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Cowork vs. Work、クロスデバイス統合のClaudeか? ネイティブ統合のChatGPTか? 2社の統合戦略を読み解く
2026年7月16日 07:00
7月9日、OpenAIからChatGPTの新機能「ChatGPT Work」が発表された。「Cowork」で先行されてきた「ビジネス向けAIエージェント」として、既存のCodex機能を再構築した長時間作業向けのAIエージェントだ。ところが、この機能が発表される2日前、ライバルのAnthropicはClaude CoworkをWebとモバイルへ拡張し、さらにデバイス間でのセッションを継続できるように、さらなる進化を発表した。Copilot Coworkも含め、広さも深さもカバーするAnthropicの「Cowork」陣営と、それに対して「ネイティブ」で対抗するOpenAIの「Work」陣営の戦いに注目してみた。
「Cowork」で先行したAnthropic
「知識労働向けデスクトップエージェント」、このコンセプトを明確な製品として最初に打ち出したのはAnthropicだった。
1月12日、AnthropicはMaxプラン向けにClaude Coworkのリサーチプレビューを開始した。Claude Codeのエージェント能力を、プログラミング以外の仕事へ持ち出す試みだ。ローカルファイルを直接扱い、文書やスプレッドシートなどの成果物を作る「AIの同僚」という立ち位置を世に示したことになる。
当初のCoworkはデスクトップ中心だった。2月(一般提供開始は4月)に登場したWindows版では、シェルコマンドや生成コードをWSL2と同じLinux VMで実行するサンドボックス環境を活用し、接続が許可されたローカルフォルダーのファイルやブラウザー(Chrome拡張機能)を利用し、PCを操作する日常的な業務もカバーするAIエージェントとなっていた。
この時点から、Anthropicは、「コーディングエージェントを知識労働へ転用する」という方向を明確に打ち出していた。
OpenAIはCodexから追い上げる
もちろん、生成AIのパイオニアたるOpenAIも同じ方向へ進んでいた。ただし、主眼はあくまでも「コード」だった。
2月2日、OpenAIはmacOS版Codexアプリを発表した。複数のエージェントを並列に走らせ、長時間の作業を監督する司令塔である。3月4日にはWindowsにも対応した。
その後、Codexの機能強化が進み、次第に、コードだけでなく、ブラウザ、ローカルファイル、デスクトップアプリを横断する汎用作業エージェントへ近づいていった。
OpenAI自身も、Codexアプリ発表時に、コーディング能力が幅広い知識労働の基盤になるという展望を示していたが(上記URLの末尾)、7月9日、OpenAIは「ChatGPT Work」として、突如、この方針を具現化した。実質的には、新製品というより、Codexで積み上げてきた能力をChatGPT製品群として再構築し、Claude Coworkが先行していた知識労働市場への本格的な参入を果たしたことになる。
OpenAIが「Work」を発表する2日前
しかし、ここでAnthropicが先手を打った。
OpenAIから「ChatGPT Work」が発表される2日前の7月7日、AnthropicはCoworkをWebとモバイルにも展開すると発表した。まずMaxプランから、今後数週間かけて他のプランへ広げるベータ提供である。
この発表が重要なのは、単にWeb版のClaude Coworkが追加されたのではないことだ。
新しいClaude Coworkでは、セッションがAnthropicのサーバー上の隔離された一時環境でリモート実行される。セッションとファイルはClaudeアカウントに保存され、デスクトップ、Web、モバイルのどこからでも同じ仕事を開始、確認、修正できる。ノートPCを閉じても作業は続き、Scheduled Tasksも端末なしで実行できるようになった。
以前、本コラムでClaude Coworkの実行環境について詳しく調査したが、PCローカルの仮想マシンだけでなく、クラウドの実行環境とも連携するように進化したわけだ。基本的な実行環境はリモートがメインになり、デスクトップのローカルファイル、ブラウザ、アプリが必要なときだけ、起動中のClaude Desktopを橋として利用する構成だ。
・Windows版「Claude Cowork」の動作環境をチェックする
