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Gensparkが日本で「AI ワークスペース 6.0」を発表した理由
すべてを記憶する「SecondBrain」とAIボイスレコーダーも投入
2026年7月21日 20:31
米Gensparkは7月21日、AIワークスペースの大型アップデート「AI ワークスペース 6.0」を発表した。
目玉となるのは、仕事の情報をまるごと記憶するクラウドメモリー「SecondBrain」と、連携するカード型AIボイスレコーダー「SecondBrain Note」だ。AIエージェントと人が同じチャットで働く「GenTeam」なども加わり、新機能は6つにのぼる。価格は据え置きで、デバイスを除けば無料プランでも使える。
東京での発表会と記者向けラウンドテーブルの内容に、6月下旬のシリコンバレー本社取材を交えて紹介する。
中核は「忘れないAI」SecondBrain
AIを使っていて面倒なのは、毎回前提を説明し直すことだ。自分が誰で、どんな仕事をしていて、いまどのプロジェクトが動いているのか。会話が終わればAIは忘れてしまうので、同じ内容を何度もコピーして貼り付けることになる。
SecondBrainはこの手間をなくす機能だ。メールや議事録、各種資料、CRMなど、あちこちに散らばる仕事の情報をつないで、クラウド上の1つのメモリーとして記憶し続ける。Gensparkや連携ツールで仕事をするたびに、中身は自動で更新される。CEOのエリック・ジン氏は検索エンジンにたとえて、「Webページを索引化して一瞬でアクセスできるようにしたのと同じで、個人の知識を索引化して話しかけられる存在にする」と説明した。
SecondBrain Noteは、そのSecondBrainに現実世界の会話を流し込むための道具だ。Genspark初のハードウェアとなるカード型のAIボイスレコーダーで、重さは26g、連続録音は35時間に対応する。ジン氏は「1日6時間の会議なら1週間持つ」と話す。マイク4基と骨伝導マイク1基を搭載し、マグネット式カードホルダーでスマートフォンの背面に貼り付けられる。
録音した音声はGenspark上で自動的に文字起こし・要約され、そのまま資料やタスク、メールに展開できる。価格は期間限定で179ドル(通常199ドル)。発表と同時に公式サイトで注文が始まった。文字起こしは無料プランで月300分まで、有料プランなら1日24時間分までクレジット消費なしで使える。
ジン氏は「録音は仕事の終点ではなく起点だ。議事録を取って終わりではなく、会議資料にもSNS投稿にも展開できる」と録音専用機との違いを語り、「ハードウェアはこれが始まりにすぎない。ほかの新製品も開発に入っている」と続けた。
メール、データ集約、デザインにエージェントを拡張
GenMailは、ユーザーの文体や人間関係まで学習するメールクライアント。処理を担うAIエージェントと、記憶を担う「メールブレイン」、定型業務を自動でこなす「スキル」を備える。デモでは、届いた契約書を過去のメールや議事録と照合し、合意内容と食い違う2か所を見つけて返信の下書きまで提案してみせた。「この人は誰でしたっけ」と聞けば、過去のやり取りから相手の素性を答える。デスクトップとモバイルの両方にアプリを用意する。
AgentBaseは、散らばったデータを集めてダッシュボードにする機能。メールやローカルフォルダ、スプレッドシート、CRMからワンクリックでデータを取り込める。デモでは「今月の営業成績のダッシュボードを作って」という指示だけで、CRMのデータから数分で画面を組み上げた。サイトやポスターを一言で仕上げるDesignとともに、プレビュー版から正式版に昇格した。
これらの土台となるのがSuper Agentだ。Gensparkのメイン画面で指示を受けると、タスクを分解し、モデルやツールを選びながらリサーチから資料作成までを自動で進める中核エンジンで、6.0では実行能力を開発者向けコーディングツールと同等に引き上げた。コードを書けない人がそのまま使える形で提供する。
AIと人が同じチャットで働くGenTeam
GenTeamは、AIエージェントと人が同じチャットで働くための空間だ。Slackを模したチャンネル型のUIで、CodexやClaudeといったエージェントを設定だけでグループに招待し、それぞれに役割や専門性を持たせる。発表会では、1人で会社を経営する起業家がAIのマーケティング担当やデザイナーに指示を出し、営業メール150通の送付からピッチ資料の作成までをチャット内で終わらせる動画が流れた。
新機能はいくらで使えるのか
