DGX Sparkでゼロから始めるAIワークステーション
AI監視カメラシステム、DGX Sparkで作るとどうなる?
2026年9月29日 12:00
少し前に姉妹誌のPC Watchで、ミニPCとネットワークカメラによるAI監視カメラシステムを作った「AIに丸投げしたら1日でできた。ミニPCで作る『サブスク不要』のAI監視カメラ」という記事を書かせていただきました。ローカルAIで人などを検知したらスマホに通知する仕組みです。
詳しい内容は記事を読んでいただければと思うのですが、これをミニPCではなくDGX Sparkで動かすようにしてみたらどう変わるのか、メリット・デメリットはあるのか、などが気になったので試してみることにしました。
ミニPCでも実用的なAI監視カメラシステムを作れる、けれど……
PC Watchの記事内容を簡単に振り返ると、ミニPCと市販のネットワークカメラを組み合わせて、AIコーディングでAI監視カメラシステムを作る、という内容でした。
カメラ映像をローカルAIで常時監視し、人やクルマなどの動きがあったときにそれを検知して、スマホにプッシュ通知します。怪しい動きがあったときにすぐに気付けるようにして防犯につなげる、というものです。
全てローカルAIで処理するので、映像がインターネットに流れず、プライバシーを保ちやすいのが利点です。自宅の環境に最適化した機能を作れるのもメリットと言えるでしょう。システム構成や処理の流れは下記のようにしました。
・ミニPC(GMKtec NucBox K15、Intel Core Ultra 5 125U、メモリ32GB)
・ネットワークカメラ(TP-Link Tapo C325WB V2.0)
・eGPU(NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti)
・スマートフォン
・宅内LAN環境
【ソフトウェア】
・Windows 11 Home
・ClaudeまたはChatGPT(Codex):コーディング用
・Docker Desktop:サーバー用仮想環境
・Frigate:ネットワークカメラ制御用ソフト
・Mosquitto:システム連携用
・Home Assistant:オートメーション用、スマホアプリ
・Ollama:AI処理基盤
統合メモリが32GBのミニPCを使用したので、ローカルAIを使うにあたっては制約がそれなりにありました。なんといっても賢い(容量の大きな)AIモデルが使えないのが難点です。
実際、映像の中身を文章化するのに使ったのは「Qwen 3-VL 4B Instruct」(3.33GB)というかなり軽量なモデル。内蔵GPUで処理させてフローをチューニングすることでなんとか実用レベルの速度になったかな、という感じでした。
eGPU(外付けGPU)を組み合わせることでさらに高速化できるものの、監視カメラシステムとしては大げさで、消費電力も大きいので常用しにくいのがネックとなりました。
結局、この機器構成では、そこそこ高速で消費電力も抑えられる内蔵GPUによる処理が、AI監視カメラシステムとしては最もバランスが取れたものになったと思います。
ちなみに最近のネットワークカメラは単体でAI監視ができるものが増えています。が、たいていクラウド接続が必須となってしまうため継続的なコストが発生しますし、プライバシーも気になります。
自分でAI監視カメラシステムを作る場合、PC本体分のコストはかかるものの、クラウドサービスに頼らず、プライバシーも守れて、好きなように作り込んで利便性を追求できる、というのが魅力なのです。
DGX Sparkにしたときのメリットは? 高速になる? 消費電力は?
