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NTT CS研、省電力AIモデル実現に向けた基礎研究などを披露

NTT コミュニケーション科学基礎研究所(CS研) 所長の納谷太氏

 NTT コミュニケーション科学基礎研究所(CS研)は、5月20日~22日にかけて最新の研究成果を紹介するイベント「オープンハウス2026」をNTT西日本 QUINTBRIDGE・PRISM(大阪府大阪市都島区東野田町4-15-82)で開催する。

 開催に先立ち、その一部を紹介する内覧会が12日に都内で開催され、所長の納谷太氏が概要を説明した。

 NTT持株会社の下にはIOWN総合イノベーションセンタ、サービスイノベーション総合研究所、情報ネットワーク総合研究所、先端技術総合研究所の4つの総合研究所、全体で14の研究所がある。

 納谷氏によれば、CS研は「人と人、人とAIとのコミュニケーションをいかに円滑にして、その仕組みを理解したり、それを活用した新しいコミュニケーション形態を作っていくというようなミッションで研究している」。

CS研の研究領域

 コミュニケーションというと、音声や画像、映像といったように既存のメディアを連想することが多いが、触覚のほか、人間が発する心拍や筋電、脳波といったものもメディアの一つとして捉え、基礎研究を行なっている。また、それぞれのメディアそのものの特性を調べ、音を光を使って可視化する手法や、人間にとってどうすれば使いやすい形に変換できるかなど、幅広い領域で研究を行なっているという。

 さらに、デジタルツインの社会実装が進んだ将来、複雑なデータの規則性や因果関係を調べ、どのような現象を引き起こすかという、ICT社会に変革をもたらすような研究や、人間が言葉を覚えたり、感情を発達させたり、社会性を学んでいくというような人間科学に関する研究も手掛けている。

 今回のオープンハウスでは、全体で22件の研究展示やデモンストレーションが行なわれる予定だが、内覧会ではそのうち8件の研究内容が紹介された。本誌では、AIに関連する話題を中心に紹介する。

 AIの活用の裏側にはデータセンターにおける膨大な計算処理があり、内容が高度になればなるほど電力を消費するという課題がある。AIビジネスをリードする米国のIT大手は、その電力を確保するために原子力の活用を呼びかけたり、宇宙にデータセンターを構築したりと、AI用のエネルギー確保に躍起になっている。

 CS研では、こうした課題に対し、NTTグループが得意とする光ニューラルネットワークの技術を活用したアナログデバイスに適した効率的な学習アルゴリズムを考案。CPUやGPUといったデジタルデバイスを使用した場合よりも省電力なAIモデルの実現に向けて研究を進めているという。

 また、AIのマルチモーダル化が進み、画像認識の精度も向上してきているが、テキスト情報と画像情報を相互に行き来するようなクロスモーダル処理を行なう際に、実際には意味不明だがAI的には類似度が高い“ハブ”が埋め込まれ、検索結果にノイズが混入してしまうという問題が認識されている。

 こうした問題に対し、ハブの埋め込みを獲得し、それをハブテキストへと逆変換する手法を考案。こうしたハブテキストを分析していくことで、ハブの発生原因を解明し、意味不明な挙動の抑制に繋がると期待されている。

 音声処理の技術としては、深層学習・ニューラルネットワークに基づいて任意の音を選択して聞きやすくしたり、逆に聞こえなくしたりする「SoundBeam」が披露される。人間には、さまざまな音が入り混じった環境下でも、聴きたい音に耳を傾ける「選択的聴取」を行なう能力があるが、これをPC上でリアルタイムで再現したものとなる。

 この技術を応用することで、オンラインミーティングなどで、相手に聴かせたい音だけを選択して送信したりすることが可能となる。AI関連では、音声データをテキスト化する文字起こしの精度を高めることにも繋がるだろう。

 すでに一部の図書館などでフィールド実験が行なわれている絵本感想対話AIの「ぴたりえチャット」も紹介されていた。NTTが独自に構築した9000冊規模の絵本・児童書コーパスと、独自LLMのtsuzumi 2を組み合わせ、ロボットとの対話によって子どもたちの絵本の感想を引き出すことを通じて、言語発達をサポートしようというものとなっている。

 面白いところでは、物体の柔らかさや粘り気といった質感をディスプレイ上の表現で伝えるデモンストレーションも行なわれる。こればかりは実際に体験してみないと分からないだろうが、例えば、親指と人差し指で挟んだボールの柔らかさを視覚を利用して表現することで、触覚デバイスがなくてもその柔らかさを感じられるようになっている。近い将来、オンラインショッピングなどで商品の特徴を伝えるために使われることになるかもしれない。