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京王電鉄とNōka.AI、生物学的推論AIを活用した奥多摩やまめの養殖最適化

 京王電鉄とNōka.AIは、「奥多摩やまめ養殖最適化プロジェクト」を7月8日から開始する。

 同プロジェクトは、奥多摩やまめの成長促進、飼料効率改善および品質の安定を目的とした共同研究で「生物学的推論AI」を活用した取り組みとなり、9月まで実施予定。期間中、データ統合・AIモデル学習・最適化提案・検証・知見移転の5フェーズで段階的に進めていく。

京王電鉄の社員を起点にはじまった新規事業・アクアポニックス事業

 京王電鉄では、社員の想いやアイデアを起点にスタートアップ企業などの外部企業との共創により新規事業を創造するオープンイノベーションプログラム「My turn」の案件として、3月に京王プラザホテル八王子の遊休施設を活用したアクアポニックス事業を開始した。

 現在、使用されていないプール利用者向けの温浴施設内で「ホテルで育て、ホテルで味わう究極の地産地消」をコンセプトに、奥多摩やまめ、クレソンなどを生産している。

 奥多摩やまめは、奥多摩エリアのブランド魚であり、川魚を生食できる希少性と身質の良さから料理人や食通の間で注目を集める食材。奥多摩やまめの価値を最大限に活かしながら、高付加価値な食材を求める飲食店に届けるには、養殖での生産の効率化と品質の安定化を後押しする仕組みが重要とされており、そのプロセスの確立が課題となっていた。

京王プラザホテル八王子で実施しているアクアポニックス事業の様子

Nōka.AIの「生物学的推論AI」で日本の水産業を変革

 Nōka.AIは、急増するタンパク質需要と水産業における生産性向上技術の導入不足という課題に対し、AIによる生物学的データ解析を通じた食料生産の根本的最適化を目指して生まれたディープテック企業。

 日本の水産業は、数兆円規模の重要産業であり、漁業は日本の食文化を支える不可欠な存在だがその反面、漁業を支える養殖現場では、飼料設計や成長管理の多くが長年の経験や勘に依存しており「なぜ魚は成長するのか」「何が代謝を左右しているのか」といった本質的な問いは、十分に体系化されていない。

 こうした課題を科学とテクノロジーで解決するため、Nōka.AIは、経験や勘に代わる、生物学的メカニズムを理解し推論する「生物学的推論AI」を開発した。

 生物学的推論AIでは、魚類の遺伝子や血液、筋肉の成分といった膨大な情報を学習しており、ゲノムスケール代謝モデルをはじめ、トランスクリプトームやプロテオームといった各種データを統合し、魚類細胞の機能理解、代謝ネットワークにおける栄養応答、環境条件が分子レベルで生体機能に与える影響までを解析できるようになる。

 Nōka.AIは、生物学的推論AIを通じて、人類の食料生産そのものの再定義を目指している。AIが細胞レベルで生物を理解することで、より高い生産性の実現や品質の最適化を可能とする。

「なぜ魚は成長するのか」という本質的な問いに、科学的に答えられるAIの開発を実現したNōka.AIと、奥多摩やまめを価値の高い形で安定的に届けるために成長を左右する要因をより科学的に捉えたい京王電鉄の想いが一致し、同プロジェクトが実現した。

奥多摩やまめ養殖最適化プロジェクトの概要

 同プロジェクトでは、奥多摩やまめを対象に「何を食べさせるか(飼料)」「どんな環境で育てるか(養殖環境)」「いつ収穫するか(品質予測)」という養殖の3つの核を課題に、生物学的推論AIを用いて科学的に取り組む。

 飼料では、Nōka.AIが魚の代謝データを解析することで、成長や品質に本当に効く栄養素を特定し、経験則に頼らない飼料設計を検証。養殖環境では、水温や溶存酸素量など、の環境パラメータに関しても、生体状態との相互作用を解析し、成長サイクル全体にわたる動的な最適化を図る。

 さらに品質予測では、分子・代謝データに基づく早期バイオマーカーパネルを構築し、収穫前段階で成長性や品質を予測可能とすることで、従来の事後管理型養殖から、予測に基づいて最適化する養殖への転換を目指す。

今後の取り組み

 京王電鉄とNōka.AIは、同プロジェクトを介して「勘と経験」に依存してきた養殖現場をデータと科学で変革し、奥多摩やまめの生産を安定化することで、高付加価値な食材を求める飲食店やシェフへの継続的な供給を実現する。

 さらに、品質にこだわる料理人が「いつでも、確実に手に入る食材」として奥多摩やまめを選べる環境を整え、希少食材としての価値を高めると同時に京王沿線発の新たな食文化を創出していくという。