DGX Sparkでゼロから始めるAIワークステーション

「魔王軍ゲーム」でOpenClawのマルチエージェントを体感したい!

 DGX SparkのようなローカルAIを存分に扱えるマシンのメリットは、複数のAIエージェントを並列で動かす「マルチエージェント」を遠慮なく回し続けられることにもあると思います。

 並列作業させるとあっという間にトークンを消費するので、クラウドAIだと上限がきてストップしてしまうか追加コストが必要になりますが、ローカルAIなら気にすることはありません。それこそ24時間365日動かし続けても、かかるのは電気代だけです。

 ローカルAIでマルチエージェントを実現するツール(ハーネス)としては、「OpenClaw」や「Hermes Agent」などが代表的。いずれもDGX Sparkのプレイブックにインストール方法が掲載されているので、それに従って導入すれば簡単に始められます。

OpenClawなどのインストール・設定の手順はプレイブックでチェック

□OpenClawのセットアップ手順
https://build.nvidia.com/spark/openclaw/instructions

□Hermes Agentのセットアップ手順
https://build.nvidia.com/spark/hermes-agent/instructions

 そんなわけでDGX Spark上で実際にどんな風にマルチエージェントが動作するのか、今回はOpenClawを使って試してみたいと思います。

自律分散型なゲーム風グループチャットを作ってみる

 ひと口にマルチエージェントと言ってもいろいろなタイプがあります。親AI(司令塔)が子AI(サブエージェント)を制御する「オーケストレーター型」、1つのAIが次のAIにバトンタッチしていく「ハンドオフ型」、複数AIが相互に連携しながら動く「自律分散型」などです。

「オーケストレーター型」、「ハンドオフ型」、「自律分散型」のイメージ

 このなかで最もAIらしく動くのは最後の「自律分散型」になるかと思います。各AIが自分で考えて判断し、互いに影響し合いながら1つの結論を導き出していく。そういう様子が見えると、マルチエージェントらしさが感じられますし、何より見た目が楽しそうです。

 では、そんな自律分散型マルチエージェントの見映えのする題材としてはどんなものが考えられるでしょうか。ビジネス資料を作成する際の調査、企画、検証などを分担してもらう、みたいな例もマルチエージェントの活用例としてはわかりやすいのですが……。

 しかし今回は、もう少し遊び心を加えて「ゲームっぽいもの」にしてみたいと思い、「魔王軍の会議」を題材にしたゲーム的なマルチエージェントチャット、その名も「Lv.0の魔王」を考えてみました。簡単に説明すると下記のような内容です。

・ざっくり言うと、魔王軍のグループチャット
・ユーザーは魔王となり、四天王たちと「勇者対策」について話し合う
・勇者の情報は斥候役の四天王(最弱)からもたらされる
・ユーザー(魔王)や他メンバーの入力内容をもとに全員が議論する
・目的は、渋る四天王(最弱)を勇者のいる現場に行かせること
・結果、最弱がやられて他のメンバーに「あやつは四天王の中でも最弱」と言わせればゲームクリア

 つまり、エージェント1つ1つを四天王に見立ててみた、ということになります。AIモデルとしては「Qwen3.6 35B-A3B NVFP4」と「Gemma 4 26B A4B」の2種類を使い、1つのモデルが2人ずつ分担する形にして、それをOpenClawで動かします。

 マルチエージェントの動きを楽しむのが主眼なので、シンプルにチャット風ゲーム(的なもの)としたわけですが、この規模でも手コーディングはさすがに厳しいのと、スピードも重視したかったので今回はCodexに作ってもらいました。

ChatGPTでまずは設計書を作成。ただしこの時点ではまだチャットではなく、シミュレーションゲームっぽい構想でした
設計書をもとにDGX Spark上のCodexでコーディング。いろいろ試行錯誤してグループチャットをコンセプトに

AIモデル選択は用途に合った最適なものを、ベンチマークしてチョイス

 ちなみに今回、メインのAIモデルとして「Qwen3.6 35B-A3B NVFP4」を、2つ目のモデルとして「Gemma 4 26B A4B」を選んだのにはいくつか理由があります。

 AIモデルを2つに分けたのは、キャラごとに別人格(別モデル)にした方がリアリティが出やすいと思われるため。そして、事前に「日本語を扱えるAIモデル」をいくつか試してみたところ、最も「指示通り、かつ無難に動いてくれる(プロンプトで制御しやすい)」のがこの2つだったからです。

ひと通り完成した魔王軍マルチエージェントチャットのスタート画面
OpenClawのダッシュボード。主に見るのはゲーム風画面の方ですが、裏側のOpenClawもちゃんと動いています

 このような日本語を扱うゲームやツールでは、ユーザーとAIとの対話、もしくはAI同士の対話において、言葉の使い方に少しでも違和感や矛盾があると非常に気になります。プロンプトの指示通りに回答しない、日本語以外の文字が混入する、なんてことがあると興ざめです。

 また、ゲームとしてユーザーが期待する「レスポンスの速さ」も重要です。短いやり取りならサクッと簡潔に答えて欲しいわけですが、1回のやり取りに数十秒もかかるようでは楽しめません。

こういう簡単なやり取りには数秒で反応してくれないとストレスに感じます

 この時点で、深く思考する「Thinking」をオフにできないAIモデルは候補から外れます。加えて、日本語文章の長文作成や校正は得意なAIモデルでも、短く簡潔な文章の生成、あるいはファンタジーなどの創造的な文章生成には向いていないパターンもあるので注意が必要です。

 そのため、想定している用途に合うAIモデルがどれなのか、事前に確認することは必須と思われます。筆者もQwenやGemmaだけでなくLlama 4、Nemotron 3、GPT-OSS、LLM-jp-4などいろいろなAIモデルでベンチマークを行ないました(正直、数が多すぎて試せていないものもあるのですが)。

これは別プロジェクトでの日本語表現に関わるベンチマーク結果ですが、今回のマルチエージェントチャットのAIモデル選定にも役立ちました

 プロンプトの工夫やパラメータの設定によって改善できる部分もあるものの、AIモデルによってはプロンプト指示をすり抜けやすかったり、パラメータ調整ではカバーしきれなかったりすることもしばしば。その意味で、今回選んだ2つのAIモデルは今回の用途では比較的扱いやすいものでした。

 ゲームに限らず、やろうとしていることによってマッチするAIモデルは異なります。そのためにもあらかじめベンチマークで比較したり、言語表現の揺れがプロンプトで制御可能な範囲か確認したりすることは大事、というのは覚えておくと良さそうです。

マルチエージェントではトークン数、コンテキスト長の調整がシビアになることがあるので、実際に動作させながら最適化していく必要も

ゲームや実務でマルチエージェントしまくろう

 そんなこんなで設計書をCodexに渡し、コーディングしてもらいながらあれこれ試行錯誤、調整を経て丸1日、完成したマルチエージェントな魔王軍のチャット。

 これがどんな風に動くのか、プレー中の様子を動画にしてみたのでよろしければご覧ください。四天王がそれぞれ自分の考え方で、相互に影響し合いながら会話していることがわかると思います。

【マルチエージェントチャットのプレーの様子】

 今回はゲーム風のグループチャットでしたが、マルチエージェントの「それぞれの視点、役割に沿って並行作業する」メリットは他にもいろいろな場面で役に立ちます。みなさんもマルチエージェントが力を発揮する場所を見つけて、どんどん業務でラクしたり、遊んだりしてみましょう!