清水理史の「AI道場」
QuuBeeで動く懐かしのPC-98店頭デモをClaude Codeで作ってみた
2026年7月9日 07:00
最新の生成AIのおかげで、懐かしいアプリもささっと作れてしまうのだから、まったく良い時代になったと思う――。先日公開され、一部で話題になった「QuuBee」に触発され、PC-98アプリをClaude Codeで作ってみた。子どものころ、飽きることなく眺めていたパソコンショップ店頭デモのように、本サイト「AI Watch」が紹介されるデモを現代に見られたのは、単純にうれしい体験だった。
センスはさておき、動くものは作れた
まずは、どんなものができたのかを見てほしい。
実際に動かすには、以下のリポジトリの「Releases」(画面右側にある)からビルド済みのZIPファイルをダウンロードし、QuuBeeの実行用サイトにドラッグ&ドロップして、「RUN」をクリックすればいい。
個人的には、もう少し凝ったものを作りたかったのだが、いかんせんセンスと技術が伴わず、このあたりが限界だった。とはいえ、当時のデモらしい雰囲気はそれなりに出せたのではないかと思う。生成AIを使ったとはいえ、実際にはかなり試行錯誤したこともあり、動いた瞬間の感動はなかなか大きかった。
QuuBeeについては以下のサイトを参照していただくとして、今回は、この制作過程を紹介する。同じように、PC-98アプリを作ってみたいと思った人の参考になれば幸いだ。
試行錯誤で開発を進める
実際の開発は、最初から完成形を一気に作るのではなく、環境の準備、テキスト表示、音源、スクロール、画像表示と、段階を分けて進めた。ステップごとにポイントを解説する。
ステップ1:環境の準備
今回の制作には、デスクトップ版(Windows)のClaude Codeを利用した。デスクトップ版では、Claudeの作業環境(コードの作成や実行などをする環境)として、「ローカル」、「Default(クラウド)」、「リモートコントロール」、「SSH」が選択できるが、今回は「SSH」を選択し、LAN内に用意したLinuxの仮想マシンを利用した。
手軽なのは「Default」で、Anthropicが用意したクラウド上の環境を利用することだが、今回はPC-98環境にも対応可能なクロスコンパイラが必要になる。具体的には「Open Watcom V2」を使いたかったため、ユーザー側で環境を制御できるLinux環境を宅内に用意したわけだ。
サーバーやNASの仮想マシン、余っているPCを使ってもいい。WindowsならWSL2環境でもいい。今回は、作業前にGitだけはインストールしておいた。
この状態で、以下のようなプロンプトで作業を開始した。作業用のフォルダーを新たに作成し、そこをGitで管理するように依頼した。これで準備が完了だ。
ステップ2:開発の指示
次に、開発用のプロンプトを入力した。長いので、実物はこちらを参照してほしいが、「ブラウザ上で動くPC-98フリーソフトプレイヤー『QuuBee』で動作する、当時のパソコンショップ店頭デモ風のFM音源デモを作りたい」こと、コンパイルにOpen Watcomを使うことなどに加え、以下のようなデモ内容を指示した。
1. オープニング:ロゴ表示(画像またはテキストアート)
2. BGM:FM音源によるオリジナル曲(当時のショップデモ風、軽快な曲調)
3. 帯状スクロール:「AIの最新動向を届ける総合情報サイト、AI Watch」などのキャッチコピーを画面下でスクロール表示
4. トピック紹介:生成AI、開発・インフラ、AI活用などAI Watchの主要カテゴリをテキストで順次表示
5. エンディング:URL(ai.watch.impress.co.jp)を表示して終了
表示内容は後からの修正指示で変更することになるのだが、最初は凝った演出よりも、QuuBee上で確実に動かせることを優先した。なお、この初期プロンプトもClaudeによって作成したものだ。あらかじめチャットで資料を提示し、やりたいことを伝えて、Claude Codeに渡すためのプロンプトを作成しておいた。
ステップ3:環境の整備と初期アプリ作成
この指示に基づき、まずは開発環境の整備が実行された。前述したOpen Watcomのインストールが行なわれ、Claude Codeによる自己チェックでテスト用EXEの作成なども実行された。
環境が整うと、続けて自動的にClaude Codeが初期アプリを作成してくれた。今回は、プロンプトで段階的な作成を指示していたため、初期段階ではテキストのみを使ったシンプルなアプリが作成された。まず動く最小構成を作り、その後に音や画像を足していく進め方にしたのは正解だったと思う。
ステップ4:不具合の修正
初期のプログラムは、QuuBee上での動作を完全には確認できていなかったため、いくつか不具合が発生した。文字化け、画面サイズの誤認識、タイトル表示の崩れなどがあったので、実行結果の画面キャプチャを提示しながら、ひとつずつ解決していった。
