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アルバルク東京とレボーン、AI活用でスポーツ空間の香りを演出

来場者に配布された香りカプセル付きのオリジナルカード

 レボーンは4月11日、アルバルク東京(Bリーグ)とのパートナーシップの下、香りとともにスポーツ観戦を楽しむ体験を島根スサノオマジックとの試合のなかで提供した。これにあわせて開催された発表会では代表取締役の松岡広明氏らが登壇し、同社が提唱する「香りのメディア化」構想や今回の取り組みの狙いなどが説明された。

 松岡氏は、香りが人々に与える影響について、「私たちの生活はデジタル化され、視覚や聴覚の情報は溢れている。五感情報の中で唯一本能に直接的に働きかける感覚が嗅覚で、特定の香りを嗅いだ瞬間、昔の記憶が鮮明に蘇るプルースト効果は皆さんご経験があると思う。香りは情動を動かす最強のスイッチ」とした上で、「この素晴らしい力を持つ香りは、これまでビジネスやテクノロジーの文脈では再現性がない、曖昧なものとして扱われてきた。私たちはここでデジタルの力で解き明かしたい」として、自社の取り組みを紹介する。

レボーン 代表取締役お松岡広明氏(右)とトヨタアルバルク東京 代表取締役社長の林邦彦氏(左)
「香りのメディア化」を提唱

 同社では、匂いセンシングデバイスの「Obre(オブレ)」を開発。従来の匂いセンサーは、特定のガスに反応する簡易的なものが主流だったが、Obreでは16チャンネルの水晶振動子を搭載し、分子の質量を高い精度で捉えることで、“匂いの指紋”を採取するように複雑な混合臭をデジタルデータに変換する。

 そして、8つの香料カートリッジを備えた匂い再現デバイスの「Hearom(ヒアロム)」では、レシピに沿ってセミオートで香りを噴霧。時間軸にあわせて香りを変化させ、映像や音楽にあわせて香りを楽しめるような環境を演出できるようにしている。

 これら2つのデバイスを結びつけるのがAIで、「爽やかな、高級感、といった人間の感性語と科学的なデータ、成分、質量などを紐づけ、画像や音楽、SNSのテキストデータから、この状況に最もふさわしい香りのレシピをAIが自動生成することが可能になった。これらのテクノロジーを駆使することで、データ化、解析、生成、再生までが可能になった。この一連の流れこそが香りのメディア化。カメラとモニターの関係にも近づく」(松岡氏)という。

 今回のアルバルク東京との取り組みでも実践されているが、同社が提唱するのは音楽のBGMになぞらえて語る「Background Scent(BGS)」というコンセプトで、映っているものの匂いが出ることではなく、その場の雰囲気や展開にあわせて香りが時間とともに変化していく体験となる。

 具体的には、ファンから募集した大倉颯太、テーブス海、セバスチャン・サイズの3選手のイメージに基づき、各選手の香りをAIが生成。来場者が各選手の個性を香りとして体感できるようにした。ちなみに、実際に3選手の香りを嗅いでみると、決して汗臭くはなく、心地よい爽やかな香りとして表現されていた。

ファンから募集した3選手のイメージを元にAIが生成した香りを体験

 また、2種類の香りカプセル付きのオリジナルカードを配布。アルバルク チアリーダーによるパフォーマンスにあわせて1つ目のカプセルを潰し、ダンスをイメージした香りを演出。パフォーマンス終了後に2つ目のカプセルを潰すことで、試合再開に向けてスポーティーでスピード感のある爽やかな香りを演出することで、観客の感情を揺さぶっていく。

 カプセルから放出される香りは自分にだけ届くように繊細に設計されており、周囲の迷惑にならずに楽しめる。同社では、公共空間における“未来の香りのエチケット”をイメージしているとのことだ。

 このほか、ホスピタリティエリアなどで香りの空間演出も行なっており、香りの分子の重さを計算して、香りの広がりをコントロール。ディフューザーから離れたところでは“少し青みがかった芝生のような雰囲気を持った陽の光を感じる香り”、近づくと“夜をイメージしたセクシーさを感じる香り”を感じられるようにすることで、アリーナの中に入るにつれて試合の高揚感やワクワク感を掻き立てるようにしているという。

 今回の取り組みは来場者を対象とした演出の一環として提供するものとなっているが、同社では香りが選手のメンタルに与える影響にも着目しており、試合前やハーフタイム、試合終了後で最適な香りを嗅げるようにすることで選手のパフォーマンスを高めることができる可能性もあるとして研究を重ねていく意向だ。

Obreで事前に計測した桜餅の香りのデータを取得し、解析。Hearomで香りを再現。まだリアルタイムでの変換はできないという
カレーや緑茶の香りを再現
キーボードの音色にあわせて香りを変化させるデモ