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AMD、フィジカルAI向けのソリューションを披露

カントリーマネージャーの杉山功氏

 日本AMDは8月28日、フィジカルAI市場に向けた最新ソリューションに関するラウンドテーブルを開催した。カントリーマネージャーの杉山功氏と技術本部部長の古屋憲吾氏が登壇し、次世代組み込み向けプロセッサー「Ryzen AI Embedded X100シリーズ」や、同チップを搭載したモジュール製品「Kria AI System on Module(SOM)」について説明した。

 杉山氏は、デジタル空間上のデータ処理にとどまらず、環境認識から判断、物理的なシステムのリアルタイム制御までを担うフィジカルAIは、ロボティクスやオートモーティブ、産業機器、ヘルスケア、防衛など幅広い分野で急速に需要が高まっていると市場の動向を説明。その上で、2035年までにフィジカルAI向けシリコン市場が約2000億ドルに達するとの試算を示し、顧客の開発フェーズがプロトタイプから実際の商用ビジネス創出へと移行しつつあると指摘した。

 フィジカルAIの現場では、周囲の環境変化に即座に応答するデターミニスティック(決定論的・予測可能)なリアルタイム処理が必須となる。従来のようにCPUと外部GPUの間で頻繁にデータをやり取りする構成では遅延の発生が避けられないため、AMDはCPU、GPU、NPUを1チップに統合し、それらが単一のDRAM空間を共有するユニファイドメモリー構造を中核に据えている。

 その具体的な解として提示されたのが、最先端の4nmプロセスで製造されるRyzen AI Embedded X100シリーズとなる。同シリーズは、最大16コア・32スレッドのZen 5アーキテクチャCPUと、外部アクセラレータカードに匹敵する40コンピュートユニット(CU)の強力な内蔵GPU、さらに常時稼働するAIタスクを低消費電力で担う50TOPS処理能力のNPUを搭載する。128GBのユニファイドメモリーを232GB/sの広い帯域幅で共有することにより、データコピーによるボトルネックを解消し、低遅延かつ高度な並列処理を実現している。

P100シリーズ(左)とX100シリーズ(右)

 動作電力(TDP)はシステム要件に応じて45W~120Wまで設定可能で、マイナス40℃~105℃に対応する拡張温度耐性や10年間の供給、24時間365日の連続駆動を保証するなど、厳しい過酷環境での利用に耐え得る仕様を備えている。X100シリーズの量産出荷は、2026年第4四半期を予定している。

 ハードウェアの実装を一層加速させる手段として、古屋氏は「Kria AI SOM」およびその開発キット「Kria AI Robotics Developer Platform」を紹介した。

技術本部部長の古屋憲吾氏

 Kria AI SOMは、X100プロセッサーを中心に周辺の電源回路やメモリーを一体化したモジュールで、顧客がゼロから基板を設計することなく即座に評価と開発に着手できるよう設計されている。150社以上の顧客調査で強く求められた「デターミニズム(時間応答の確実性)」「オープンアーキテクチャ」「自社製品群に広く展開できる汎用プラットフォーム」という要望に対応し、システム全体の開発コストと期間を大幅に削減する狙いがある。

Kria AI System on Module(SOM)
Kria AI Robotics Developer Platform

 ソフトウェア面において、AMDはベンダーロックインを排除したオープンスタック戦略を強調する。同社のAIソフトウェアプラットフォーム「ROCm」を基盤とし、Robotics Core SDKや産業・医療向けのモデルを包含するPhisical AI SDKを網羅した「AMD Robotics Software Suite」を提供する。

 とくに業界で標準的に用いられているNVIDIAのCUDA環境からの移行について、古屋氏はCUDAと1対1で互換性を持つカーネル群と自動コード変換ツール「HIPIFY」を活用することで、移植にかかる作業工数を70〜80%削減できると自信を示した。

 説明会の中では競合製品とのベンチマーク結果も開示され、同等の他社プラットフォームを上回るリアルタイム安定性とCPU処理の余力を誇ることが示された。

 実機デモでは、カメラ映像と言語指示から動作を導くVLAモデルによるロボットアーム制御や、ティアフォー開発の自動運転プラットフォーム「Autoware」をわずか2〜3日の移植期間で稼働させたというシミュレーションも披露された。

 さらにヒューマノイドロボットのような高度なシステムの構築においては、脳(ブレイン)部分に強力な処理能力を持つKria AI SOMを配置し、関節や各種センサーのリアルタイム制御にはFPGAベースの「VERSAL」や「SPARTAN」シリーズを組み合わせる構成が提示された。機能ごとにモジュールを分棟化することで、将来的なアップグレードや部分的な機能変更にも柔軟に対応できる強みが打ち出されている。

Ryzen AI Embedded X100を使ってロボットアームを制御するデモ

 AMDではシリコンからモジュール、ソフトウェア、そして多様なパートナーエコシステムまでを一体で提供することで、フィジカルAIの実装において主導権獲得を目指している。