AI用語の基礎知識
【第23回】「エージェントワークフロー」とは――AIにPDCAさせる仕事の進め方
2026年9月21日 08:00
ChatGPTなどの生成AIを使って何かを作らせてみたら、もっともらしい成果物ができてきた。でも、よく読むと「指示したはずの内容が一部抜け落ちている」「最初の前提が間違ったまま回答が最後まで進んでいる」。そこで「ここを直して」と何度も指示して直す――。生成AIを使っていると割とありがちな経験ですよね。
これまでの生成AIの使い方は、プロンプトを投げて一発で完璧な答えを返してもらう「一問一答形式」が主流でした。しかし、複雑な調査や長文の資料作成といった実務を丸ごと任せようとすると、いくら賢い最新AIでも一度の出力で100点満点を出すのは困難です。
この「人間が一回ずつ指示する」のではなく、AIを組み込んだ仕組みの中で回すようにしたのが「エージェントワークフロー(Agentic Workflow)」です。現在、業務自動化の現場で急速に重視されるようになってきています。
一問一答から「計画・実行・見直し」の反復へ
エージェントワークフローでは、たとえば原稿執筆なら、「目的を確認する」「構成案を作る」「本文を書く」「基準に照らして評価する」「問題があれば直す」といった工程をつなぎます。評価で基準を満たさなければ、執筆や構成案の工程に戻り、もう一度やり直します。
人間が仕事で行なう「PDCAサイクル」のようなものをAI自身で反復しているわけですね。
一般的な生成AIとの対話では、利用者が質問し、AIが一度回答して一区切りとなります。エージェントワークフローでは、最初の出力を次の工程へ渡します。別のAI、あるいは同じAIに役割を変えて評価させ、その結果を修正工程へ戻すこともできます。AIが「まだ条件を満たしていない」と判定すれば、定められた範囲で処理を繰り返すわけです。
AIの中に、執筆者と編集者がいて、編集者が執筆原稿にチェックをかけ、原稿に問題があったら執筆者にリテイクを出す……という関係に近いでしょうか。
執筆・編集サイドがさらに専門化、あるいは2稿・3稿とブラッシュアップを続けると、アウトプットの質があがるのも人間の場合と同じです。
つまり、「リサーチ担当」「ライター担当」「校閲担当」のように役割を分け複数のAI(マルチエージェント)化し、必要に応じて資料の調べ直しなどもしていくわけです。
決められた手順とAIの判断を組み合わせる
ポイントは、すべてをAI任せにするとは限らないことです。「構成案の後に本文を書く」「評価点が基準未満なら修正する」といった大枠は、人間があらかじめ決められます。その中で、何を調べるか、どこを直すかなどをAIに判断させます。
この点で、エージェントワークフローは従来の自動処理とも、完全に自由に動くAIエージェントとも少し違います。従来の自動処理は「AならB」といった決められた処理に適しています。AIエージェントは、状況に応じて手順や使う道具まで選びながら、より柔軟に目的を達成します。エージェントワークフローは、決めた工程による安定性と、AIによる判断の柔軟性を組み合わせたものと考えると分かりやすいでしょう。
【第18回】で紹介したMCPでは、AIが検索サービスや社内データなどの道具を使うための接続方法になります。また、【第19回】のガードレールでは、扱ってはいけない情報や実行してはいけない操作をチェックする仕組みとして、各工程やその前後に置けます。これらを組み合わせることで、「調べる」「作る」「確かめる」「直す」という一連の仕事を構成できます。
【第18回】「MCP」とは――AIと外部データをつなぐ“共通ルール”
https://ai.watch.impress.co.jp/docs/serial/glossary/2131831.html
【第19回】「ガードレール」とは――AIの“暴走・脱線”を防ぐ安全装置
https://ai.watch.impress.co.jp/docs/serial/glossary/2133397.html
繰り返せば必ず正しくなるわけではない
もちろん、AIに何度も考え直させれば、必ず正解に近づくわけではありません。評価するAIの基準が曖昧なら、誤った指摘に沿って文章を悪くすることもあります。同じ情報だけを材料に回し続ければ、誤りに気づけないまま表現だけを整えてしまうかもしれません。処理を繰り返すほど、時間や利用料金も増えます。
そこで「何をもって合格とするか」「何回で打ち切るか」「どの段階で人間が確認するか」を決めておく必要があります。公開や送信、購入など、後戻りしにくい操作の前には、人間の承認を挟むべきでしょう。
エージェントワークフローの肝は、AIに一発勝負をさせないことです。計画し、実行し、結果を評価し、必要なら修正する。人間が普段行なっている仕事の進め方を、AIがたどれる工程として設計する――それが、この言葉の基本的な意味です。
AIに一度にすべてを丸投げするのではなく、「手順を分解させる」「道具を使わせる」「自分で見直しをさせる」。このワークフローを正しく組むことが、AIを単なる「便利な道具」から「仕事を任せられるアシスタント」へと進化させる鍵になります。







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