インタビュー

「新Copilot」登場、統合された4つの機能でビジネスはどう変わる?

 2026年9月、Microsoft Copilotの刷新が発表された。「Autopilot」をはじめとする新たな機能が段階的に提供されるとともに、デスクトップアプリのUIには大幅な変更も加えられている。

 この変更は個人向けだけでなく組織向けも含まれ、これまでよりも一段とエージェンティックな使い方が可能になり、日常業務を強力にサポートしてくれるはずだ。

 では、新しいCopilotは具体的にどんな使い心地になるのだろうか。それによって企業のビジネスプロセスはどう変わっていくのかも含め、日本マイクロソフトの岡嵜氏に聞いた。

刷新の目的は? 他のツールとは何が違う?

日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&AIソリューション事業本部長 岡嵜禎氏

――2026年9月にMicrosoft Copilotの再編、新機能追加などが発表されました。この変更の背景について教えてください。

岡嵜氏:Copilotは最初のリリースから3年以上たちますが、これまで継続的に進化させてきました。9月の変更はそのなかでも大きなアップデートとなります。具体的には「Chat」「Cowork」「Code」「Autopilot」の機能を1つのUIに統合しています。

 我々はCopilotというAIソリューションをデザインしていくうえで、いくつかの原則を掲げています。1番大事な点は「AI in the Flow of Human Ambition」です。人がAIに合わせるのではなく、人がやりたいことをAIがサポートする。日々の仕事の中でAIを自然な形で活用し、イノベーションを推進していけるようにデザインする、ということです。

 Copilotならそれに必要な機能が全て揃っている、という形にしたいと考えました。ユーザーの仕事のコンテキストを把握し、さまざまな周辺情報とシームレスに連携して、「こういうことをしたい」というユーザーの要望にCopilotが的確に答えられるようにと。

2026年9月にMicrosoft Copilotが再編された

――統合された各機能はどのように使えるのでしょう。

岡嵜氏:まず起点となるHomeタブにChatとCoworkを統合しています。チャットでやり取りできる基本的な機能に加えて、まとまった作業を指示するときにはCoworkが使える、というような形にしています。

 我々の仕事を例にとると、お客さまへ訪問する前には準備が必要です。お客さまの最新動向を調べたり、お客さまが我々のソリューションをどう活用しているのか確認したり。

 あるいはCRMでキーマンの情報をチェックしたり、我々社内の他のメンバーがそのお客さまに対してどういう活動をしているのか確認したりなど、いろいろな情報をいろいろなところから入手しなければなりません。

 そのために今までは事前に他のメンバーと打ち合わせしていましたが、Coworkに一連の作業を指示する「お客さま訪問準備」のようなスキルを登録しておくと、各所から自動で情報を集めて整理してくれます。人の手間を大幅に減らしつつ、常に質の高い結果が得られるのがCopilotならではの体験です。

 今のところはそんな風にCopilotにアクセスして情報やシステムを連携する、という使い方ですが、さらに将来的にはユーザー側がスキルなどで細かな指示をしなくても、「こういったものを作りたい」「こういうことをやりたい」などの要望を元に将来的には必要なツールやAIモデルを選択して、最適なコストで目標を達成できるようになると考えています。

新たなHomeタブ

――他社のAIツールでも同様の機能統合が進み、トレンドのようになっている印象ですが、Copilotでは仕事のコンテキストを深いところまで見て、それを正しく扱えるのがポイントとなりそうですね。

岡嵜氏:そうですね。我々のCopilotでは、ユーザーの今やっている仕事やこれからやりたいこと、組織で起こっていることがWork IQに蓄積され、それがChatやCowork、Code、Autopilotでシームレスに活用できるのが大きいと思います。

 ただ、だからといってユーザーのみなさんが完全にAIに仕事を丸投げすることはないと思っています。Outlookでメールを書くこともあれば、Teamsでミーティングすることもあるでしょうし、資料作成も最後の仕上げは自分で、ということが多いと思います。なので、「人とAIが一緒に働く」という視点が大事だと考えています。

 今回「Office in Copilot」も発表しましたが、Copilotの中でWordやExcel、PowerPointが使えるようになっています。統合した各種ツールも組み合わせながら人とAIが共同作業できる、という点は我々のソリューションの強みかなと思います。

