ニュース

NVIDIA フアンCEO、モジュール式AIファクトリーからフィジカルAI、自動運転まで最新の展開を語る

AI・GPUコンピューティングカンファレンス「GTC Berlin 2026」基調講演

ジェンスン・フアン氏

 NVIDIAは10月21日、ドイツのベルリンにおいて、AI・GPUコンピューティングカンファレンス「NVIDIA GTC Berlin 2026」を開催し、創業者のジェンスン・フアン氏が基調講演を行なった。講演内容はモジュール式AIファクトリーから自動運転やフィジカルAIまで、多岐にわたる内容となった。

 本稿では基調講演と、今回の「GTC Berlin 2026」での発表内容も合わせてお届けする

AI時代の町の風景。AIの力は新たなる産業を革命に導く
基調講演のラストに登場した小さなロボットくん。RTX Sparkで動いていると言うことだが、フアン氏も「CUTE!」を連発していた

モジュール式AIファクトリー「DSX POD」を発表

 新たなモジュール式AIファクトリー「DSX POD」を発表した。電力、冷却、ネットワーク、コンピュートを組み合わせ、大規模なAIインフラの構築を支援するフルスタック・プラットフォームだが、工場で製造されたユニットを準備された現地において展開するのみであるため、期間を従来の6か月から最短14日まで短縮できるのが特徴。

DSXフルスタックAIファクトリープラットフォーム

 NVIDIA DSX PODは、Vera Rubinシステムと、それを運用するために必要なインフラを、パートナー企業が工場製造・コンテナ化デザインで統合し大量生産。コンピューティング、ネットワーキング、配線、ラックレベルの電源および液冷の統合・設置作業まで全て製造工場で完了。部品の遅延や高コストでエラーが発生しやすい現地作業のリスクを低減でき、モデルのトレーニングや本番推論までの道のりを短縮できる。

 提供時期は、2027年初頭を目指しており、世界中でDSX POD AIファクトリーを提供できるとしている。

NVIDIA DSX POD

冷却用の水の消費を大幅削減!同じAI出力を最大30%少ない電力で実現可能に

 AI需要の高まりにより、各国の電力需要が高まってきている中で、より少ない電力でAIを稼働させることや、冷却水の消費についてもコストだけでなく環境問題としても課題となってきている。

 そんな中、「NVIDIA DSXリファレンスデザイン」では、クローズドループ液冷とドライクーラーを使用することで、施設の冷却用水消費をほぼゼロに抑えることが可能となった。2ギガワット規模の導入で1日あたり最大5,400万リットルの節水が可能で、これは18万世帯の1日あたりの水使用量に相当するとしている。

 さらに、動的な電力割り当てを行なうソフト「NVIDIA DSX MaxLPS」により、同じ量のトークン数を生成するのに最大30%少ない電力で運用できるようになる。CoreWeave、Firmus、Google Cloud、IREN、Lambda、Nebius、Nscale、Sharon AIがこの技術の導入を計画しており、同時にDSX Flexソフトウェアにより送配電網(グリッド)の信頼性を高め、より迅速に送配電網に繋ぐことが可能となる。

 NVIDIA HGX B200システムでDSX MaxLPSを用いて行なわれた概念実証では、Lambdaが固定電力予算内で24%高いクラスタートークンスループットと19%多いGPUキャパシティを実現している。

 このほかにも、新しいNVIDIA DSX OSオープンソースソフトウェアにより、インフラのライフサイクルを自動化。ヘルスオートメーションやレジリエンシー機能を強化し、効率的に大規模なAIファクトリーを運用できるようになる。

AIを制御し安全性を高めるNVIDIA OpenShellリファレンスアーキテクチャを発表

 NVIDIAは、NVIDIA OpenShellリファレンスアーキテクチャを発表した。これは、エンタープライズインフラおよびエッジシステム上で、安全なエージェントの構築、コンテナ化、監視、強制が可能となる。

 OpenShellリファレンスアーキテクチャは、NVIDIA OpenShellセキュアランタイムソフトウェアを基盤とし、エージェント開発および運用のためのフルスタック、産業規模のインフラへと拡張されている。

 このアーキテクチャは、エンタープライズワークロードの実行のためのNVIDIA Vera Rubinインフラ、エージェントハーネスの運用のためのNVIDIA Vera CPU、オープンソースのNVIDIA OpenShellソフトウェア、そしてエージェントの挙動を継続的に監視し、シリコンレベルでポリシーを強制するNVIDIA Sentry統合セキュリティソフトウェアフレームワークを実行するNVIDIA BlueField DPUが含まれている。

 OpenShellは、エージェントが明確に定義された境界内で有用な作業を行なえるようにするためのもので、エージェントはコンテナ化され、監視され、制御下に置かれ、Rubin上で思考し、NVIDIA Vera CPU上で行動し、NVIDIA BlueField-4 DPU上でガバナンスコントロールされる。

 NVIDIA BlueField-4 DPUは、NVIDIA DOCAソフトウェアを基盤としたNVIDIA Sentryを用いてエージェントの挙動を継続的に監視。BlueFieldとNVIDIA Sentryは、シリコンレベルでのセキュリティ強制を提供し、エージェントがソフトウェア境界を越えようとした場合、NVIDIA Sentryがミリ秒単位で隔離・停止を行なう。

 OpenShellリファレンスアーキテクチャは、Microsoft Windowsをはじめ、Red Hat LinuxおよびKubernetesなど、主要なエンタープライズオペレーティングシステムおよびコンテナオーケストレーションレイヤー上で動作。さらに、Amazon Web Services、Google Cloud、Microsoft Azureのクラウドオペレーティングシステム上でも稼働可能。