さて、そんなミニPCでの結果を受けて、じゃあ128GBのメモリを搭載するDGX SparkにそのAI監視カメラシステムを載せたらどうなるのか、というのを確かめてみます。メモリ容量に余裕があるので、リッチなシステムが作れそうですが……。
真っ先に考えられるのが高性能なモデルへの切り替えでしょう。ミニPCで使ったQwen 3-VL 4B Instructは、軽量な分、認識精度や文章作成能力はあまり高くないと考えられます。なので、より大きなモデル「Qwen 3-VL 30B A3B」にも切り替えられるようにしました。
2つそれぞれ実行して比べてみると、スマホ通知で表示する短い文章については「160トークンまで」という制約を課していることもあり、モデルサイズの違いを感じることはほとんどありません。
ただ、文字数上限を緩くして「映像を詳しく説明せよ」と指示してみた場合には、4Bのモデルだと同じ文章を永遠に繰り返すなどの問題が出ることがあります。使い続けるうちに短文のときにもこうした不安定さが顕在化しないとも限らないので、これを排除できるのが30Bのモデルを使う利点の1つと言えそうです。
処理速度と消費電力はどうでしょうか。できればミニPCより高速であることを期待したいところ。監視カメラは24時間365日運用が基本となるので、消費電力が抑えられていることも重要です。
ということで人の検知からスマホ通知までの時間、それと消費電力を、4Bと30Bのモデルそれぞれで計測しました。ミニPCでの計測結果とともにグラフ化したのが下記です。
ミニPCでは、この計測後に「説明処理開始までの待ち時間」を改善して約2秒にまで短縮しているので、実質的に最初の画像付きの「検知した」だけを伝える通知が届くまで数秒、その後の説明文の通知が内蔵GPUで10秒余り、eGPUでは5秒程度というようなスピードでした。
DGX Sparkに移植するにあたってはこの処理フローを少し変更しています。説明文付きの通知も高速化できるだろうとの予想のもと、一度の検知で何度もプッシュ通知が飛ばないように、最初の「検知した」だけの通知は省いて、説明文+画像の通知1つに処理を変更しています。
結果的には3~4秒で通知処理を終えており、ミニPC+eGPUの組み合わせよりもトータルで高速になりました。AI監視カメラとしては全くストレスのない動作です。
ただし消費電力は微妙です。DGX Sparkの待機時の消費電力は45~50Wと、ミニPCの内蔵GPU使用時の2~3倍。検知処理時のピークはモデルに関わらず100Wほどでした。
ピーク時電力は一瞬のことなので無視しても良さそうですが、待機時電力がやや大きいのは少し気になるところ。パフォーマンスの高さはさすが、ではあるものの、AI監視カメラを動かす頭脳としてはやはりオーバースペック感は否めません。
余裕のあるスペックで実況中継も可能に
消費電力はともかく、DGX Sparkの画像解析はかなり高速であることがわかりました。この能力をもっと活かしてみたい! と思って試してみたのが「リアルタイムで実況する」機能です。
カメラ前で何か動きがあると、スマホにはいつも通りプッシュ通知しますが、それをタップするとHome Assistantの画面に移動して、映像の内容をほぼリアルタイムで読み取って実況します。検知してから2分間、数秒ごとに1文ずつ説明が追加されていきます。
高速、かつ精度高く文章化できる(AIモデルが使える)DGX Sparkならではの機能で、単に文章化するだけでなく「夜間、人が怪しい動きを見せ始めたらスマート電球を点滅させる」のような応用も考えられそうです。
他には、昼間と夜間に発生した検知のサマリーを定期的に作成する機能や、筆者の顔を画像で覚えさせて、筆者(らしき人物)がカメラ前を通過したときはスマホ通知しないようにする機能も追加しています。
こんな風に自分にとって重要度の高い機能を気軽に追加できるのは、高性能なDGX SparkによるAI監視カメラシステムだからこそ。
ただ、DGX Sparkを別の用途で夜間もフルに動作させるような使い方をしていると、そこにAI監視カメラシステムを同居させるのは難しくなってきます。ストレージ容量にも限りがあるので、監視映像を常時録画し続けるなら外付けHDDなどにデータ保存するなどの対応も必要です。
筆者の感覚としては、AI監視カメラシステムにDGX Sparkは贅沢すぎるかな、というのが結論ではあります。もし常時運用し続けるAI監視カメラシステムにするなら、ある程度AI処理が得意なNASで動かすのが、仕事用データのバックアップも兼ねられるので好都合かもしれません。
そのうえでHome Assistantの仕組みを用いて、カメラを含む宅内のスマートホームデバイスを集中制御するようなシステムにすることでコストパフォーマンスを高められそうです。それに向けた基盤の開発に、DGX Sparkを利用するのは大いにアリではないかと思います。


















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