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ソフトバンク「Natural AI Phone」発表、開発メーカーが語る中核技術

Natural AI Phone。AIボタンを押すと画面の内容に応じた提案が表示される

 ソフトバンクは4月17日、米Brain Technologies(ブレイン・テクノロジーズ)が開発したスマートフォン「Natural AI Phone」を発表した。4月24日に発売する。価格は93,600円で、MNPかつ2年後に端末を返却する「新トクするサポート+」を適用すると月額1円で利用できる。ソフトバンクが国内で1年間独占販売する。予約受付は同日開始した。

 Natural AI Phoneは「Natural AI」と呼ぶ独自のAIエージェントをAndroid OSに組み込んだ端末。ユーザーの指示に応じて複数のアプリを横断的に操作し、情報の取得や予約、メッセージ送信などを代行する。発表会ではこのほか、AIサービスを手軽に体験できる「だれでもAI」やダンス学習アプリなど複数のAI関連サービスも紹介された。

「19年間、同じコンピューターを使い続けている」

 発表会に登壇したBrain Technologies CEOのジェリー・ユー氏は、2007年のiPhone登場を引き合いに「19年間、同じコンピューターをポケットに入れて持ち歩いている。同じアイコン、同じアプリ、同じ操作体系だ」と語った。スマートフォンのインターフェイスを根本から作り直すのがNatural AI Phoneの狙いだという。

ユー氏は「夕食に行くだけで5つのアプリを行き来する」と現状の課題を示した

 Brain Technologiesは2015年にカリフォルニア州サンマテオで創業した。ジョブズ家の支援を受け、AIとインターフェイスの研究を進めてきた。ユー氏によると、CTOとともに2016年にAIエージェント関連の特許を出願している。ソフトバンクのコンシューマ事業統括プロダクト本部長の足立泰明氏は、約2年前にユー氏と出会い「彼らが描く将来の姿と我々の考えが非常に近かった」と振り返った。

 Natural AIの中核は2つの技術だ。「Understanding System」はユーザーとの会話や操作履歴から好みや行動パターンを学習する仕組みで、使い込むほど提案の精度が上がるとしている。蓄積したデータはデバイスと日本国内のクラウドに保存し、AIモデルの学習には使わない。現時点で他のプラットフォームへのエクスポートには対応していないが、後継機種へのデータ引き継ぎはBrain社から確認が取れているという。

「Generative Interface」はアプリを切り替えずに情報を取得し、最適なUIを動的に生成する技術となる。本体右側面には白いAIボタンを搭載し、押すとNatural AIが起動して画面の内容を読み取り、次のアクションを提案する。Androidの通常のホーム画面とは別に、中長期的な目標を管理する「FocusSpace」画面も用意した。資格取得の学習計画や旅行の準備など、継続的なタスクを段階的に支援する。

Natural AIを支える技術。Generative InterfaceとUnderstanding Systemで構成する
FocusSpace画面。TOEIC学習や旅行計画などのタスクをカード形式で管理する

実機に触れて見えた現在地

 会場では実機を試すこともできた。AIボタンを押してから提案が表示されるまで10秒弱。Instagramでケーキの投稿を表示中にAIボタンを押すと「お店の場所を調べる」「似た雰囲気のカフェを探す」といった候補が並び、Webブラウザーで記事を開いた状態では「要約を表示」「関連ニュースを探す」が提案された。表示中の画面を読み取り、文脈に応じた選択肢を出す仕組みだ。

Webブラウザーで記事を開いた状態では「要約を表示」「関連ニュースを探す」が提案された

 Amazonでは商品をカートに入れて決済画面まで遷移する操作も確認できた。操作中、AIが「記憶に保存」するバナーが時折表示され、旅行の予定を伝えた際にはUnderstanding Systemが情報を蓄積している様子が見られた。

 ただし、Natural AIのアプリ操作はAPI連携で実現している。nubiaの「nubia M153」のようにアプリのUIを画面認識して自動タップする方式とは異なり、アプリ側にAPIが用意されている必要がある。対応アプリは現時点でGmail、Googleマップ、Googleカレンダー、YouTube、LINE、食べログ、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの9つで、順次拡大する予定だ。

 ユー氏は発表会で「夕食に行くだけで5つのアプリを行き来する」とタクシーアプリを含むスライドで課題を提示したが、現時点でUberやGoには対応していない。

 4人で大洗へ1泊2日の旅行に行く想定で旅程を組んでもらったところ、国営ひたち海浜公園や那珂湊おさかな市場といった定番スポットと飲食店の名前が並んだ。ただし、各地点間の移動手段や所要時間は示されず、「移動手段はお車でしょうか?」と逆に聞き返された。更問いを重ねれば精度は上がりそうだが、一発で実用的な旅程が出てくる段階ではない。LINEでメッセージを送る操作を試した際は、友だち検索を5回繰り返しても相手を見つけられなかった。