つまり、Anthropicは、OpenAIが「Chat、Work、Codexの統合」を発表する2日前に、「ChatとCoworkの統合」を発表し、さらに「Web、モバイル、デスクトップでセッションを維持可能な連続性」まで先行して公表したことになる。
ChatGPT Workで統合を図るも……
7月9日、このような経緯の中で、OpenAIから「ChatGPT Work」と、従来のCodexを統合した新しいChatGPTデスクトップアプリがリリースされたことになる。
製品体系の統合、そして「知識労働」分野への進出という意味では、OpenAIの打った策は有効だ。Chatで考え、Workで調査や成果物作成を任せ、Codexでソフトウェアを開発するという基本を示し、プラグイン、スケジュール、ブラウザ制御、ローカルファイル操作、Computer Useなど、競合と同等の機能を「ChatGPT」ブランド(アプリ)へと集約することができた。
しかし、Anthropicの先手はあまりにも的確に、この一連の流れを制した。
現状のChatGPT Workは、デスクトップアプリ版だけでなく、Web版でも利用可能となっており、2日前のAnthropicの発表がなければClaude Coworkに対するアドバンテージとなっているはずだった。
しかし、先行されただけでなく、現状のChatGPT WorkのWeb版とデスクトップ版はClaude Coworkの統合と異なり、シームレスな連携ができていない。Web版WorkはOpenAIが管理するクラウドで動作する一方、デスクトップ版WorkはWindowsネイティブ(標準はアクセス制御されたPowerShell)で動作する環境となっており、それぞれのセッションは独立している。OpenAIの公式ヘルプは、ローンチ時点でWeb版Workの会話はデスクトップ版Workには表示されないと説明している(前掲のChatGPT Work and Codex内に記述)。
少なくとも、本稿執筆時点(7月12日)では、デスクトップ版Workから汎用クラウド実行環境を選択するUIや、同じWorkセッションをWebとデスクトップの間で連続させる仕組みは公式に示されていない。公式ドキュメントではCodexモードでは実行環境としてクラウドを選択可能と記述されているが、Workの汎用クラウド環境とは別の機能のようだ。
つまりOpenAIは、Chat、Work、Codexをひとつのアプリに「横に並べる」統合を実現したが、Anthropicは、ひとつのCoworkセッションをクラウドとローカル、Webとモバイルとデスクトップの間で「縦につなぐ」統合を先に示したことになる。
生成AIの最前線で戦うというのは、何と厳しい世界であることか。
では「ChatGPT Work」の優位性はどこにあるのか?
この流れを追っていて、筆者としては「ChatGPT Work」が気の毒に思ってしまったのだが、そこまで悲観する必要はなさそうだ。この点だけでChatGPT Workを評価すると、その強みを見落としかねない。
同じデスクトップ版で比べると、ChatGPT WorkにはClaude Coworkにはないメリットも存在する。
そのひとつが組み込みブラウザだ。設定で組み込みブラウザを有効にすると、ChatGPT Workアプリの中で専用のブラウザを起動可能になる。これにより、ユーザーとChatGPTが同じページを見ながら、サイトにログインし、複数タブを移動し、Web上の情報を集め、オンラインファイルを開き、ダウンロードする作業を実行できる。
Claude Coworkは、こうしたブラウザ操作をChromeの拡張機能を利用して実現する。また、ChatGPT Workも拡張機能でChromeを操作することができる。既存のChromeを利用すれば、登録済みのプロファイル、ログイン済みセッション、Cookie、開いているタブ、インストール済みのChrome拡張なども利用できる。つまり、「できること」はこちらが上だ。
一方で、組み込みブラウザはChatGPTデスクトップアプリ自身がブラウザ状態を管理する。OpenAIの公式説明では、独自のログイン状態、Cookie、履歴を持ち、複数タブ、ログイン、パスワード管理、ダウンロード、注釈に対応する。Workの会話、表示中のページ、ChatGPTの操作がひとつのアプリ内に収まるため、外部Chromeとの接続や対象タブの認識に依存する「不確定な要素」を減らせるとされている。
ブラウザの起動や接続、プロファイル選択、拡張機能との連携が不安定になり得る環境(というか、ブラウザ連携は常にこれが悩み)では、操作の再現性を高める可能性がある。その意味では、組み込みブラウザの方が確実な操作が期待できるだろう。
