DGX Sparkでゼロから始めるAIワークステーション

LM StudioとLM Linkでお手軽AIサーバー化、iPhoneで外からもアクセス。みんなに使ってもらえば高速に!?

いろいろなAIモデルをもっと気軽に、GUIで試したい!

 前回は、LAN内の別PCから「NVIDIA Sync」やリモートデスクトップを介してDGX Sparkにアクセスし、AIワークステーションとして使いやすくする方法を紹介しました。これでDGX Spark上のファイル操作やデスクトップ操作は簡単になったと思います。

 ただ、肝心のAI絡みの操作についてはまだ課題が残っています。たとえば、ローカルAI用のモデルをダウンロードして利用するには、基本的にターミナルからコマンド入力する必要がある、というのがネックです。

 特徴の異なるいろいろなAIモデルを使ってみたいと思ったら、ダウンロード・実行のために再び各種パラメータを含むコマンド入力が必要になります。手間のかかるキーボード入力をできるだけ減らしたいなら、マウス操作で完結するGUIにしたいところです。

Dockerによる仮想マシンでAIモデルをロードするのが標準的な方法の1つで、こんな風にコマンド入力から始めるのがちょっと大変

 そんな要望を叶えられるいい方法があります。WindowsやmacOS、スマホにも対応するアプリ「LM Studio」と、LM Studioが備える「LM Link」という機能を利用するというものです。

「LM Link」でDGX SparkのAIパワーを「共有」

 LM Studioは、ローカルAIの実行環境をお手軽に構築できるアプリ。オープンなAIモデルをアプリ上で検索、ダウンロードできるほか、そのAIモデルを使った処理をLM Studio内蔵のチャット型UIを通じて実行できるようになっています。

お手軽にローカルAI実行環境をつくれる「LM Studio」

 DGX Spark上でも、もちろんLM Studioを動作させることが可能です。DGX Sparkのポータルサイトにあるプレイブックをもとにセットアップする……のでも良いのですが、それだとやはりコマンド入力が中心になってしまいます。そうではなく、DGX Spark(Linux)用のGUIアプリを使うのが簡単です。

 手順は、LM Studioの公式サイトからバイナリをダウンロードし、コマンドを2つか3つ実行するだけ。そうすればGUIのLM Studioが起動し、Windows/macOS版のアプリと全く同じ使い勝手でローカルAIの利用が可能になります。

公式サイトから「Linux(ARM版)」のLM Studioをダウンロード
ダウンロードした「AppImage」ファイルのプロパティで「Executable as Program(実行属性を付与)」を有効に
ターミナルで「curl -fsSL https://lmstudio.ai/install.sh | bash」を実行。LM Studioをサーバーとして動作させるために必要なモジュールがインストールされる
続いて「sudo apt-get install libfuse2」を実行
続いてAppImageのある場所で「LM-Studio.AppImage --no-sandbox」のように実行すればLM Studioが立ち上がる

 でもって本題はここから。LM Studioにはネットワークを通じてAI処理能力を「共有」する機能、「LM Link」も搭載しています。特定のデバイス上のLM Studioで巨大なAIモデルを読み込んでおけば、自分の所有する他のデバイスでもそれをローカルにあるものとして扱えるのです。

LM Linkを有効にするには、まず設定画面からログイン(登録無料)
ログインに成功したらLM Linkが有効に
AIモデルがよりどりみどり。ここで使いたいものをダウンロードしておく
サイドバーの下の方にあるアイコンからLM Linkの画面へ
クライアントにしたい他のPCで同じようにLM Studioをインストール。同じアカウントでログインすると、DGX Spark側に「ネットワークデバイス」として表示される

 この機能を使うと、VRAMが少ないデバイスであってもDGX Sparkの性能を借りて高度なAI処理をこなせます。LAN内でもインターネット経由でも利用できる、プライベートなAIサーバーがあっという間に完成する、というわけです。

クライアントPC側でもDGX Sparkが認識。これで準備完了

 LM LinkはPCだけでなくスマホにも対応します。2026年7月現在、公式で提供されているのはiOSアプリの「Locally AI by LM Studio」で、これをiPhoneにインストールしてLM Linkを有効にすることで、DGX SparkのAI性能を外に持ち出せます。

iPhoneでは「Locally AI by LM Studio」というアプリでDGX Spark(やクライアントPC)にアクセス可能

 LM Studioを立ち上げている間は常にアクセスできるので、DGX Sparkは常時電源オンにしておきたくなります。DGX Sparkに直接触れるタイミングは、別のAIモデルを新たに追加したいときなど、限られたときだけになるかもしれません。

DGX SparkのAI性能を間借りしてクライアントPCで実行。50トークン/秒超えでレスポンス良好
外に持ち出したiPhoneでも同じようにDGX Sparkの性能を活用できる

複数人で同時に使うと遅くなる? それとも……

 ところで、そんな風に複数のデバイスから活用できるとなると、会社ではチームメンバーと、自宅では家族と、DGX Sparkを共有して使いたくなってきます。しかし複数人が同時にアクセスして負荷をかけてしまうと処理が追いつかなくなってしまうのでは……という心配もあるでしょう。

 たしかにDGX Sparkで複数同時にAI処理すれば、1人あたりの処理速度が低下することは間違いありません。ただ、同じAIモデルを使用しているケースだと、AI処理の仕組みやDGX Sparkのスペック上、全体としては高速化する場合があるので単純に「遅くなる」とも言い切れません。

 なぜそうなるのか、理由をかなり単純化して言うと、「読み込んだモデルデータ(重み)を再利用できるから」。推論する(回答する)ための処理時間よりも、その元となるモデルデータを読み込む時間の方が(特にDGX Sparkの場合は)長くかかるため、2つ目以降の処理は読み込みの時間を省ける余地がある分、高速化が狙えるわけです。

DGX Sparkはメモリ帯域が273GB/sとさほど高速ではなく、しかしGPUは高性能なので、並列化による効果が高くなる場合がある

 論より証拠ということで、LM Studioで読み込んでいるAIモデルに対して、複数のプロンプトを処理させるテストプログラムを作りました。1つ目のプロンプトに対する処理が終わったら次のプロンプトを処理する「逐次実行」の場合と、全てのプロンプトを同時に投げる「並列実行」の場合とで、全体スループット(合計トークン数÷かかった合計時間)がどう変化するのかをグラフにしたものです。

DGX Sparkにおけるリクエスト数別のスループット

 ご覧の通り、逐次実行だとトークン/秒はほぼ一定で、リクエスト(プロンプトで指示する)回数が増えれば単純に掛け算で時間がかかります。一方、並列実行の場合はリクエスト単体の処理速度こそやや低下するものの、数を増やすごとにスループットは向上していることがわかります。

 テストでは短い単純なプロンプトだったので、実務ベースでは状況が変わってくるところもあるかもしれません。が、複数ユーザーの同時アクセスによってチーム(家族)全体のパフォーマンスは上がっても、下がることはないと思われます。むしろ大勢に使ってもらった方が何かと効率的、とまで言えそうです。

新しいAIモデルを手早く検証するのにも便利なLM Studio

 LM Studioを使うと、親しみやすいGUIで手軽にAIチャットできるだけでなく、DGX SparkをAIサーバー化して、普段使っているPCやスマホなどのデバイスからいつでも使える環境が整います。職場や家庭内の共有AIサーバーとしても活用しやすくなることでしょう。新しいAIモデルをサクッと検証するのにも便利なので、手放せないツールになるのでは?