この工程でわかったのは、生成AIとのデバッグでは「見た目がどうおかしいのか」を具体的に伝えることが重要だということだ。画面キャプチャを渡し、「文字化けは直ったが、タイトルがAI Watchに見えない」、「スクロールのたびに画面が上に流れる」といった形で伝えると、原因の切り分けが進みやすかった。
ステップ5:FM音源のテストと実装
次に音源のテストが実行された。まずはシンプルに音を鳴らすところから始まり、楽曲のスタイルについての質問を経て、自動的にメロディが作成された。サウンドの再生自体に問題はなかったが、Claude CodeではQuuBee上で再生した際のテンポを確認できないため、実際に再生して耳で聞いた印象を伝えながら改善を進めた。
BGMのような主観的な要素は、コードがビルドできただけでは判断できない。実際に聞いて、「少し遅い」、「もっとアップテンポのほうがいい」といった感覚を人間側が伝える必要があった。ここは、AIに任せきりにするのではなく、作りたい雰囲気を人間が決める部分だと感じた。
ステップ6:全体をビルドしてテスト
ここまでの内容で基本動作を確認できたため、実際に「AI Watch」の紹介を含めたアプリが作成された。ただ、やはりすんなりとはいかず、画面下部に横スクロール表示されるメッセージによって、画面全体が1行ずつ上にスクロールしていく現象が発生した。このあたりを再度修正してもらった。
原因は、スクロール描画のたびにカーソル位置が意図せず変わり、その後のテキスト表示がその位置から続いてしまうことだった。PC-98風の画面では、テキスト表示、カーソル位置、スクロール処理が絡み合うため、細かな表示崩れも実行して確認しながら直す必要がある。
ステップ7:ひとまず完成! 追加を依頼
不具合が修正され、ひとまず完成したものの、テキストのみで構成されたシンプルなデモだったので、画像表示を追加することを依頼した。具体的には、「AI Watch」風のロゴを画面上に表示し、店頭デモらしい見た目に近づけることにした。
カラーパレットの表示テストから実行されたものの、最初はうまく表示されなかったり、ロゴ画像が画面上のテキストと重なったりした。QuuBee側の画面モードやグラフィックVRAMの扱いを確認しながら、少しずつ表示位置や描画方法を修正した。
ステップ8:もっとデモっぽく派手に
最後に追加として、「ロゴの色を変える」、「画面遷移を自動化する」、「動くロボットを追加する」を依頼した。これで、単なるテキスト表示ではなく、少しずつ画面が変化する店頭デモらしい雰囲気になった。
ただし、ここでも細かな不具合はあった。ロボットが動いた後に軌跡として一部が画面上に残ってしまっていたため、消去範囲を見直して修正してもらった。最終的には、タイトル画面、トピック紹介、BGM、帯状スクロール、ロゴ表示、ロボットのアニメーションまでを含む形になった。
こうして完成したのが、冒頭で紹介した店頭デモ風のPC-98アプリとなる。
最後にスキル化しておく
本稿では流れを整理し、細かな修正部分はかなり端折ったので、スムーズに作成できているように見えるかもしれない。しかし実際には、文字化け、画面モード、スクロール、音源、画像表示などで、それなりに時間も手間もかかっている。
そこで、今回つまずいた点を次回以降に繰り返さないよう、プロンプトや注意点としてまとめ、Claudeのスキルにしておいた(リポジトリにも含めてある)。QuuBee向けにOpen Watcomでビルドする方法、文字列終端の扱い、OPNAレジスタへの直接書き込み、画面モードの初期化、スクロール時のカーソル保存・復元など、実際に引っかかった点を残しておけば、次回は同じところで悩まずに済むはずだ。
こうした知見を残しておけるのも、AI支援開発の面白いところだ。うまくいった結果だけでなく、うまくいかなかった過程もログとして残しておけば、次の制作の出発点にできる。
実行へのハードルはかなり低くなった
以上、Claude Codeで店頭デモ風のPC-98アプリを作ってみた。多少の試行錯誤はあったものの、PC-98の作法やFM音源の細かな知識を最初からすべて把握していなくても、AIに調べさせ、試させ、修正させながら、実際に動くプログラムまで持っていけることがわかった。
もちろん、完成度を高めるには人間側の確認が欠かせない。画面の見た目、音のテンポ、デモとしての雰囲気などは、最終的に自分で見て、聞いて、判断する必要がある。それでも、「これはどうなんだろう?」、「こんなこともできる?」という好奇心を、動くプログラムとして形にしやすくなったのは確かだ。
今回のアプリは小さなデモにすぎないが、古い環境や懐かしい表現を題材にしても、生成AIと一緒に手を動かせば、思っていた以上に楽しく作れる。PC-98の店頭デモをいまどきのAIと一緒に作るという、少し妙な組み合わせ自体も含めて、なかなか面白い制作体験だった。



















































