DGX Sparkでゼロから始めるAIワークステーション

いつもの仕事用PCからリモートコントロールしたい

 DGX SparkはAIワークステーションとしては優秀ですが、Linux系OSということもあり、汎用的な仕事用・趣味用PCとして使うのに向いているとは言えません。GUIで操作できるとはいえWindowsやmacOSほどの「親切さ」はないですし、いつものPC感覚で扱えるソフトウェアも限られています。

 したがって、もともとの役割でもあるAI処理はDGX Sparkで、普段のデスクワークをこなすとき、もしくはゲームのようなエンタメを楽しむときは既存のPCで、といったスタイルが標準的な使い分けになるでしょう。

 そうしたときにモニターやキーボード・マウスをもう1セット用意して、DGX Sparkを使いたいときに操作をそちらに切り替える、というのは少し面倒です。ファイルのやりとりなども考えると、いつものPCを使う延長でDGX Sparkに素早くアクセスできるようにしたい、と思うのではないでしょうか。

 DGX Sparkではそのような使い方に適したリモートコントロール用の機能がいくつか用意されています。本格的な活用に向けて、初めのうちに使えるようにしておきたい便利機能を紹介しましょう。

「NVIDIA Sync」でステータス管理からファイル送受信までカバー

 他のPCからDGX Sparkに最も簡単にアクセスできるようにする方法が、公式ツール「NVIDIA Sync」を使ったやり方です。セットアップ手順はもちろんポータルサイトのプレイブック「Set Up Local Network Access」に掲載されています。

□Set Up Local Network Access
https://build.nvidia.com/spark/connect-to-your-spark/sync

 その手順の中身も簡単で、(同じLAN内にある)PC側にクライアントソフトをインストールして画面の指示に従って設定するだけ。DGX Sparkで何か作業する必要はありません

適切なクライアントソフトをインストール
PC側にインストールされているVisual Studio Codeなど連携可能なアプリが検出されるので、使いたいものを有効に
LAN内にあるデバイスが表示されたらDGX Sparkを「Add」
DGX Sparkのログインに使っているユーザー名とパスワードを設定
NVIDIA Syncにはタスクトレイからアクセス可能
DGX Sparkが電源オンかつネットワークにつながっていれば「Connect」ボタンですぐに接続されます
リモートアクセスする準備が整いました

 NVIDIA Syncには複数の機能が用意されています。1つはDGX Sparkの動作ステータスを確認したり、ソフトウェアアップデートを管理したりできる「DGX Dashboard」、2つ目はSSH接続してコマンド操作できるようにする「Terminal」、3つ目は連携アプリの設定と起動です。

マシンステータスを確認できる「DGX Dashboard」

 また、DGX Spark上で動作させているサーバーにアクセスするショートカットを登録することもできます。たとえばOpenClawのようなAIツールのダッシュボード(Web管理画面)のショートカットを登録しておいて、必要なときにワンクリックで手元のPCからアクセスする、というような使い方ができます。

ショートカットの追加は「Add New」ボタンから
OpenClawのWebダッシュボードのURLを設定
PC側でダッシュボードを一発で起動できます

 それらのなかでも一番使い勝手の良い機能がアプリ連携、たとえばVisual Studio Codeとの連携です。Visual Studio Codeが標準で備える機能や拡張機能を応用し、SSHコンソール、ファイルマネージャ、ファイルビューワおよびエディタといった機能を通じてDGX Sparkとのデータのやり取りを1ウィンドウで実現します。

Visual Studio Code連携を実行
クイックアクセスから「Linux」を選択すればDGX Sparkとの接続が確立します

 DGX Spark上のファイルを全て一覧することもできますし、コードなどのテキスト形式のファイルはVisual Studio Codeのエディタで開いて編集可能。画像ファイルの表示やメディアファイルの再生も同じくエディタ内で行なえます。

エクスプローラペインでDGX Spark上のファイルを一覧。画像選択するとエディタで表示

 Vimやnanoのようなコンソールベースの(Linux初心者にはとっつきにくい)ツールではなく、コーディングエディタとしておなじみのVisual Studio Codeをそのまま使える、というのがミソです。DGX Spark上のファイルをPCにダウンロードすることもできますし、反対にPCにあるファイルをDGX SparkにアップロードするのもOK。アップロードについてはドラッグ&ドロップに対応しています。

 さらにコマンド実行もできるので、AI処理に必要なサーバーの立ち上げやスクリプトを使ったファイルの一括操作も可能。PC側でコードやリソースを作成し、それをDGX SparkにコピーしてAI処理を実行、できあがった成果物をPCにダウンロードする、みたいな一連の作業もGUIで楽にこなせます。

ターミナルも使用可能

 ただし、基本的には1つのウィンドウを分割して各機能(ファイルのツリー表示、コンソール、エディタなど)を表示するので、モニタが小さかったり表示する要素が多かったりするとかえって操作しにくくなる場合があるので注意が必要です。

できるだけ大きな画面で作業したくなるかも

直接GUIで操作したいならリモートデスクトップ

 Windows/macOSユーザーとしては、キーボードからコマンド入力するよりも、可能な限りGUIでデスクトップをマウス操作できるようにしたい、と思うのではないでしょうか。そんなときはリモートデスクトップの出番です。

 DGX SparkではOS標準の「Remote Desktop」機能があり、ここで「Desktop Sharing」を有効にすると、PC側のリモートデスクトップクライアントからアクセスできるようになります。たとえばWindowsではマイクロソフト公式の「Windows App」などを使うとよいでしょう。

設定画面の「System」から「Remote Desktop」へ
「Desktop Sharing」「Remote Control」を有効にして、ログインユーザー名とパスワードも入力
Windows Appをダウンロード
Windows Appで接続先となるDGX Sparkの情報を入力し、先ほど設定したユーザー名・パスワードでログイン
Windowsのデスクトップ上でDGX Sparkのデスクトップが見えるように

 環境構築のようなシステムにも関わる広範囲の設定を行なう際に、GUI操作できるリモートデスクトップは便利です。マウスのドラッグ&ドロップなどで直感的にファイル操作できるのもメリットと言えます。

 しかし注意しておきたいのは、DGX Sparkが電源オンでもログアウト状態になっているとクライアント側から接続できないこと。DGX Spark側でいったん直接ログインする、という操作が最初に必要になるので手間かもしれません。これを解決するには追加のソフトウェアの導入が不可欠です。

 また、リモートデスクトップの接続中は余計なGPU負荷やメモリ消費が増えることがあるので、シビアなAI処理をするときにはあまりおすすめできません。ターミナルを使うか、各ツールのWebダッシュボードを使うか、あるいはリモートデスクトップにするか、適材適所で活用していきたいところです。

AIワークステーションとしての準備が完了!

 以上のようなリモート端末からのアクセスが可能になると、いよいよAIワークステーションとして運用していく最低限の準備が整ったと言えます。

 あとは自分のしたいことに適したAIツールを見つけて導入し、使いやすくなるようにカスタマイズして最適化していく……のがいろいろ難しいのですが、それこそが楽しい時間だったりします。

 トークン消費を気にせず使い放題のローカルAIだからこそ、できることの幅は無限大。昨今話題のAIエージェントによる自律的な処理もどこまでできるものなのか、次回以降チャレンジしていきたいと思います。