 さらに、Copilotは自分がアクセス権を持つ情報だけを参照しますし、秘密度ラベルが付いた情報を元に作ったアウトプットには、そのラベルが引き継がれます。安心安全にAIを活用できる環境を提供する、といった点も含め、単純に4つの機能を統合しただけではない、ということはお伝えしたいところです。

進まなかったDX、「Code」が起爆剤に

――今回の機能統合によって、企業のCopilot活用現場でどのような変化が起きると期待していますか。

岡嵜氏:より多くの方が日頃からAIを活用し、さまざまな変革を加速させていくことを期待しています。

 例えばアプリを作るのは今までハードルが高かったわけですが、Codeを使うことで、「こういうアプリケーションが欲しい」のように指示すればすぐに使えるアプリができあがります。

 実際、私も複数のインターン生とラウンドテーブルを実施することになった際に、席決め用のアプリをほとんど瞬時に作成できました。必要なときに必要なものを素早く作れる、面白い世界になってきたなと思います。

 ポイントとしては、Work IQとCodeが連携するということです。よくあるパターンとしては、スプレッドシートで帳票管理していて、それをWebで入力・管理できるようにしたい、ワークフローで回せるようにしたい、といったときに、素早くWebアプリケーションに移行できます。

 ここで重要なのが「ビジネス要望」です。何を作りたいかがちゃんとCodeで指示できるかどうかですね。そういったビジネス要望がどこにあるかというと、日常のミーティングで交わされる「こんな困りごとがある」とか「こういう改善をしていきたい」みたいな話ですよね。

 そういう議論はMicrosoft 365に蓄積されていきます。Work IQとCopilotがシームレスに連携して、蓄積された議論を要約すれば、ほぼそのまま要件定義書になります。あとは、それに基づいてアプリを作るようにCodeで指示すれば完成です。今まで進まなかったDXを加速させる起爆剤になるのでは、と思いますね。

Codeでのアプリ作成イメージ

――日本の企業だと昔から記録を残す文化があると思うので、それをデジタル化してWork IQからアクセスできるようにすれば、ビジネス要望にマッチしたアプリがすぐに作れそうです。

岡嵜氏:その通りです。そしてもう1つ、我々としては「継続的な学習(Continuous Learning)」も大きなキーワードとして注目しています。それによって「データの蓄積」も継続的に行なわれることになりますが、今までは人が活用するためのデータ蓄積だったのが、これからはAIが活用するためのものにもなる、という点で重要です。

 それとともに、仕事のやり方、作業手順を整理しておくことも重要です。業務における一連の流れ、ノウハウやTipsをしっかり残しておくことで、CoworkやAutopilotにスキルなどの形で渡したときに、Copilotがより的確に仕事を助けてくれる存在になるものと思っています。

 継続して蓄積していく、それを個人レベルではなく組織レベルで推進していくことが、Copilot活用の肝になってくると考えています。

――マイクロソフト傘下にあるGitHubとCodeとの関係性についても簡単に教えていただけますか。

岡嵜氏:CodeはGitHub Copilotと同じ基盤テクノロジーを用いています。GitHub自体はコード管理システムとしてプロのエンジニアも利用しているもので、本格的かつ複雑なアプリ・サービスを開発していく際の基盤となるものです。これをCodeで自然に使えるのもメリットの1つですね。

作ったアプリ、スキルを普及・管理する仕組みも

――誰でもアプリを簡単に作れるようになると、企業としてはガバナンスにおけるリスクも生まれやすいと思います。マイクロソフトではそれに対してどのようにサポートしていますか。

岡嵜氏:Codeなどで作ったアプリがどんどん増えていったときには、その管理方法がやはり課題になってきます。どんなアプリがあり、どんなデータにアクセスしているのか、把握が困難になる可能性があります。

 そういった状況に対して、マイクロソフトでは「Copilot Managed Runtime」をプレビュー提供しています。作成したアプリを企業のMicrosoft 365環境内で安全に実行できるホスティング基盤で、IT部門の管理のもとで、チームへの共有や最新データとの連携ができる仕組みです。

