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手のひらサイズのデータセンター、Dell Pro Max with GB10を触ってみた

Dell Pro Max with GB10

 最近トレンドの「エージェンティックAI」は使うと便利だが、AIが裏で何度も思考を繰り返すため、クラウドAIだと「気がつけば数万円の請求が……」という料金体系に恐怖を感じてしまう。

「それ、手元のマシンで解決できない?」ということで、「Dell Pro Max with GB10」(以下、GB10)を試しに使ってみることにした。

Dell Pro Max with GB10とは

 GB10は、NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchipを搭載したPCで、128GBのLPDDR5Xメモリーを搭載するなど、AI開発用に設計された小さなデータセンターと言える製品だ。NVIDIAの「DGX Spark」のOEMモデルとなり、基本的な仕様は共通で、デル・テクノロジーズの場合、必要に応じてストレージ容量が選択できるようになっている。

 価格はスタンダードなストレージ容量1TBのモデルで992,388円(2026年7月時点)と個人で購入するにはなかなか勇気が必要だ。ただ、毎日3万円程度をクラウドAIのAPI利用料として支払っていると仮定すると、1か月程度で元が取れる計算になり、会社の部署に1台、といった形でバリバリ活用していくことを想定すると、そこまで非現実的な導入コストでは無いはずだ。

背面のポート

 150×150×51mmというサイズ感は、まさに手のひらサイズで、置き場所にも困らない。背面にはUSB-Cポートを4つ備えており、そのうち1つは電源入力用に使用する。その横にはディスプレイに接続するためのHDMIポートと有線LANポート、他のDell Pro Max with GB10と接続するためのConnectX-7ポートが用意されている。

 普通のPCのように一般的なキーボードやマウスを接続して使う場合はUSBハブなどを使って端子の変換を行なう必要があるが、無線LAN経由で他のPCからアクセスしてセットアップするモードも用意されており、一度セットアップしてしまえば、ターミナル経由やリモートデスクトップ接続でごく普通のLinuxサーバーとして稼働させられるようになっている。

自分専用の自律型AIエージェントをセットアップ

 さて、ここからが本題。Claude CoworkのようなエージェンティックAIをGB10上で動かす場合、「OpenClaw」や「Hermes Agent」といった自律型AIエージェントをセットアップして使うのが定石となっている。

 こうしたセットアップ作業を行なう上では、NVIDIAがDGX Spark向けに用意したPlaybookのWebサイトが役に立つ。基本的に英語で書かれているサイトではあるが、Webブラウザーの翻訳機能をONにすれば、日本語で概ね理解できるようになるだろう。

「OpenClaw」を起動したところ

 今回はOpenClawを使ってみるので、PlaybookにあるOpenClawのページを開いてセットアップ手順を確認。手順の説明にも書かれているが、OpenClawはそれ単体では動作せず、ローカルでLLM(大規模言語モデル)を動かすエンジンが必要となる。Playbookでは「vLLM」を併用する手順が紹介されているが、「Ollama」や「llama.cpp」などでもOK。今回はPlaybookの通り、vLLMとQwen3.6 35Bの組み合わせで試すことにした。

 そこそこ大きなモデルとなるQwen3.6 35Bのダウンロードに少し時間がかかるが、手順通りにセットアップを進めていくと、30分ほどでOpenClawが利用可能となり、自分専用のAIエージェントが使えるようになる。

OpenClawで何ができるのか

 セットアップが完了したところで、OpenClawに簡単な作業をリクエストしてみた。

「本日のAI関連のニュースやトレンドを教えてください。それぞれの情報ソース(URL)も示してください。」

 すると、ネット検索などを行ないながら、数十秒ほどでその日のトピックを整理して提示してくれる。ただ、これだけではAI Watchをチェックしているのと同じだし、ChatGPT、Claude、Geminiなどとも大差がない。

試しにAI関連のニュースを調べてもらったところ

 OpenClawの場合、GB10の中にあるさまざまなファイルにもアクセスできるので、それらを自由自在に操れる。もちろん、権限さえあれば、社内サーバー上のデータにもアクセスできる。ここはクラウドAIには無い強力な部分でもあると同時にリスクともなり得ることは理解しておく必要があるだろう。