気になるのはコストだ。6.0の新機能はSecondBrain Noteを除き、無料プランでも使える。無料プランには1日100クレジットが付き、有料プランはPlus(月額24.99ドル、月1万クレジット)とPro(月額249.99ドル、月12万5000クレジット)の2段階だ。AIチャットと画像生成はクレジットを消費せず、無制限に使える。
ラウンドテーブルでは消費の目安も示された。スライド生成なら標準モードで1枚約30クレジット。無料プランの1日分で3枚ほど、Plusなら月330枚に相当する。フロンティアモデルを使うUltraモードは1枚約500クレジットと、標準の17倍近くを消費する。ふだんは標準で済ませ、品質が要る場面だけ上位モードに切り替える使い方を想定した設計だ。
CTOのカイ・ジュー氏は、コストを抑える手法も説明した。大部分の処理は安価なモデルに任せ、重要な判断の場面だけフロンティアモデルに切り替える。スライド生成など特定の領域では、オープンウェイトモデルをファインチューニングして使う。発表直前に登場した中国発モデル「Kimi 3」には「コーディング性能はClaude OpusとClaude Fableの中間だが、コストはかなり安い。3か月先が読めないからこそ複数モデルを組み合わせる」と触れた。
シリコンバレーでの取材でジュー氏は、この多モデル構成を「OpenAIやAnthropicはエンジンを作っている。我々はクルマを作っている」と表現していた。エンジンの性能競争はモデル各社に任せ、Gensparkは乗りこなせる車に仕立てる役割だという整理だ。
コードの100%をAIが書く開発体制
これだけの機能を一度に仕上げる開発力はどこから来るのか。6月下旬のシリコンバレー本社取材では、その内側を聞けた。
Gensparkでは、実装する機能をGitHub上のイシューとしてAIに割り当てると、コード生成からテスト、回帰テストの通過までが自動で進み、人間のエンジニアは最終承認だけを行なう。同社はこの仕組みを「Lighthouse Factory」と呼ぶ。無人で稼働する製造業のダークファクトリーから着想したといい、ジュー氏は「Gensparkのコードのほぼ100%がAI生成だ」と話す。2024年のCursorによるコード補完から始まり、2025年初頭にClaude Codeを導入してプルリクエスト単位の自律開発へ、2026年にイシュー単位の全自動化へと段階的に進んできた。
Super Agentの生まれた経緯には、モデルを試し続けるこの姿勢が表われている。AIエージェントは、モデルに検索やファイル操作などの道具を持たせ、タスクが終わるまで何度も繰り返し動かす仕組みだ。ただ、2025年当初のモデルでこれを試すと、同じ処理を延々と繰り返して止まらなくなるか、情報が足りないまま途中で諦めて止まるかのどちらかだった。その正月休みにジュー氏が自宅で各社のモデルを試すなかで、Claude Sonnet 3.7だけが最後まで走り切った。「無限ループに陥らず、かといって早々に止まりもしない。そのバランスが決め手だった」。当時のGensparkはAI検索が主力で、この発見をきっかけにエージェントへと軸足を移した。
社員100人を超えない組織
開発の仕組みだけでなく、組織のつくり方も一般的なソフトウェア企業とは異なる。ジュー氏は「社員を100人以上に増やすつもりはない」と言い切る。フラットな組織で内部の摩擦を減らし、開発速度を保つ狙いがある。プロダクトマネージャーはジン氏ただ1人で、専任のデザインチームは置いていない。元UXデザイナーがコードを書き、エンジニアがDesignでモックアップを作ってジン氏に直接見せる。全社約70人のうちエンジニアは約50人。この体制で今回の新機能群に加え、既存機能の改善や次のハードウェアの開発も並行して進めている。
日本法人で営業を担当する中村圭佑氏は、1人で約10のAIエージェントを並行して運用し、社内Slackの応答から顧客の一次対応までをエージェント経由で処理しているという。エージェントを部下のように使う働き方は、開発だけでなく営業にも根付き始めている。
今回Gensparkは、6.0の発表の舞台に東京を選んだ。米国のAI企業が大型発表を本国ではなく東京で行なう背景には、日本市場の比重がある。発表会の冒頭で挨拶に立ったCOOのウェン・サン氏は、直近3か月の売上の伸びに触れて「その多くは日本からだ」と明かし、経営陣全員で来日した理由を「この特別な瞬間に、ここにいたかった」と説明した。日本本格参入からちょうど半年にあたる。
サン氏はさらに、今後3年間で日本に1億ドルを投資する計画を明らかにした。人材採用やマーケティングに加え、エンタープライズ顧客向けにデータを国内に保存するデータレジデンシーの提供も始まっている。















































