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インテルCEOが語るエージェンティックAI時代の同社の役割

インテル CEOのリップブー・タン氏

 インテル CEOのリップブー・タン氏は6月2日、「COMPUTEX TAIPEI 2026」の基調講演に登壇し、社内外のゲストスピーカーとともにエージェンティックAI時代における同社の役割を語った。

すべてのPCをAI対応にする新チップ

 冒頭、タン氏は「インテルはエンジニアリング企業」と述べ、技術革新への強いこだわりを示した。そのインテルが今、最も力を入れているのが、PCそのものに高性能なAIを組み込むオンデバイスAIの普及だという。

Client Computing Group & Physical AI担当のアレックス・カトージアン氏

 Client Computing Group & Physical AI担当のアレックス・カトージアン氏は、最新の製造技術で作られた新しいプロセッサー「Core Series 3」を紹介。同氏は、この新しいチップがもたらすPCの劇的な進化について、「優れたユーザーエクスペリエンスとは、PCがあなたの労働時間よりも長持ちすること。そして、それこそが私たちがすべてのセグメントで提供しているものだ」と語った。

 こうした技術はポータブル型のゲーミングPCにも応用されている。ゲーム向けに調整されたSoc「Arc G3」は、従来のライバル製品と比べて「40%以上高速で、同じパフォーマンスなら電力は半分」という性能を実現しているという。

Core Series 3
Arc G3

Perplexity CEOが語る「ハイブリッド・エージェンティック推論」

 続いてステージには、PerplexityのCEO アラヴィンド・スリニヴァス氏が登場した。

PerplexityのCEO アラヴィンド・スリニヴァス氏

 インテルとPerplexityが共同で開発しているのが「ハイブリッド・エージェンティック推論」という仕組みで、クラウドと手元のPCの双方の頭脳を賢く使い分ける技術となる。

 同氏は、「ファイルを読み込み、何が機密で何がそうでないかを分類し、そしてPCがデバイスから出すべきものと出すべきでないものを決定する。これらの処理はローカルAIによって行われる」と述べ、機密性の高い仕事のデータを扱う具体的な例を挙げて説明した。

 会社の秘密情報や個人のプライベートなデータは、インターネットを通じて外のサーバーに送信することなく、手元の「Core Ultra Series 3」の中で安全に処理される。そして、新しい知識が必要なときだけクラウドのAIに接続する。

 同氏は、「ハイブリッド・エージェンティック推論こそが、ユーザーごと、ワットごとのトークン価値を最大化する方法だ」と自信を見せる。

エージェンティックAIの登場で高まるCPU需要

 Data Center Groupを担当するケボルク・ケチチアン氏は、企業のインフラがAIの需要に追いつくために進化しなければならない現状の課題を指摘した。同氏によると、将来的にはデータセンターが消費する電力の40%をAIの処理が占めるようになると予測されている。

Xeon 6+を紹介するData Center Group担当のケボルク・ケチチアン氏

 大量の電力が必要になるのは、AIの形がチャット型やアシスタント型の生成AIからエージェンティックAIへと進化しているからだ。エージェンティックAIでは、人間がゴールを1つ与えると、AIが自ら計画を立て、実行し、その結果を振り返る。まるで人間の部下のように自律して働いてくれる。

 AIが自律的に動くようになると、これまでAIの主役とされてきたGPUだけでなく、コンピューター全体を統括して複雑な指示を出すCPUの需要が爆発的に増える。同氏は、「エージェンティックAIにおいては、CPUがショーを設計する主役となる」と語り、同社が発表した最新のデータセンター向けプロセッサー「Intel Xeon 6+」が、この複雑なAIの司令塔としていかに最適であるかを強調した。

SambaNova、CPU+GPU+RDUでAIを2〜3倍高速化

 講演の後半では、システム全体でAIを効率よく動かすためのチームプレイの重要性が語られた。インテルは、AIの計算を専門とするSambaNovaとの提携を発表した。SambaNova CEOのロドリゴ・リアン氏は、ステージ上でCPUとGPUに自社のAI専用チップのRDUを組み合わせたデモンストレーション動画を披露した。

SambaNovaのデモ

 同氏は、それぞれのチップが役割分担して働く様子を「Xeonプロセッサーがすべてのツール実行を行なっている。SambaNovaのチップがすべてのトークンを生成している。そしてGPUが事前の高速な読み込みを実行している。3つのチップすべてが連携して動作すると、エンドツーエンドのレイテンシーが劇的に低下する」と説明。混成チームによる処理は、GPU単体でAIを動かすよりも2〜3倍も高速だという。

あらゆる分野へ広がるAIの社会実装

 インテルのAI技術がもたらす未来は、人類の健康や社会全体の仕組みにも深く関わっている。医療・創薬の分野では、Greenstone Biosciencesとの協業がビデオメッセージの形で紹介された。同社の創業者 ジョセフ・ウー博士は、わずか10ccの血液から患者と遺伝的に同じミニチュアの臓器(オルガノイド)を作り、AIを使って薬のテストを行なうという最先端の取り組みを説明し、「人間の生物学とAIコンピューティングの組み合わせは、次の10年におけるバイオメディシン(生物医療)の未来を形成するのに役立つ」と期待を寄せた。

 また、日立製作所とのパートナーシップについても紹介された。ビデオメッセージで登場した德永俊昭社長は、「インテルの高度なコンピューティングと、日立のフィジカル世界における産業的な強みを組み合わせることで、私たちの強みをさらに近づけている。私たちはビジネスと社会の両方に利益をもたらすインテリジェントなソリューションを生み出していく」と、今後の協調の意義を語った。

ビデオメッセージで登場した日立製作所の德永俊昭社長

 工場の自動化を推進する産業オートメーションの領域では、ドイツのシーメンスとの連携拡大も明らかにされた。ビデオメッセージで登場したCEOのローランド・ブッシュ氏は、AIを組み込んだソフトウェアを活用して、設計の品質向上から、製造プロセスの自動化、さらにはサステナビリティの実現に至るまで、バリューチェーン全体でインテルとの提携を深めていると言及。同氏は「このバリューチェーンで作成されたチップがシーメンス製品に使用される。今後の展開を楽しみにしている」と語り、製造業の未来におけるAIインフラの重要性を示した。

過去に縛られない新しいインテル

 最後にタンCEOは、自身がCEOに就任して以来、社内を大きく変革してきた歩みを振り返った。大量生産が始まった最新の18A製造プロセスや、新しいチップの数々は、その変革の成果とも言える。

 同氏は、「私たちは過去に縛られていない。私たちは素晴らしいものを構築している。私たちは最前線で働き、コンピューティングを再定義し、それをAI時代に向けて非常に効率的なものにしている。これはほんの始まりに過ぎない」と述べ、基調講演を締めくくった。