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再帰的自己改善でAIによるAI開発を目指す「ELYZA RSI Research」設立

開発には安全性に配慮

プレゼンテーションを行なった曽根岡侑也ELYZA代表取締役

 ELYZAは、都内で記者会見を開き、同社が取り組む「再帰的自己改善(RSI[Recursive Self-Improvement])」の研究成果を公開するとともに、RSIを活用した音声領域における新サービス「音声対話AIエージェント『ELYZA Voice Agent』」について発表した。

 ELYZAは、東大・松尾研究所からスピンアウトし設立されたAIカンパニー。同社は大規模言語モデル(LLM)の研究開発や社会実装を手掛け、同分野において強みを持つ。2024年4月よりKDDIグループに参加しており、これによりGPUリソースを活用し研究開発や製品リリースを大規模に推進できるようになっている。

 同社はAIの現状について、LLMの精度は急速に上がり続けており、シンプルタスクについては2年ほど前にすでに頭打ち状態になり、現在の主戦場は科学分野でのAI利用や、人間が数日かかって行なう複雑なタスクを完遂する能力を競うようになってきていると分析。人間の未解決問題の解決事例が報告されるほか、GPT-6 Astreが発表され、これまでAIが苦手としてきたPCを操作して複数の工程を進める能力なども着実に向上してきている。同時にトレンドとしては、中国などによるオープンモデルが多数登場してきており、2~3か月遅れで最先端モデルと同等のモデルが登場する状況となっている。

 AI開発においては、基盤モデルの開発で終わるわけではなく、ハーネスと呼ばれる高精度な処理のための機能や安全性のための機能などを担っている周辺システムの開発もまた重要な要素となっている。さらに、品質を測る“評価機構”もまた進化してきている。

AIによるAI開発のため「ELYZA RSI Research」を設立

 現在、AnthropicやOpenAIなどでは「AIによるAI開発」がすでに始まりつつあるが、これまで開発されたAIの評価に対して人間のAIリサーチャーが行なってきた作業をAIエージェント化し、AIによるAI開発の再帰的自己改善のループをすべてAIにより行なうことでフロンティアモデルのリリース頻度が高まっている。

 ただ、「AIによるAI開発」も段階があり、ステップ1の人がすべてを行なうところに始まり、目的・評価基準を決めAIの改善提案を人が都度判定するステップ2、成果物のみを人が判断するステップ3、そして改善ループがAIのみで回り続けるステップ4となっている。

 同社は、このAIによるAI開発を推進するため「ELYZA RSI Research」を立ち上げると発表。前述のとおりKDDI傘下ということからGPUリソースを活用でき、これまでの研究開発により、パラメーター数1000億以下のLLMに関してはステップ1の段階に到達、ハーネスに関してはほぼ全自動で改善することができるステップ3を実現している。

 評価機構に関しては、行なう作業の知見も絡んでくるためテクニカルな部分があり、難しい側面がある中で、半自動でベンチマークの開発を行なえるステップ2まで到達している。また、今後の基盤モデル開発に向けモデル学習を容易に回せるよう1~2人日の工数で学習し能力を向上させることのできる基盤整備も行なっている。

 これらにより問い合わせ応答におけるAIエージェントの評価を行なうベンチマークテスト「問い合わせ応答ベンチマーク」を作成、公開した。顧客の問い合わせをただ受けて要約するだけではなく、会話を行ない、内容に対応し、データの書き換えなどを行ない作業を完遂するまでを一つのタスクとして評価する。同社にとって重要なのはこれを半自動で作成するということ。このハーネスをAIにより再帰的自己改善を行ない全自動で改善することに成功したという。

 また、これまでの研究開発をベースにしながら研究にとどまらず、社会実装への製品開発につなげるバーティカルAI事業を推進していく。その第1弾として「音声対応AIエージェント『ELYZA Voice Agent』」を開発、製品化を進めていく。顧客との対話から最終的に業務システムへと連携させ、さらに前述の再帰的自己改善の評価機構を搭載することで、利用していく中でAIが自己採点を行ない対応の品質を向上させていく。バーティカルAI事業では、各業界、各領域の企業とパートナーシップを結ぶことで、領域特化型のAIエージェントを作成し提供していく方針だ。

今後はLLMからVLM、VLAの技術領域に拡張。安全性にも配慮

 今後の方針としては、「AIによるAI開発」はフィジカルAIと相性が良いとし、LLMからVLM、VLAの技術領域に拡張していく。現在、自然言語による指示で難しいオーダーを実行するロボット基盤モデルの開発を推進しており、小売り・物流向けロボット基盤モデルの研究開発も進めている。

 記者陣からの質疑応答では、「AIによるAI開発」ということで、安全性に関する質問が集中。AIの安全性については、「開発時」と「製品」において別の安全性が求められるとし、研究開発については、きちんとした隔離環境の作成やAIの停止を行なえるシステムの作成などを徹底すると答えた。製品における安全性については「使い方の問題であり、我々はまだそのレベルに到達していない」としながらも、セーフティガードなどについて真摯に対応していくとしている。