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Waymoティルマライ氏が語る自動運転AIの最前線と日本展開

オンボードソフトウェア担当ヴァイスプレジデントのシュリカンス・ティルマライ氏

 Waymoは8月19日、オンライン記者会見を開催し、オンボードソフトウェア担当ヴァイスプレジデントのシュリカンス・ティルマライ氏が完全自動運転3億km超の走行データに基づくAI開発の知見と同社の戦略を説明した。

 同氏は、世界で毎年140万人が交通事故で命を落とし、日本でも年間30万人以上が負傷している現状があると指摘。さらに日本では深刻なドライバー不足による交通空白が全国的な社会課題となっており、疲労や怒り、注意力散漫とは無縁の世界で最も信頼されるドライバーを生み出すことがWaymoの存在意義であると語った。

 自動運転におけるAIの課題として、現実世界の予測不可能な複雑さ、安全性の重要さ、そしてミリ秒単位のリアルタイムな判断が求められる点が挙げられた。完全自動運転を実現するにあたり、センサーの情報を直接操作に結びつける純粋なエンド・トゥ・エンド型AIへの依存は、判断理由が不透明な危険なブラックボックスを生むとして、Waymoではこのアプローチを否定しているという。

 その代わりに、視覚言語モデルの高度な推論能力を活用した「Waymo Foundation Model」を中核とする包括的なエコシステムを採用している。この基礎モデルは人間の思考プロセスを3つのレイヤーで再現しており、カメラ、LiDAR、レーダーからのデータを統合し瞬時に反射的な判断を行なう「ファストレイヤー」、高度な意味理解と推論で複雑で稀な状況に対応する「スローレイヤー」、そして処理された情報を実際の走行に必要な軌道生成や予測へと変換する「デコーダーレイヤー」によって構成されている。

 システムを安全に大規模展開するため、Waymoはカメラ単体ではなく、LiDARやレーダーを融合させたマルチモーダルセンサーを活用している。これらは互いの弱点を補完し合い、悪天候や稀な事象に対応するための豊富な情報と冗長性をもたらす。また、高精度地図も一種のセンサーや記憶として活用し、リアルタイムの環境と比較するための高精度な基準を設けることで安全性を高めている。

 さらに、AIが自身の判断を自己評価する事態を防ぐため、システムの内外に厳格な監視機能を備えている。車両側の「オンボード検証レイヤー」はAIが生成した走行軌道を物理法則や交通法規に照らし合わせて即座に確認し、車両外の「AIクリティック」は数十億マイル規模のシミュレーションと実世界の走行データを継続的に評価することで、品質管理の自動化と安全性の向上を図っている。

 現在、Waymoの車両は日本交通およびGOとのパートナーシップの下、東京都内の公道で自動運転によるテスト走行を実施し、地域特有の運転行動や乗車体験に関するデータを収集している。左側通行や日本の交通標識、狭い道路環境などに対応するため、公道走行、クローズドコース、高精細なシミュレーションを組み合わせてモデルの調整と検証を繰り返している。

 同氏によれば、東京の環境に適応するためのファインチューニングは順調に進んでおり、要求される安全基準を満たし、サービス開始の承認が得られ次第、近い将来に東京でのロボタクシーサービスを開始する意向だ。

 同氏は、人間のドライバーと比較して重大な事故を94%削減しているという実績をベースに、安全基準を妥協することなく、日本においても信頼される移動手段の提供を目指していく姿勢を強調していた。