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Genspark CTOが語る企業内活用を見据えた自律型エージェントの現在地
2026年10月14日 15:31
Gensparkは10月14日、都内でラウンドテーブルを開催し、共同創業者 兼 CTOのカイホア・ズー氏が同社が描く最新のアーキテクチャや組織向けビジョンを語るとともに、国内企業の導入事例を紹介した。
ズー氏は、同社が目指す方向性について、個人のためのチャットボットではなく「レベル5の組織が稼働するための統合スイート」だと強調。同氏は、多くのユーザーはChatGPTを高度な検索エンジンとして利用するレベル1にとどまり、個別の成果物を生成するエージェントを活用する層でもレベル2ないしレベル3に位置していると指摘する。これに対し、同社はAIの自律遂行能力を最大限に引き出すレベル5を見据えており、約50人という少数のソフトウェアエンジニア体制ながら、過去1年間で28もの新機能を投入してきた開発力をアピールした。
このアーキテクチャの中核を担うのが、中間層に位置するコンテキスト統合機能「Second Brain」とされる。これはOutlookのメール、Notion、会議録、プロジェクト履歴といった各種リポジトリーを統合管理し、あらゆるエージェント実行環境に対して共通のインターフェイスを提供する仕組みとなる。ユーザーがブラウザ、Slack、各種メッセンジャーなど、どんなツールを利用しても同一の文脈が共有されるため、ツールごとに情報が分断される課題を解決できる。
さらに、エンタープライズ導入の大きな障壁となる推論コストの抑制に関しても、独自の技術的アプローチが紹介された。Gensparkでは、簡単な問い合わせに高価なフロンティアモデルを使わない自動ルーティング、強化学習を用いた軽量な特定用途特化型モデルの適用、安価な実行モデルと高度な助言モデルを組み合わせるハーネス技術という3層の制御を実装している。
また、独自に開発したスライド生成に特化したAIモデル「Gen-1 Slides」では、Claude 3.5 Opus並の性能を持ちながらコストを1/17に抑え、スーパーエージェント全体のトークンコストも以前の35%にまで削減させている。セキュリティ面においても、米国内の推論プロバイダーの採用とゼロデータリテンション契約の締結を徹底し、オープンウェイトモデルを含めた強固なデータ安全性を担保しているとする。
社内開発においても、個人の生産性を最大化する高度な自動化基盤が稼働している。人間が課題への着手を指示した後は、独立したビルドや検証、コードレビュー、テスト動画の生成までをAIが自律遂行し、人間は最終判断とマージのみを担う体制を構築。これにより、直近2週間だけでも200万行を超えるコードチェックと2,500件超のプルリクエスト処理を成し遂げており、大企業なら数百人から千人規模を要する開発スピードを実現しているという。
また、エージェントを人間と対等な存在として扱うコミュニケーション基盤「GenTeam」や、組織の知見を集約する「Team Brain」を介して、人間に依存しない広帯域な情報伝達を実証しているとしている。
続いて登壇した日本法人の中村圭佑氏は、社内でのGenTeamの活用法を紹介。ラウンドテーブルに先立ち、リアルタイム翻訳が行なえる「Speakly」の使い方が説明されたが、Windows環境において翻訳機能を呼び出すキーボードショートカットの初期値が右Altキーに設定されており、最近のPCではこれがCopilotキーに置き換えられていると記者から指摘されていたこともあり、実際にこの問題の修正を依頼する様子が披露された。
レオパレス21が直面した一律禁止の限界と4,000名への浸透
両氏のプレゼンテーションの後には、Gensparkを導入しているレオパレス21と日総工産の担当者から自社の事例が紹介された。
レオパレス21は全国で約54万室の賃貸管理を手がけているが、同社は過去に従業員数が半減した経緯から徹底した業務改革を迫られており、直接顧客に向き合う営業部門とバックオフィス部門の人員比率適正化が経営課題となっていた。
過去に他社AIツールを導入したものの、全社の約1割程度しか利用せず、特定の数名が6割のトークンコストを消費するといった偏った状態に陥っていた。社内に280以上ある既存システムと連携できず、単なるチャット利用にとどまったことに加え、最大の問題は情報管理を重視するあまり「入力情報の区分が困難なものは原則禁止」としたガイドラインにあった。守りを優先した一律禁止は現場の実用性を損なうだけでなく、私物ツールによるシャドーAIのリスクを高める結果を招くという教訓を得たという。
転機となったのは春先のDX推進部新設と既存ツールの契約更新だった。CRMや基幹システムと将来的に連携できる拡張性や、学習にデータを用いないエンタープライズ契約のセキュリティを評価し、Gensparkの導入を決定。PoC開始から導入決定までの期間はわずか2週間で、7月には役職者約4,000名に対して一律の展開を開始した。
