突撃!となりのAI

LINEヤフーコミュニケーションズ、総務が作った会議室予約ツール「みえぽち」

LINEヤフーコミュニケーションズの総務部 CAREチーム チームリーダーの大津裕一朗氏(左)と開発を担当した原田本氏(右)

 企業のAI活用が本格化する中、現場の課題を自力で解決する取り組みが注目を集めている。LINEヤフーコミュニケーションズの総務部 CAREチームでは、Google Workspaceの生成AI「Gemini」とGoogle Apps Script(GAS)を組み合わせ、社内会議室予約ツール「みえぽち」をわずか1か月半で開発したという。

 各会議室の空き状況が一目で確認できる同ツールは、社内公開後にユニークユーザー数が1,000名(社員数は1,559名)を超え、年間約2,800時間相当の工数削減(1回あたり2分の手間削減)を見込む。

 本稿では、非エンジニアでありながらAIを活用して全社ツールを作り上げた同チームリーダーの大津裕一朗氏と、開発を担当した原田本氏に、開発の裏側やAI活用の工夫、総務部門におけるマインドの変化について伺った。

――今回、AIを活用してどのようなツールを開発されたのでしょうか。

大津氏:AIとGAS(Google Apps Script)を使って、社内の会議室を一覧で確認・予約できるツールを作成しました。ツール名は「みえぽち」といいます。

原田氏:画面上で拠点やフロアを選択すると、そのフロアにある会議室の空き状況が一覧で表示されます。空き時間を選択すれば、そのまま予約画面が開いて予約が完了する仕組みです。自分や参加させたい同僚のカレンダーを一覧に追加して空き時間を探せるほか、迷子になりがちな会議室の場所がひと目でわかるマップ機能も備えています。

LINEヤフーコミュニケーションズの社内会議室予約ツール「みえぽち」

――従来はどのように会議室を予約していたのですか。

大津氏:以前は各自が個人のGoogleカレンダー上で会議室の空き状況を1つずつ確認しながら探す必要がありました。「この時間に空いている部屋を探す」という手間が地味なストレスになっていたので、それを一括で解決できた形です。

――業務改善の効果や社内での反響はいかがでしたか。

大津氏:社員の声から作ったツールということもあり、リリース時は「待ってました」と非常に大きな反響がありました。全社員1,559名のうち1,000名以上がユニークユーザーとして利用しています。1回あたり約2分の手間削減として計算すると、年間で約2,800時間相当の工数削減につながっています。

――社内の開発部門に依頼せず、総務部自らAIを使って開発を行なった背景を教えてください。

大津氏:最初から大がかりな社内共通ツールを目指したわけではなく、「総務が作った便利ツールなのでよかったら使ってください」というスタンスからスタートしたんです。全社的にAI活用が求められる中でGoogle Workspaceの環境が整備されたため、総務として社員のお困りごとをAIで解決してみようという取り組みの一環でした。

――実際にどのようにAIを活用して開発を進めたのでしょうか。

原田氏:開発には社内で利用できるGeminiを活用しました。特別な環境を構築したわけではなく、一般の総務社員が使えるGeminiでコード(スクリプト)を生成しています。プロンプトを投げる際は、AIに適切な役割を与えたり、事前に要件定義をしっかり行なったり、コードを一度に生成させず細かい機能ごとに分けて作成させることを意識しました。また、外部通信を発生させないといったセキュリティ制限もプロンプトに組み込んでいます。

読み込みに少し時間がかかるため、犬のキャラクターが登場するローディング画面も用意

――開発中に苦労した点や、エラーが出た際の工夫はありますか。

原田氏:手探りの状態から知識をつけつつ進めたので、最初は不具合対応に苦労しました。エラーが出た際は抽象的に聞くのではなく、「どういう操作をした時に何が起きているか」という具体的な状況をAIに伝えることで、ハルシネーションを防ぎ、原因特定と修正をスムーズに行なえるように心がけました。1か月半ほどで公開に至り、現在も社員の要望を反映しながら毎月アップデート(現在はバージョン5)を重ねています。

――今回のAI活用を通して、チームや組織にどのような変化がありましたか。

大津氏:一番大きかったのは意識の変化ですね。これまで課題があった際は「他部署へ開発依頼する」か「ツールを購入する」の2択でしたが、そこに「自分たちで作る」という選択肢が加わりました。また、プロンプト作成などを通してチームメンバーの新しい得意を発見できましたし、自分たちの手で課題を解決できる楽しさやモチベーション向上につながったと感じています。

――ありがとうございました。