NVIDIA提供のロボティクス開発を支援するプラットフォームを拡張

 NVIDIA提供のロボティクス開発を支援するプラットフォーム「Isaac」において、大幅な拡張を行なうと発表した。

 ロボティクス開発において、スキルの開発から現実世界に移行する際、シミュレーション環境と現実の差が大きく、シミュレーション、学習、展開の各ツールを統合するのに苦労することが多いが、Agile ONE SNの開発においてはこれらのツールとワークフローを単一のプラットフォーム上で統合し、セットアップ時間を数週間から数日に短縮した。

 ロボットの開発においては、開発者が学習データを生成、ロボット学習をスケールしシミュレーション環境を構築、ロボットアプリケーションを展開するといった一連の流れを支援し、ソリューションまでの時間を短縮する。

 Hugging Face上で公開されているSimReady Central Libraryには多数のシミュレーション対応資産が納められており、NVIDIAのオープンソースロボット学習リファレンスワークフローは、さまざまなソリューションでサポートされる。ロボティクスパートナー各社は、倉庫ロボットの安全性向上のためにNVIDIA Halosを安全アーキテクチャに統合したり、産業用ロボットの動的安全性向上のためにHalosを評価中。

 また、ドイツ航空宇宙センターからスピンオフしてミュンヘンで設立された、フィジカルAIおよび次世代ロボティクスの企業・Agile Robotsは、NVIDIA Isaac GR00Tを搭載し、NVIDIA Jetson ThorエッジAIプラットフォームで駆動するリファレンスヒューマノイド「Agile ONE SN」を発表した。

 Agile ONE SNは、NVIDIA Jetson Thorを搭載し、2,070FP、4テラフロップスの演算性能、128GBの統合メモリによるオンボード推論とリアルタイム制御を搭載しており、頭部・手首カメラ、ライダーセンサー、慣性計測ユニットなどのマルチモーダルセンシングで周囲を認識し行動する。データ取得から展開、全身制御までをカバーするGR00T基盤モデルを含むNVIDIA Isaac GR00Tプラットフォーム上で動作する。

 Agile ONE SNは2027年初頭に提供開始予定となっている。

NVIDIA Hyperion上で安全な車両やロボタクシーを構築

 今週すでに発表されているが、Bolt、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、Einrideが、NVIDIA Hyperionコンピューティングプラットフォーム上で選定された自動運転のユースケースを発表し、レベル3およびレベル4を含めた、将来のロボタクシー車両への応用の可能性を進めている。なお、ボルボ・カーズは、自動運転のためにHyperionとNVIDIA Alpamayo Stackを採用している。

 また、NVIDIAは、「NVIDIA Halos」安全システム内の新しいフレームワークとして「Halos SAFE」を発表した。これは、シミュレーションと実地テストを組み合わせ、開発者が測定可能かつ追跡可能な自動運転車の安全性証拠を生成できるようにするもの。NVIDIAは、開発者が多様な車両、運用条件、地域に対応した自動運転を構築・カスタマイズ・評価できるよう支援していくとしている。

 ジェンスン・フアン氏は「ロボタクシーはロボティクスとフィジカルAIの最初のマスマーケットアプリケーションであり、人やモノの移動方法の再発明となる。NVIDIA Hyperionは、Halos安全オペレーティングシステムと組み合わせることで、完全な自律性と安全性を実現するために設計されたフルスタックのロボタクシープラットフォームをパートナーに提供し、あらゆる移動体が自律化される未来が近づいている」と語った。

 UberとNVIDIAは、Cosmosを活用したデータファクトリーを共同開発し、自動運転車の開発用データのキュレーションと処理を行なっている。この取り組みは、AI開発インフラ、Hyperionベース車両、Uberのグローバル配車ネットワークにまたがる広範なパートナーシップの一部となっている。

NVIDIAを活用し、創薬を推進

 自然界に存在しない新しい人工タンパク質を設計・合成する最先端の研究機関「UW Medicine Institute for Protein Design」はNVIDIAと、プログラム可能なタンパク質設計と検索機能を組み合わせたオープンモデル「RFD4-Proteina」を発表した。

 また、Siemens Healthineersは、エージェント主導の共同計画、患者ごとのシミュレーション、ロボット制御によるがん治療へのアクセスを拡大する次世代の適応型放射線治療を推進している。

 このほかにも、NVIDIA BioNeMoオープンプラットフォームを活用し、創薬設計、自律型ラボ、生物学的発見を行なう科学エージェントの開発が行なわれており、研究者が仮説から実験へと迅速に移行できるよう支援している。

 RFD4-Proteinaは、タンパク質結合、小分子結合、酵素スキャフォールディング、DNA結合という4つのベンチマーク項目全てで、評価されたベースラインよりも高い計算設計成功率と生成スループットを達成。

 また、Siemens HealthineersとNVIDIAは、エージェント型およびロボティックインテリジェンスを活用した次世代の適応型放射線治療の開発も協力している。

生産量拡大と基板能力の増強を発表

 NVIDIAは、IBIDEN、Samsung Electro-Mechanics、Unimicron Technology Corporationとの基板供給契約により、今後3年間で合計2.5倍の生産能力拡大を実現すると発表した。

 この中には、IBIDENとの契約に基づき、NVIDIAは日本のIBIDEN小野工場に対して数十億ドル規模の能力予約前払いを行なっており、この拡張により、同工場の能力は現在の3倍に達することを目指しており、追加能力は2028年第1四半期から段階的に稼働を開始する予定となっている。