ニュース

Gensparkが見せた業務に入り込むAIエージェント

Genspark共同創業者兼CTOのカイ・ジュー氏がラウンドテーブルに登壇した

 Gensparkは5月13日、日本メディア向けにラウンドテーブルを開催した。共同創業者兼CTOのカイ・ジュー(Kay Zhu)氏と日本市場担当の中村圭佑氏が、AIワークスペース「Genspark」の機能アップデートと日本での法人展開について語った。2025年4月のサービス開始から12か月で、年換算売上(ARR)が2.5億ドル規模に達したと明かした。

 ラウンドテーブルで見えたのは、生成AIをチャット画面に閉じ込めず、資料作成や表計算、社内チャット、開発管理といった既存業務の中へ入り込ませる方向性だ。

「AIスライド4.0」が企業独自のデザインを学ぶ

 ジュー氏のプレゼンの大半はライブデモが占めた。

 直近で追加された「AIスライド4.0」では、スキル機能が新たに加わった。企業独自のフォントやレイアウト、文脈の整理方針などをスキルとしてAIに学ばせておけば、その企業らしい体裁のスライドを生成できる。デモでは「ガートナーアナリシス」スキルを使い、Gensparkを題材にしたプレゼンを生成してみせた。

Gartner、Forrester、IDCといったアナリストスタイルなど、目的別のフォーマットがあらかじめスキルとして用意されている。「ガートナーアナリシス」スキルを使ってパランティアの財務分析スライドを生成した画面

 AIシートとの連携も披露した。「パランティアの財務状況を調べて、2026年の予算をベスト・ワースト・最有力の3シナリオで作って」と依頼すると、SEC(米国証券取引委員会)の公開データから情報を取得し、数式入りのスプレッドシートを生成。そのデータをもとにスライドを作り、さらにポッドキャスト風の動画や漫画フォーマットへも変換してみせた。

パランティアの3シナリオ予算をハリー・ポッター風の漫画フォーマットでも生成。ベスト・ワースト・最有力の3つを3つの水晶玉として表現した

「Genspark Claw」のデモも続いた。Genspark Clawは、同社がオープンソースで公開する自律AIエージェント「OpenClaw」を、Gensparkが用意した仮想マシン環境で動かせるようにしたものだ。Slackから「LinkedInに投稿しておいて」と頼んだり、メールで「自己紹介の歌を作って」と送ったりすると、Clawがタスクを実行して結果を返す。「Microsoft TeamsでもLINEでもDiscordでも、普段使っているチャネルから依頼できる」(ジュー氏)

SlackやメールからGenspark Clawに業務を依頼できる。LinkedInへの投稿を頼むと、過去の投稿履歴を踏まえて重複を避ける提案を返してきた

70人組織を動かす「Lighthouse Factory」

 なぜGensparkは月に何度も新機能をリリースできるのか。ジュー氏はその答えとして社内の開発体制を披露した。

 Gensparkの社員は70人、エンジニアは50人にすぎない。それでも高速な開発を実現できる理由について、ジュー氏は「コードの100%近くをAIが書いている。何十ものプルリクエストが毎日自動で生成され、自動でマージされていく」と説明した。

 デモでは、GitHubに「Gensparkのトップページを『Hello Tokyo』バージョンに変えて」とイシューを立てると、AIエージェントが必要な作業を進めてプルリクエストを自動で生成する様子を見せた。バグチェックを通してマージ寸前まで持っていく工程まで自動化されている。

GitHubのイシューを起点に、社内ツール「Legion War Room」上でAIエージェントが自動で作業を進めていく様子を披露した

 Gensparkはこの仕組みを「Lighthouse Factory」と呼び、自律的に動く組織のひな型と位置付ける。将来的にはユーザー企業にも提供したい考えだ。

日本では「業務設計できる人」が不足

 日本市場担当の中村氏は、Gensparkの法人利用がグローバルで5000社を突破したことを明らかにした。エンタープライズプランとチームプランの合計で、「5000社のうち半分以上が日本のお客様」だという。

日本市場担当の中村圭佑氏。日本企業のAI活用における課題とGensparkの導入状況を説明した

 ただし日本企業の生成AIへの取り組みは主要国に比べて遅れている。中村氏が示した総務省「令和7年版 情報通信白書」をもとにしたデータでは、生成AIの活用方針を策定している企業の割合が、中国95.8%、米国90.6%、ドイツ90.3%に対し、日本は49.7%にとどまった。

主要国における生成AI活用方針策定率の比較を示すスライド。中国95.8%、米国90.6%、ドイツ90.3%に対し日本は49.7%にとどまる

 中村氏が挙げたボトルネックは2つある。1つは、社内でAIをもとに業務設計できる人材が足りないことだ。個人でプロンプトを書いて資料を作る人は増えてきたが、組織全体の業務をAIで再設計できる人は限られる。もう1つは、経営者がAIをどう使うかの具体像を描けていない点だ。一部の開発・営業推進・人事のみの利用にとどまり、全社展開につながらないという。

 Gensparkは法人プランで伴走支援を提供する。経営層と現場の間に立ち、業務設計から落とし込むアプローチをとる。普段使うアプリにエージェントを呼び出せる「Genspark for PowerPoint」などのアドオン機能も紹介した。

日本でも導入が広がる

 日本ではアスクル、電通、阪急阪神不動産、船井総合研究所、ベルシステム24などがGensparkの法人向けプランを導入している。世田谷区も自治体として国内で初めて採用を決めており、活用が広がりつつある。電通では、提案資料の作成、情報収集、社内資料作成といった業務で、Genspark導入チームが利用開始数か月で1人あたり週平均6時間12分の時間短縮を達成したという。年間換算で約40営業日分の工数に相当する。

 効果測定の手法を問われた中村氏は、「現場に入ってOutlookやGoogleカレンダーから業務時間を記録してもらい、導入後の変化を週次・月次で計測する」と泥臭い手法を披露した。

 なぜGensparkが日本企業にも選ばれ始めたのか。他のAIサービスとの違いを問われたジュー氏は、主要なAIモデルを1か所から横断して使えるオールインワン性を強みに挙げた。「新しいモデルが毎日のように出てくるが、Genspark側で追加していくので、ユーザーはキャッチアップする必要はない」と説明し、最新のAIを意識せず業務に取り込める環境がGensparkの価値だと強調した。

「未来はすでにあるが、均等ではない」

 Gensparkが自任するのは「AIの翻訳者」だ。最新AIを使いこなせる人とそうでない人の格差は広がり続けているとし、技術知識がなくても自然な指示で最新モデルにアクセスできる環境を提供することで、この差を埋めるとジュー氏は説明した。締めくくりに掲げたフレーズは「未来はすでにここにある。ただ均等に行き渡っていないだけだ」だった。

「The future is here, it's just not evenly distributed.(未来はすでにここにある。ただ均等に行き渡っていないだけだ)」のフレーズで講演を締めくくった