定着を支えたのは、受講と理解度テストに合格した者から順次アカウントを付与する仕組みとともに、入力可否の明確化、全社共通テンプレートの登録、成功体験の共有といった綿密な下準備だった。結果として、翌月の全社会議では提出資料が全面的に刷新されるなど、個人差が大きかった提案・資料作成の品質平準化の効果が現れた。
さらに顕著な効果を上げたのが災害対応とされる。7月に熊本地震が発生した際、現場の業務部門社員が自発的にGensparkを活用し、被害情報の集約や問い合わせ内容の分析を行なった。集約されたデータから被害の約8割が室内設備の転倒や水漏れに集中していることが判明し、事前対策の有効性が浮き彫りになったほか、千葉豪雨においてもハザードマップの想定区域外での被害傾向を検知するなど、現場主導の高度なデータ分析と予防策の立案が可能になった。
指示待ちではなく、現場社員が「自分の手でできた」という成功体験を得たことが、全社定着を決定づける原動力となったようだ。
年間6万人の応募を捌く日総工産――3人の「AI社員」がもたらした効果
工場などに向けた人材サービスを手がける日総工産では、採用現場の深刻なリソース不足を打開すべくAI社員の協働体制を敷いた。
同社では掲載求人約1万2,000件に対して年間約6万件の応募が寄せられ、約150名の採用部門の担当者が面接から入社対応までを人手で回していた。担当者が基幹システム、求人サイト、Excel、メールといったツールの間を頻繁に行き来し、手作業での転記やベテランの暗黙知に依存する体制が品質のバラつきを生んでいた。
そこで同社がGensparkを活用して構築したのが、人が複数のシステムを巡回するのではなく、チャットで指示を出し、調査・執筆・絞り込みといった負荷の大きい作業をAI社員が引き受け、人間は返ってきた成果物の判断に特化する分業モデルとなる。スクラッチでの開発を行なわず、基幹システムや求人媒体のデータ、Microsoft 365上のマニュアルをGensparkに読み込ませることで、3つの役割を持つAI社員を立ち上げたという。
1人目のAI社員は「求人の競合と相場分析」を担い、担当者の問いかけに対して周辺工場の時給相場を地図上で可視化し、自社の時給が中央値より低いといった事実の指摘と改善策を提示する。
2人目は「求人原稿のリライト」を行ない、掲載基準に対する違反チェックや不足項目の修正を自動で行ない、原稿作成にかかる時間を従来の10〜20分から3分程度へと短縮している。
3人目は「人と求人のAIマッチング」を担当。4,000人超の候補者から条件に合う人材を優先度や過去の定着実績と照らし合わせて抽出し、従来3時間かかっていた候補者探索を10分程度に圧縮している。
当初は20〜30代を中心とする選抜メンバー約60名で利用を開始したものの、成果物の共有や月次の振り返りを重ねた結果、未使用者が出ずに利用枠の追加申請が相次ぎ、利用者はすぐに100名を超えた。現場からは「これがないと仕事にならない」という声が上がるなど、業務の生命線として定着しつつあるという。
進化し続ける自律環境とエンタープライズ統制の調和
質疑応答のセッションでは、社内データの接続範囲とガバナンス設計に議論が及んだ。レオパレス21では、OutlookやSharePointに加え、CRMの接続を進める中で、個人情報リスクを経営判断として厳密に評価し、連携可否の線引きを明文化していると説明した。日総工産でも、Microsoft 365側の個別アクセス権限をGenspark側がそのまま継承する仕組みを重視し、ユーザー自身の権限以上の機密情報がAI経由で露出しない制御を徹底していると語っていた。
また、日総工産のプレゼンテーション内で披露された事例紹介動画が、近日リリース予定の「メディアエージェント」を用いて作成されたことも明かされた。これは画面のキャプチャ動画や静止画を指示とともに入力するだけで、テロップや構成をAIが自動生成する機能で、マニュアル作成や現場でのナレッジ共有を動画によって加速させる狙いがあるとのことだ。
月単位で新機能が追加されるGensparkのスピード感に対し、ユーザー企業の適応力も問われている。日総工産では「機能が増えすぎて追いつかない面もあるが、使い方が分からないこと自体をGensparkに質問しながら運用している」との実状を紹介。レオパレス21も「できることが増えていくワクワク感があり、社員同士で使い方を教え合う文化が生まれている」と前向きな手応えを示していた。
これに対しGenspark側は、企業管理者が利用可能なエージェントの範囲を制限・統制できる機能をエンタープライズ向けに提供しつつ、エージェント自身が対話を通じてユーザーを導くUIの洗練を進めているとしていた。



























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