 企業内のドキュメントを扱うのであれば、NVIDIAが提供する「NemoClaw」などのセキュリティ・フレームワークを導入し、情報管理を徹底すべきだが、今回はお試しということもあり、ダミーデータを用意。ダミーデータを作るなどという地味で面倒な作業こそ生成AIが得意とするところだ。

テスト用のダミーデータも作ってもらった

 ここで「dummydataフォルダ内に部署ごとの資料がまとまっています。各部署の事業上の課題をリストアップしてください。」と頼むと、最初は出力に失敗することもあるが、自身で問題を修正しながら業務を遂行。「最重要と考えられる事象について、詳しくレポートしてください。」と頼めば、それぞれの課題を深掘りして報告してくれる。

業務上の課題のリストアップをリクエストしたところ

スマホからも自由自在

 OpenClawの場合、SlackやLINEといったチャットアプリから使えるようにする機能も用意されている。つまり、スマートフォンからも手軽にOpenClawを使えるということだ。

 実際のところ、SlackやLINEとの接続はややハードルが高いので、最も簡単に使えると思われるTelegramと接続して使ってみることにした。設定手順についてもOpenClawに質問すれば教えてくれる。

 例えば、GmailなどのGoogleのサービスを使っているのであれば、Google Cloud上でGoogle Calendar APIを有効にし、OpenClaw上にGoogle カレンダーを読み書きするスキルを作っておけば、「明日の予定を教えて。」とTelegramに打って予定を確認できるようになる。

スマートフォンのTelegramアプリからチャットで翌日のスケジュールを確認

 そうなると、Telegramから操作できるのはカレンダーだけではなく、前述のドキュメントの確認であったり、調べものであったり、何でも依頼できるということがご理解いただけるだろう。

 万が一、OpenClawそのものの挙動が怪しくなってきた場合は、他のクラウドAIサービスにエラーコードを伝えるなどして解決していけばいい。以前は大量のドキュメントに目を通したり、似たような問題を解決してきた先人の知恵を検索して調べたりする必要があったが、今はAIがそれをサポートしてくれるので本当に楽な時代だ。どこにも解決策が見つからなければ、「◯◯するツールを作って」と頼むのも一つの手だ。

GB10がみんなの手元にある未来

手のひらサイズのデータセンター

 実際にしばらくGB10を使ってみた感覚としては、極めて優秀な秘書や執事がサポートしてくれているようで、実に頼もしい。今回はGB10上で動かせるものとしてQwen3.6 35Bという、そこそこ賢いAIモデルを使っているが、もっと賢いモデルを使いたいということであれば、利用料金はかかるが必要に応じてクラウドAIを呼び出して使うこともできる。こうした柔軟な運用が可能なところも、手元に置いてカスタマイズできるGB10を使うメリットだ。

 元々はエンジニアがコーディングに活用しようと急速に進化させてきたエージェンティックAIだが、一般的なPC上でこれを快適に動かすのは大変だ。GB10は、そうしたハードルを軽々と飛び越え、論理的思考を伴うビジネスのさまざまな局面においても非常に有益なことが体感できるようになっている。

 GB10上で動くOpenClawの画面を見ていると、失敗しながらも試行錯誤を重ねて課題を解決しようとしている姿は実に人間的だ。時には無限ループに陥っている場面にも遭遇するので、その場合は割り込みをかけて、「そこはこうした方がいいんじゃない?」とアドバイスすると、方向修正しながらゴールを目指してくれる。

 大事なことについては、「これは覚えておいて」と伝えておくと、長期記憶にも記録されていくので、使えば使うほどユーザーの思考に馴染んでくるのも面白い。形を変えたスターウォーズのC-3POやR2-D2のようにも感じられる。

 ファイル整理や記憶検索、Web検索を組み合わせたタスクをこなす体験は、クラウドAIよりも少しだけ遅いかもしれないが、社内データや個人情報、技術文書が外に出ないという安心感は、どれくらい速いかよりも重要な価値とも言える。今のところ、簡単な作業は手元のAI、クラウドに送ってもいい作業はクラウドAIというハイブリッドな運用が、実務では最も現実的な使い道だろう。

 GB10のようなAIマシンがオフィスや家庭に1台あると、我々の働き方や日々の生活が大きく変わっていく。そんなことを感じずにはいられない。