大洗への旅行プランを依頼すると定番スポットや飲食店の提案が表示された
LINEへのメッセージ送信では実行計画がステップ表示され、キャンセルか実行を選べる

 PC向けではオープンソースの「OpenClaw」のように画面上のあらゆるアプリを直接操作するAIエージェントが広がっている。そうしたものを想像して触ると、対応アプリ9つという現状にはややもどかしさが残る。ユー氏は「今日はDay 0。ソフトウェアは目覚めたばかりだ」と述べており、今後のアップデートで改善される余地はある。

 ハードウェアはSnapdragon 7s Gen 3、RAM 12GB、ROM 256GB、5000mAhバッテリーのミッドレンジ構成。おサイフケータイに対応した。OEMは非公開だが、ユー氏は「Apple級の端末を作るハードウェアパートナーと組んでいる」と述べた。外観はシンプルでカラーはTrue BlackとTrue Whiteの2色。

本体右側面の白いボタンがAIボタンだ
価格は93,600円。新トクするサポート+適用で月額1円から利用できる

 AIの推論処理はBrain Technologiesが用意するサーバーで行い、コストも同社が全額負担する。ユーザーへの課金はなく、ソフトバンクからBrain社への支払いもないという。ユーザーが増えれば推論コストは膨らむが、その原資がどこにあるのかは明かされなかった。Natural AI経由のショッピングでアフィリエイト収益を得ている可能性はあるが、ビジネスモデルの詳細は「非公開」とされた。

 発表会ではNatural AI Phone以外にも、AI関連のサービスやアップデートが複数発表された。AIエージェントを端末に統合するNatural AI Phoneが先端層向けだとすれば、残りの発表はAIの裾野を広げる施策だ。

AI未経験者向けの「だれでもAI」も開始

 同日、話題のAIサービスを手軽に体験できるWebサービス「だれでもAI」の提供も開始した。ソフトバンクの調査によると、生成AIを「知っている」と答えた人は70%を超える一方、57%が「利用していない」と回答。未利用者の34%が「どう始めたらいいかわからない」と答えており、この層に向けた入口として開発したという。

「だれでもAI」の画面。体験したいAIサービスを選んでボタンを押すだけで試せる

 登録不要でWebブラウザーからアクセスでき、約20のAIサービスをプロンプト入力なしで試せる。自分の写真をアップロードするだけでアニメ風やK-POPアイドル風に変換する画像生成(Picsart)、リラックスBGMの作曲(SOUNDRAW)、リアルタイム音声通訳(Kotoba Technologies)など、ボタンを押すか写真を選ぶだけで完結する体験が並ぶ。ソフトバンク、ワイモバイル、LINEMOのユーザーには各サービスの無料期間延長や割引の特典がある。常用するサービスというよりはAI体験のショーケースだが、生成AIに触れるきっかけとしては手軽にまとまっている。

LDHと共同開発のダンス学習アプリ

 LDHと共同開発したダンス学習アプリ「AI DANCE LAB Supported by SoftBank」を5月28日に提供する。月額1480円。ソフトバンクがスポーツ支援サービス「AIスマートコーチ」で培った骨格推定技術を活用し、ユーザーのダンス動画とLDH所属のプロダンサーによるお手本との動きの差分を可視化する。生成AIがテキストで改善アドバイスを提示する仕組みで、指導データはLDHが監修した。動画データはクラウドに保存せずに処理し、AIの学習にも利用しない。動作差分の解析技術とこのセキュリティー構成はいずれもソフトバンクの特許技術だ。

AI DANCE LABの画面。自分のダンスとお手本動画を上下に並べて比較できる

Glanceにショッピング機能を追加

 Pixelを除くソフトバンクの多くのAndroidスマートフォンにプリインストールされているロック画面アプリ「Glance」には、AIショッピング機能のアップデートが発表された。Glanceはインド発のInMobi子会社が開発し、Googleの支援を受けて世界で4億5000万台以上のAndroid端末に搭載されている。2025年秋に導入した「AI Looks」機能では、自分の顔写真を登録するとさまざまな服を着た自分の画像がロック画面上に表示され、気に入った商品をそのまま購入できる。今回、洋服に加えて旅行やペット関連のカテゴリーも追加する予定だと発表した。

Glanceの新機能。自分の顔写真を登録するとさまざまな服を着た画像がロック画面に表示される

キッズケータイ4にAI機能

 ちなみに、発表会場では2月に発売済みのキッズフォン4(ZTE製)も展示されていた。搭載する学習サポート機能「これなにAI」は、カメラで撮影すると漢字の読み仮名を教えてくれるほか、計算問題の答えも表示する。ZTEが第三者提供の生成AIを利用して開発した機能で、保護者がオン・オフを切り替えられる。ただし回答の正確性は保証されておらず、分数や図形の問題には非対応だ。

キッズケータイ4の「これなにAI」。カメラで撮影すると漢字の読み仮名や計算問題の答えを教えてくれる