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虎ノ門ヒルズで「AIスーツケース」の実証実験

視覚障がい者もウインドウショッピングを楽しめる未来

AIスーツケースを押しながら虎ノ門ヒルズ内を歩く浅川智恵子氏

 10月1日~31日にかけて虎ノ門ヒルズにおいて行なう、視覚障がい者の移動を支援する自律型ナビゲーションロボット「AIスーツケース」の実証実験を前に、報道関係者向けの説明会を開催した。

 AIスーツケースは、AIスーツケース・コンソーシアムが開発に取り組んでいる視覚障がい者の移動をサポートするキャリーケース型のデバイス。複数のセンサーを搭載しており、AIが周囲の様子を感知しながら音声によってユーザーをサポートしてくれる。音声で目的地を伝えることで、そこまで安全に誘導してくれるほか、周囲の状況を説明してくれるなど、AI技術が実装されている。

 昨年開催された大阪・関西万博においても実証実験が行なわれ、生成AIを用いてリアルタイムに周囲の風景や店舗の様子を自然言語でユーザーに伝える機能などの有効性が確認されていた。

AIスーツケースの仕組み

 今回の虎ノ門ヒルズでの実験では、社会実装の第1段階として「レンタルモデル」の実証に踏み込む。具体的には、貸出拠点でAIスーツケースをレンタルし、2階の歩行者デッキや4階のレストラン街など、施設内での視覚障がい者の移動をサポートする。従来はスタッフがそばで見守る形で対応していたが、今回は離れた場所での安全確認やリモートシステムによる遠隔監視へと進展させて検証を行なうという。

 実証実験に協力する森ビル 都市開発事業部 計画企画部の加藤昌樹氏は、虎ノ門ヒルズエリアの開発経緯とバリアフリー化への取り組みを説明。同エリアは交通インフラと一体となった都市再生を進めており、物理的なバリアフリー空間を整備してきたが、ハード面の対応だけでは「自由に買い物や食事を楽しみたい」という視覚障がい者の多様なニーズを満たすことは難しいとして、AIスーツケースのような先進テクノロジーと都市空間が連携することで、障がい者や高齢者を含むすべての人が自由に訪れ行動できる街の実現を目指すと期待を寄せる。

森ビル 都市開発事業部 計画企画部の加藤昌樹氏

 視覚障がい者としてAIスーツケースの開発に携わる慶應義塾大学大学院 特任教授で日本科学未来館 館長の浅川智恵子氏は、スマートグラスのようなウェアラブル端末ではなくスーツケース型を採用した理由について、白杖や盲導犬と同様にユーザーの一歩先を進むことで物理的な安全を確保できる点に加え、街中で過度に目立つことなく自然に溶け込める利点があると語る。

慶應義塾大学大学院 特任教授で日本科学未来館 館長の浅川智恵子氏

 AIスーツケースには、複数のLiDARやカメラなど、自動運転の自動車のような技術がコンパクトに搭載されているが、虎ノ門ヒルズでは屋内での利用が中心となるため、GPSによる位置情報の確認が行なえない。このため、施設内の地図データを整備する必要があるが、1日半~2日程度で構築を完了し、さらにレストランのメニューなどのデータを加えることで、ユーザーからのさまざまな質問に回答できるようにしているとのことだ。

 説明会の終了後には、実際に浅川氏がAIスーツケースを利用し、虎ノ門ヒルズ駅のホームから改札を通過し、施設内のアパレルショップを訪れてショッピングを楽しんだり、AIスーツケースを押しながらウインドウショッピングを楽しんだりするデモンストレーションも披露された。

デモンストレーションは駅のホームからスタート
エレベーターで改札階に移動し、自動改札機をクリア
アパレルショップではスマートフォンを使って服の色や素材をチェック
店舗スタッフに詳細を聞いてショッピングを楽しんだ

 現段階では混雑した場所では周囲の人の列を壁と認識するなどして現在地を見失う場合もあり、今後の社会実装に向けてクリアしていかなければならないもあるようだが、浅川氏によれば、まっすぐに歩くことが難しい白杖を使った歩行に比べると、歩くスピードは格段に上がるので、行動範囲が広がることが何よりうれしいという。

店舗の前に来ると、そのお店の特徴も教えてくれる

 同氏は、技術的な課題解決だけでなく、カメラやセンサーを搭載したAIスーツケースのようなロボットに対する周囲の理解など、社会的受容性の獲得も不可欠であるとした上で、今後数年単位のレンジで社会浸透を目指す意向を示していた。