 アプリがどのデータにアクセスしているのか、というのもそうですが、企業においてはアプリ自体を誰に配布するのか、誰に使ってもらえるようにしたいのか、といった点も管理したくなります。Copilot Managed Runtimeならそのための機能も用意していますし、アプリのアップデート管理も容易です。

――そうなると、従業員が何をどれくらい使っているのか、というのも気になってきますね。

岡嵜氏:そこに対しては「FinOps for AI」を用意しています。Agent 365やCopilotを通じて、Cowork、CodeなどのCopilotファミリーを誰がどれくらい使っているのかを把握し、管理できるようにするものです。

 いずれにしても我々としては単にエージェントを提供して終わり、という形にはしていません。企業の中でAIがどのように使われていて、コストがどれくらいかかっているのか、投資とリターンのバランスをしっかり可視化できるようにしています。

FinOps for AIの管理画面のイメージ

――エージェント活用の社内普及、という観点では何かありますか。

岡嵜氏:「プラグインリポジトリ」があります。たとえば属人化している業務があったとして、手順書を作成してその通りに再現できるものであれば先ほど話したようなスキルとして登録すればいいでしょう。

 ただ、私のようなリーダー的な立場からすると、これはチーム全員が取り組んでほしいとか、他のチームにも広げたいと思ったりすることもあって、そのときにはスキルを社内で流通させられる仕組みが欲しくなります。そこで使えるのがプラグインレジストリです。

 そんな風にアプリだけでなく個々の業務のノウハウを広く配布して活用できる仕組みがある、というのが、Copilotの特徴的な部分だと思います。

 ちなみに配布先は人に限りません。Autopilotの自律型エージェントに配布することも可能です。

 同僚がエージェントを介して私宛の進捗報告や相談をし、私はそのエージェントから話を聞いたり、反対にチームの最近の取り組みを聞き返したりして、必要ならエージェントにミーティングの設定を依頼したりできます。Work IQを背景に、我々のことをしっかり理解しながら組織の一員のように動いてくれるんですね。

 エージェントは、組織のデジタルワークスペースであるTeamsに入ってきて、自然な形で活動してくれるのもポイントです。つまりエージェントはデジタル社員でもあり、彼にスキルを覚えてもらうことでどんどん賢く進化していくのも面白いところだと思います。

Autopilotの利用イメージ

調査、会話、資料作成などCopilotの応用幅はビジネス全体に

――せっかくなので、岡嵜さんご自身のCopilotの活用方法についても教えていただけますか。

岡嵜氏:AIによく任せているのは調査系の作業ですね。社内外や業界全体などを対象に幅広く、定期的に自動で情報を集めてラーニングしています。

 最近は車で移動するときに音声でCopilotとやり取りするのがお気に入りです。1時間くらい会話しているとそれなりにエージェントが賢くなるんですよね。

 お客さまの視点ではどう感じるか、というシミュレーションにも使っています。お客さまが我々や他社からの提案をどう捉えているのか、多角的な視点をAIと一緒に作り上げて商談に活かしています。

 生産性向上の面では、いかに社内での無駄な時間を減らしてお客さまとのフェイシングタイムを増やせるか、を重視していますね。

 たとえば以前は情報共有のためだけのミーティングが多く、そこに時間を取られがちでした。しかし最近は自分が発言するミーティングにだけ参加して、そうでないときはAIが作成した議事録を後でチェックするようにしています。時間の使い方についてはチームで徹底的に変えて、全体的な効率を高めているところです。

――業務にまんべんなく使っているんですね。たとえば資料作成についてはいかがでしょうか。

岡嵜氏:我々はテクノロジー企業ですので、お客様からの技術的な質問に答えたり、問い合わせに対して提案したりするのに技術資料を作ることもよくあります。

 その際にAIの力を借りて、過去の資料や提案のベストプラクティス、さらにはお客さまの情報を組み合わせることで、資料のベース品質を高められますし、スピードアップも図れます。もちろん最後に魂を込めて自分の手で仕上げる部分はありますが。

 あとは、そうした活動から生まれたノウハウなどをメンバーの共有知としていかに蓄積していくか、というところにも取り組んでいます。AIをどれだけ活用しようとも、やはり「人が主役である」ことは常に意識していきたいですよね。

――本日はありがとうございました。