオープンした。単なるコンビニではなく、地元で収穫された生鮮食品を販売し、人が集まれるコミュニティスペースとしても機能する施設だ。

説明会やアンケートなどを通じて地域住民の意見を拾い上げた

 また、行政に関する情報が得られるAIサイネージや相談ブースも設置した。太陽光発電システム、防災サイネージ、災害時通信基盤などの防災設備を充実させたうえで、地域を見守るAIドローンの発着地としても利用し、テクノロジーの力で「持続可能な次世代の街づくり」を目指す拠点とした。

KDDI 執行役員 パーソナルグロース事業本部長 村元伸弥氏

 開業から100日、KDDI執行役員の村元氏によると、以前と比べて「街全体の活動量が120%以上伸びている」という。

 KDDIの携帯電話位置情報などを基にしたKDDI Location Analyzerの人流データによれば、ハッピーローソンタウン開業前と開業100日後とを比較すると、伏見台全体で動きが活発化。「高齢者の方の活動量がそれ(120%)以上に増えている」こともわかった。

データ分析により開業前後の人流の違いを表したもの
ヒートマップでは、ハッピーローソンタウンだけでなく他のエリアでも人の集まりが活発化していることが見て取れる

 また、この100日間にAIドローンの飛行は140回を数え、「通学路の見守りや点検など幅広い用途に活用」してきた。多くの人にとってまだ身近に感じることが少ないドローンだが、日常的に活用を継続することで、防犯など暮らしの安心につながるものとして地域住民に受け入れられているという。

市外の人も惹きつける、新たな地域コミュニティ拠点へ

村元氏の講演の後、トークセッションへ

 続いて行なわれたトークセッションでは、村元氏に加えて池田市の橋本氏、ローソンの鷲頭氏を壇上に招き、本誌編集長の湯野が進行役を務め、これまでの成果と課題に関して意見を交換した。

 オープン後の手応えとしてローソンの鷲頭氏は、ハッピーローソンタウンが「地域の皆様にとっての集いの場になっている」ことを挙げた。地域住民だけでなく離れた地域の人も来店し、「会話の機会が増えていることをすごく実感している」という。

ローソン 執行役員 近畿カンパニー プレジデント 鷲頭裕子氏

 住民の期待に応えるべく、地元産生鮮食品を扱う週末マルシェ、ナイトシアターなどさまざまなイベントを開催している。が、最近は場所を借りてイベントを開きたいという住民からの問い合わせも増えているとのこと。鷲頭氏は「こちらからの一方通行だけでなく、住民の方も活性化していきたいと思っている」と感じられる状況にも、手応えを感じているようだ。

 池田市の橋本氏は、店内にリモート接客の相談窓口が設置されたことで、「行政手続きや暮らしの困りごとをその場で気軽に相談、解決できる環境」にもなっていると報告した。

ハッピーローソンタウンに実装された設備等

 定期的なイベント開催もあって、気軽に立ち寄って住民同士が顔を合わせられる「新たな地域コミュニティの拠点」として機能しており、高齢者の外出機会の増加という役割も果たしている。地域住民の交流の活発化だけでなく、市外や府外からの人も惹きつける「強力なコンテンツになっている」とした。

大阪府池田市 都市整備部都市政策課 課長 橋本直岐氏

 さらに、太陽光発電や蓄電池、AIドローンによる日常的な暮らしの見守り、衛星通信Starlinkによる緊急時の通信基盤など、防災体制の構築が「地域の安心感や防災力の向上」につながっているとも。「コンビニの枠を大きく越えて、買い物、住民相談、交流」ができ、「防災拠点というインフラができたことは大きな成果」と語った。

AIドローンは日常的に活用されている

AIアバターにウォンバット登場も間近!?

 一方で課題もある。AIアバターを使った相談窓口は「有益な仕組みではあるものの、住民のみなさまに日常的に使えることが伝わりきっていない」と橋本氏。相談窓口でどんなことができるのか、実際に触れる機会を増やしてメリットを実感してもらうことが大切だと話す。

 これについては、AIアバターの対話相手を池田市にある五月山動物園のマスコット的存在でもある「ウォンバット」にしてみては、というアイデアが出された。KDDIの村元氏は「それくらいならたやすいので検討します」と請け合い、会場の笑いを誘った。

進行役を務めたインプレス AI Watch編集長 湯野康隆

 鷲頭氏は「イベント活動などをもう少し多くの方に知っていただく機会を作った方がいい」と考えている。店内に置くリーフレットだけでなく、他にも幅広く住民の方に伝えていける具体的な手段を検討していきたい、とした。

 そのうえで、伏尾台において「さまざまなチャレンジを行なったことで、ローソンとしての経験価値や資産を生み出せた」ことから、これをもとに、全国の他の地域課題の解決にも貢献していきたい、という抱負を語った。

 橋本氏は「持続可能な街づくりはKDDI、ローソンさんの協力なしではやっていけない」とし、そのなかでも特にAIやドローンのようなテクノロジーは不可欠だとコメント。「テクノロジーやサービスを地域につなぎ、好循環を生み出す全国のロールモデルとして発展していけるように取り組んでいきたい」と力を込めた。

 トークセッションの最後に村元氏は、KDDIとしての今後の取り組みを紹介した。まず、ハッピーローソンタウンにAIアバターを導入したことで、20の自治体、25の企業から問い合わせがあったことを引き合いに、そのノウハウを活かした「KDDI Avatar Canvasというソリューションを展開していく」ことを改めて報告。

 ドローンについては、伏尾台で日常的に飛ばすことで街の映像が蓄積されると、街の変化が分析できるようになるとし、地形のわずかな差から災害の予兆をつかむ、といったような応用も考えられると付け加えた。

 現在は小学校でドローン教室を定期的に開催している。そうした活動を通じて小学生がドローンを身近に感じ、将来の職業としてドローンの開発者や操縦士を意識することも考えられる。KDDIのテクノロジーによって「新しい価値を世の中に広げていきたい」というのが橋本氏の願いだ。