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脳理論に基づくAIモデルでヒューマノイドロボットが介護動作を学習

NCNPと早稲田大学が実証

 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)と早稲田大学の研究グループは8月17日、脳理論に基づいたAIモデルをヒューマノイドロボットに実装し、高次元の視覚・固有受容感覚(身体感覚)を統合しながら、複数の介護動作を学習できることを実証したと発表した。

 同研究では、視覚情報が曖昧でも身体感覚から状況を推定する、動作の切り替えを自律的に学習する、視覚的に遮蔽された対象を推定する、状況に応じた不確実性の変化を認知するといった、人間の脳で知られる情報処理特性が、特別なプログラムを与えなくてもAIモデル内部に形成されることを確認した。

 この成果は、予測処理がロボット知能を実現する一般的な計算原理となり得ることを示したもので、介護ロボットだけでなく、多様な環境で柔軟に働く次世代AIの実現や、人間の知能原理の理解につながることが期待される。

同研究の概要

 同研究では、予測処理に基づく新しいAIモデル「Scalable PV-RNN」を開発し、この理論が高次元マルチタスク知能を実現できるかを検証。人の上半身の身体構造を模し、人との接触を伴う動作を実現するために開発されたヒューマノイドロボット「AIREC」にScalable PV-RNNを実装し、その有効性を評価した。

予測処理だけで高次元情報を処理。複数の介護動作を学習

 開発したAIは、視覚画像と身体感覚から得られる約3万次元の情報を直接統合し、未来の感覚を予測しながら学習する。従来のロボットAIで一般的だった特徴抽出や次元削減、注意機構などを用いることなく「予測誤差を最小化する」という単一の計算原理のみで複雑な多感覚情報を統合できることを実証した。

 実験では、ヒューマノイドロボット「AIREC」を遠隔操作して取得したデータを用い、マネキンに対する「体位変換」と「清拭」という性質の異なる2つの介護動作を学習させた。

 体位変換は重い人体を支える力学的に複雑な作業であり、清拭はタオルという柔軟物体を扱う作業。提案AIモデルが、これらの異なる介護動作を同時に学習・予測できることを確認した。これは、タスクごとに別々のAIを設計する従来手法とは異なり、単一の脳型AIが多様な作業へ適応できる可能性を示している。

AIモデルの概要とロボットが学習した2種類の介護動作

人間に似た情報統合機能が創発

 AIモデル内部を解析した結果、人間の脳で知られている情報処理特性が形成されていることを確認。AIは動作全体と細かな運動を階層的に表現し、作業の切り替えを自律的に表現。視界から隠れた対象を推定し、視覚情報が不十分な状況では固有受容感覚を利用して補完するといった特性を示した。

 また、タスクごとの不確実性を内部で推定しながら柔軟に処理を切り替えることも確認された。これらの機能は個別に設計したものではなく、予測処理に基づく学習のみから自然に形成されたものであり、同理論が実世界の高次元・多感覚知能を支える計算原理となり得ることを明らかにした。

不鮮明な視覚に対する頑健性