また、公式ドキュメントや設定画面での選択肢などでも確認できるが、Windows版ChatGPT Workの実行環境、つまりAIエージェントが各種コマンドを実行する環境がホストWindowsマシン上のPowerShellとなっている(WSLも選択可能)。どうやら、APIを利用して、専用の低権限ユーザーでコマンドごとにPowerShellを起動し、ACL、ファイアウォールなどで行動範囲を絞るというしくみのようだ(一方で、Web版のChatGPT Workの実行環境はクラウド(おそらくAzure)上のUbuntu 24.04で実行されている)。
Claude Coworkでも軽量のLinux VMが利用されてはいるが、しくみとしてWindowsネイティブでコマンドを実行するChatGPT Workの方が実行環境としてはシンプルだ。
・Windows sandbox
(※筆者注:タイトルがややこしいがWindowsの機能名ではなくWindowsの実行用サンドボックスという意味)
具体的に、この違いには性能に結びつく可能性がある。
ChatGPT Workの実行環境は、PowerShellのプロセスを起動するだけなので、VMの起動やゲストOSの維持に必要なCPU、メモリ、ストレージを消費しない。また、Windowsのファイルパスをそのまま扱える(VMではPlan9などでのマウントが必要)。もちろん、 Windowsの各種ツールやインストール済みのプログラムも直接利用できる。
つまり、Windowsネイティブ実行のChatGPT Workでは、起動負荷、メモリ消費、Windowsツールとの直接連携で有利になり得る可能性がある。
もちろん、実際に同じ処理で比較することは不可能なので、「ChatGPT WorkはClaude Coworkより何%速い」とまでは言えないが、「仮想化オーバーヘッドがないため設計上は軽量」と言っても差し支えないはずだ。
つまり、Claudeがクラウドとデバイスをシームレスにつないだのに対し、ChatGPT WorkはWindowsとブラウザとのつながりを深くしたことになる。前者はセッションの連続性、後者は目の前のPCで仕事を完結させる軽さと操作の一体感が強みになりそうだ。
Copilot Coworkで、Claudeの「横展開」も図るAnthropic
両者とMicrosoftとの関係も興味深い。
6月16日、Microsoftは、クラウド上で長時間タスクを実行し、OneDrive、SharePoint、Outlook、TeamsなどをMicrosoft Graph経由で横断する「Copilot Cowork」の一般提供を開始した。PCを閉じても処理を続け、Entra ID、既存のアクセス権、条件付きアクセス、監査、保持といったMicrosoft 365のエコシステムの中で仕事をするAIエージェントだ。
このサービスはClaude Coworkのしくみを採用したものだ。Microsoftと言えば、OpenAIとの密接な関係が知られているが、昨今はAnthropicとの関係性が急速に高まっている。
つまり、Anthropicとしては、Copilot Coworkによって「Cowork」の横展開をも同時に展開しているわけだ。同じCoworkセッションをクラウド、デスクトップ、Web、モバイルで連続させることで「深さ」を進化させ、同時に「Copilot Coworkで「広さ」も進化させていることになる。Anthropicは、技術力の高さだけでなく、市場をリードする巧みさも兼ね備えている印象だ。
今後の競争に注目
このように「ChatGPT Work」の登場によって、OpenAIはClaude Coworkが先行していた知識労働エージェントへ本格参入を果たした。Chat、Work、Codexをひとつのアプリへまとめることで、ユーザーの入口がひとつになり、(入門者にとってわかりやすいかどうかは別として)、複数の機能を扱いやすくはなった。
残念ながらClaude Coworkの先行によって、Web版Workとデスクトップ版Workの連携の隙を突かれる格好になったが、OpenAIもこのまま黙っているはずはないだろう。今後、追従したアップデータが実施されることが予想される。両者が切磋琢磨しながらこの分野が進化していくことは、ユーザーにとっては好ましいことだ。
MicrosoftのCopilot Coworkも含めた3つの(コ)ワークをめぐる競争は、今後も続くと考えられる。モデルの賢さが、ユーザー獲得に直結しにくくなりつつある今、よりビジネスシーンに適したAIをどう打ち出せるかがカギになりそうだ。














































